本と資料の紹介コーナー

このコーナーでは、労働運動、労働組合の分野で皆さんに読んでいただきたい本と文献を取り上げます。重要と思われる文献については、労働一般、経済社会問題まで広げて紹介していくとともに、連合周辺の刊行物も収録します。
文献の選定には教育文化協会の書評委員会があたっていますが、紹介内容は連合または教育文化協会の主張を必ずしも反映せず、高木郁朗 日本女子大学名誉教授の責任監修で行われています。

2017年8月の紹介本

おすすめ本

  • 中北浩爾
    『自民党―「一強」の実像』

    評者:照沼光二(連合政治局次長)

     本書には、すぐれた政治学者が徹底した聞き取り調査などによって得た自民党に関する情報がつまっている。これだけの情報が歴史的・体系的に整理・分析された本書は貴重である。折りしも、森友、加計学園など安倍総理自身に関係するさまざまな問題が浮上し、また、都民ファーストが台頭する中、都議選で大敗を喫するなど、「自民党一強」に綻びが見え始めている。本書はそれを見透かしていたかのように、「終章」で「無党派層が自民党に失望し、民進党をはじめとする野党、あるいは新たなポピュリスト政党に期待が向かう事態が生じれば、現在の自民党一強と呼ばれる政治状況は、急激に転換する可能性も秘めている」と予測している。自民党がいかなる政党であるか、それと対峙するうえで何が必要であるかを概観するにあたり、欠かすことができない一冊である。

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    中央公論新社
    880円+税
    2017年4月

ルーツを求めて

  • 山本茂実
    『あゝ野麦峠~ある製糸工女哀史~』

    評者:西野ゆかり(連合広報・教育局長)

     「あゝ、飛騨がみえる・・・」野麦峠で命を落とした20歳の工女・政井みね。口減らしのため岡谷の製糸工場へ出稼ぎに行き、過酷な労働の末に病に倒れ、兄の背におぶられて貧農の実家へ連れ戻される途中、峠で息絶える間際に発した言葉である。明治42年のこと。
     映画でお馴染の方も多いと思う。スクリーンでは、この工女みねを主人公とした女工哀史の痛ましいストーリーだが、本書ではそれはほんの一部である。著者は360名におよぶ元工女を一人ひとり、飛騨とその周辺を訪ね歩き取材、それまで歴史の闇に隠されていた明治期の製糸産業と工女たちのすさまじい労働に強烈な光をあてた、すぐれた記録文学である。
     特に「女工惨敗セリ」の節では、昭和2年(1927年)におきた信州岡谷の製糸会社・山一林組の1300名の工女の決起と壮絶な闘いが描かれている。大規模な製糸女工のストライキである「山一争議」を、労働者サイドのみならず、経営者の苦悶、その背景にある暴れ馬のような生糸相場、工場を取り巻く地元の民衆がこの争議をどうみていたかなど、いくつもの角度から明らかにされている。
     生糸が支えた文明開化。ではその生糸は誰がつくったのか。この野麦峠を越えた工女たちの辛抱と働きは日本の発展の礎となった。と同時に、劣悪な労働環境や労働条件はさまざまな議論を巻き起こし、明治44年の工場法制定となり、さらに戦後の労働基準法、労働安全衛生法とつながったのである。
     労働運動のルーツがみえる名作である。

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    角川文庫
    680円+税
    1977年4月

議論を深める

  • 柴田悠
    『子育て支援が日本を救う―政策効果の統計分析』

    評者:村杉直美(教育文化協会常任理事)

     今の日本で「子育て支援」の重要性を否定する人はほとんどいないだろう。そうであるにもかかわらず、毎年のように保育所の待機児童数が話題に上っている。昨年2月の「保育園落ちた日本死ね!」に対して、「誰が言ったかわからないから対応のしようがない」という安倍総理の素っ気ない国会答弁が保活に疲れ果てた世の親(とりわけ母親)たちの怒りを買い、大炎上となったあげくに、ようやく政府が重い腰を上げたように見えた。がしかし、それですぐに予算措置が図られるかといえば、すでに財政は硬直化して、義務的経費を除けば、新たに拡充できる余裕はほとんどない。そのうえ、ほかにも喫緊の課題はたくさんある。
     本書は、そうした現状において、今こそ子育て支援策を、国を挙げて行うことが、将来の日本の幸せにつながるのだということを、客観的なデータに基づいて統計分析することで明らかにしている。具体的には、「経済成長率」「労働生産性」「出生率」「子どもの貧困率」「自殺率」などの重要な社会指標に対して、子育て支援などのさまざまな社会保障政策がどのように影響するのか相関関係を分析し、その結果から「子育て支援が日本を救う」という結論を導いている。

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    勁草書房
    2016年6月
    2,500円+税
  • 連合とそのまわりの刊行物
    • 1.図表でみる世界の社会問題4 OECD社会政策指標~貧困・不平等・社会的排除の国際比較~
    • 2.「オルグ」の鬼・・・今日の労働運動に一石を投じることができれば!

これまでの掲載実績

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文献紹介コーナー(~2008年)


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