第18回マスターコース修了論文集

不妊治療と仕事の両立に向けた課題と労働組合が果たすべき役割 

圷 康太(全国労済労働組合連合会)

<概要>

 近年注目がされはじめている不妊治療と仕事との両立については、少子高齢化が不可避の課題として今後想定されるうえで、子どもを授かるための尊い営みである不妊治療に対し、企業として支援策を講じていくことは社会的責任でもあると言える。とりわけ労働に従事している人が受ける不妊治療は、突発的な通院や治療を受けるための時間的制約、性と身体に関わるセンシティブな取り組みであることから、柔軟に働ける環境に加え、周囲の知識・理解を含めた職場における周囲のサポートが無ければ、本人にとって物理的かつ心理的な負担が強いられてしまう。こうした中にあって、企業レベルの取り組みは充分に浸透していない。制度といったハード面のみならず、管理者における意識やマネジメント、そしてそもそも不妊治療がどのような治療の形態であるかの知識といったソフト面も含め、取り組むべき課題が多く存在する。本稿では、不妊治療と仕事の両立にあたって抱える課題について明らかにしていくとともに、企業における不妊治療の支援策として、治療費補助や柔軟な休暇制度などさまざまな方法が考えられる中、職場環境の構築に向けた取り組みや企業への働きかけなど、男女がともに働ける社会をめざし今後の労働組合が果たすべき役割について考察し、提起することとしたい。

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