第12回マスターコース修了論文集

有期労働の諸相と今日的課題
― 労働運動が果たすべき役割 ―

本多 信介(全国労働金庫協会/日本労働者信用基金協会)

<論文の概要>

 本稿は、期間の定めのある労働契約に基づく労働、いわゆる「有期労働」について、その取り巻く情勢の変化や法制度を中心とした変遷を考察し、その意義と今日的課題を明らかにするとともに、労働運動が果たすべき役割について、若干の私論の展開を試みるものである。
 そこで本稿は、まず、雇用形態の多様化の中で増加してきた有期労働について、その取り巻く情勢の変化等を踏まえつつ、雇用形態の多様化がもたらした有期労働への影響について考察する(第1章)。つぎに、労働契約法をはじめとした有期労働法制について、これまでの経緯や法制定の意義、法改正を後押しすることとなった背景事情等について考察する(第2章)。さらに、今般の2013(平成25)年労働契約法改正を契機とした有期労働の変化に対して、法の趣旨に沿った事案や法の趣旨を潜脱したり、紛争となった事例等の具体事案の検討を行う(第3章)。
 そして本稿は、有期労働は(労働者にとって)期せずして増加の一途を辿った性質を持つ、望まれざる部分が多分にあり、今日的課題は「如何に有期労働の縮減を果たすか」にあると考えた。また、労働運動としては、有期労働の縮減と雇用安定に向けて具体的な運動を展開するにおいて、欠かざるべきと考える基本的考え方を提示した(結語)。

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