第21回マスターコース修了論文集

労働組合から見たフィジカルインターネット
― 運輸産業の問題解決ツールとなり得るか、そのための組合の役割 ―

大原 猛(運輸労連)

<概要>

 国は今、トラック運輸産業界に「フィジカルインターネット(Physical Internet 以下、PI)」なるものを世界に先駆けて導入しようと、調査・研究を進めている。これは、業界の人間でもなじみのない言葉だが、簡単に一言で説明すると、荷種1(にだね)を問わない共同輸配送の日本全国版である。経済産業省(以下、経産省)を主体とするPI実現会議では、2040年をゴールとするロードマップを作成し、導入を推進している。しかし、物流コスト削減を求める荷主側の意見が色濃く反映される内容となっており、運送事業者としては見過ごすことができない。では、労働組合には何が求められているのか。第一に、トラック運輸産業では我が国最大の産業別労働組合である運輸労連として国土交通省(以下、国交省)に申し入れ、必要となる産業政策について話し合いを積み重ねる必要がある。これに基づき、経産省主導のPI実現会議に対しても、言うべきことをしっかりと言わなければならない。第二に、適正運賃を反映したPI関連ルールを作っていく必要がある。第三に、PIの導入によって雇用が脅かされることのないようにチェックを行い、雇用の維持とワークライフバランスのとれる職場環境の確保に向けて体系的に働きかける必要がある。


1 積載する荷物のこと

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