第18回マスターコース修了論文集

日本における高度外国人材の受入れと定着に向けて
-「移民」および「移民政策」という言葉の発語を提言する-

田村 史生(国公連合 政労連)

<概要>

 本稿は、日本における高度外国人材の受入れと定着に向けて、いま求められている肝要な課題は、「移民」および「移民政策」という「言葉」を復活させることだと主張する。そのために、連合としても移民と移民政策という言葉を発語していくことを提案したい。
 訪日する外国人は年々増加の一途をたどっている。改正入管法も成立し、一層の外国人人材(労働者)受入れが加速するものと予想される。そしていわゆる外国人ホワイトカラーについては、少子高齢化が進む日本において公労使いずれの立場からも受入れと定着の推進に異論を挟むものはないが、実際にはその進展は見られない。国際的な移民の状況を踏まえて検討した。日本においては移民や移民政策の議論の挫折が30年間の間に何度となく繰り返された。やがて移民や移民政策という言葉自体が公的には忌避、排除されることとなり、移民政策の代わりに他の政策が目的や正当性を訴え、移民ではなく外国人人材(労働者)としての受入れが、行われるようになったが、本来目指すところの受入れと定着に結びつくものではないことがわかった。
 この現状に照らし、第1章では、外国人ホワイトカラーに対する連合の政策を検討した。その結果、連合の価値観は状況や政策への対応として外国人人材(労働者)受入れの範疇にとどまるものであることがわかった。
 なお、第2章では、外国人ホワイトカラーの現状と課題を分析した。流出する高度人材の状況と国際比較によってその要因の検討を行った。
 そして、第3章では、外国人ホワイトカラー「候補者」に対するアンケート調査およびインタビュー調査の結果を分析した。その結果、日本で就職しようと努力している外国人は一定数存在していることがわかった。
 以上をふまえ、本稿では、700万人の組合員を有する連合という組織において、もし移民という言葉にあらためて正面から向き合い、その意味を共有することができれば、わが国の移民と移民政策に大きな変化をもたらす可能性があることを主張したい。

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