赤松常子論
― 女性運動における横断的実践とその思想 ―
本研究は、戦前期における労働組合のナショナルセンターである日本労働総同盟において、婦人部の再建と発展を担い、戦後には国会議員として制度化にも関与した赤松常子を対象に、その思想と実践を総合的に検討するものである。著者自身がナショナルセンターにおいて労働運動の方針形成に関わる立場から、労働運動における女性参画の少なさとその構造的背景に問題意識を持っている。こうした課題を歴史的に捉え直すため、労働者や家庭の主婦、農村の女性など幅広い女性の組織化に尽力した赤松常子に着目する。
先行研究として、鈴木裕子『女性と労働組合(上)』(1990)は日本労働総同盟婦人部の構造を分析するが思想分析は限定的であり、赤松常子顕彰会による史料『道絶えず 赤松常子、その人とあしあと』(1966)、『雑草のようにたくましく 赤松常子の足跡』(1977)は実践や人物像を中心に描くが、回想的性格が強い。これらの史料の叙述の相違と共通点を整理することで、本研究の位置づけを明確化する。そのうえで、本研究では、日本労働総同盟の女性組合員向け機関誌である『労働婦人』を通じて、赤松常子の女性労働問題の捉え方、組織化の実践スタンスを言説レベルで明らかにする。