春闘における原資配分と労働組合機能の変化

― KDDIにおける成果・評価重視型賃金制度の事例分析 ―

浅野 祥 (情報労連 KDDI労働組合)

 本研究は、KDDIにおける成果・評価重視型賃金制度を事例として、春闘原資の配分構造と組合員の受け止めについて分析した。従来の春闘研究は、賃上げ率や原資獲得そのものに焦点を当ててきたが、成果・評価重視型賃金制度の下では、獲得した原資がどのように配分され、組合員にどう受け止められるかという視点が重要となる。本研究では、KDDI版ジョブ型人事制度における評価制度およびメリットインクリース型賃金制度を整理した上で、春闘原資が、グレード給表改定による一律のベースアップと、評価結果に連動する昇降給率・個人業績賞与への上乗せ(重点配分)との組み合わせによって処遇へ反映されている構造を明らかにした。さらに組合員アンケート(有効回答722名、うち総合職Z573名)の分析から、会社が公表する平均賃上げ率と個人の賃上げ実感との間には乖離認識が広く存在すること、その乖離や納得感は給与水準の位置(ゾーン)ではなく評価への認識、とりわけ評価プロセスへの認識と関係していることが確認された。以上を踏まえ、成果・評価重視型賃金制度の下における春闘では、労働組合に原資獲得機能だけでなく、配分方針の説明責任および組合員の納得形成を支援する責任が求められると結論づけた。労働組合の役割は、原資を獲得する組織から、配分方針を説明し納得形成を支える組織へと拡張している。