埼玉大学「連合寄付講座」

2016年度第4ターム埼玉大学「連合寄付講座:働くということと労働組合」講義要録

第4回(12/5)

非正規労働者の処遇改善をすすめる

ライフ労働組合副執行委員長 徳永 志寿嘉

1.はじめに

 食品スーパーを経営しているライフの労働組合で副執行委員長をしております、徳永と申します。今日は、連合寄付講座ということで働くということと労働組合という大きなテーマの中で、非正規労働者の処遇改善を進めるというお話をさせていただきたいと思います。
 非正規労働者の処遇改善を進めるということで、私自身も、ライフコーポレーションに入った時は契約社員という非正規労働者として入社しておりますので、今日は資料を見ていただくというよりは、お話を聞いていただいて何でも質問していただければと考えております。まず自己紹介と会社の概要を簡単にお話しさせていただいて、労働組合はどういう人たちでやっているのか、また組合員の方はどういう人なのかということをお話しさせていただいて、組合員の雇用形態も説明させていただこうと思います。次に、契約社員だった私自身が感じている疑問などを少しお話しし、そこからどうやって労働組合と関わりを持っていったのかをお話しさせていただきたいと思います。最後に、非正規労働者の処遇改善はやはり1年で直ちに解決するという問題ではありませんし、非正規労働者という大きな括りの中にも多様な雇用区分の方がいらっしゃるので、それぞれの課題というものがあります。まだまだ労働組合でも取り組んでいかないといけない問題があるということをお話しさせていただければと思います。

自己紹介

 私は皆さんのように大学には行っておりません。というのは、1988年3月に高校を卒業した頃は、ちょうどバブルの真最中という言い方は変ですが、当時は景気が大変良く、高校卒業だから就職先がないということが特になかったのです。就職の斡旋は大量に高校にも来ていましたし、大学へ進んだ方もいるのですが、どちらかというと高校を卒業して就職とか短大へ行く人が多かったと記憶しております。
 私は1988年3月に卒業してから半年間、習い事をしながらアルバイトをして、就職活動をしていました。今ならばフリーターになるのだと思います。では何で高校を卒業してすぐに就職しなかったのかといいますと、求人はたくさんあっても自分が働きたいと思うような会社にはなかなか就職できなかったので、半年間習い事をしながらアルバイトをしていました。当時、就職活動といっても、週に1~2回くらいは就職情報誌が販売されていまして、それはとても分厚かったのです。今は薄いものになったり、ほとんどなくなったりしているのかもしれませんが、正社員の募集も大量にあった時代だったので、私はその中から自分が働きたい会社を探して就職することを選びました。縁があって、大阪の難波にある百貨店の髙島屋大阪店に就職が決まりました。当時は本当にバブル景気の時期なので、事業拡大や事業転換をする企業も大変多くありまして、各社こぞって高卒でも大卒でも、学歴を問わずに人材を募集されていたと思いますので、私もちょうどそのおかげで、高卒でも中途入社で、正社員で就職させていただけたと考えています。

(1)高島屋就職

 私は髙島屋で顧客部顧客サービス課に配属されて、いわゆるエレベーターや受付で勤務しておりました。ちょうど私が入った年は全員が正社員で成り立っていた部署でした。受付というと、見た目がすごく華やかですよね。百貨店に入って入口に大きな受付カウンターがあって、何人か座っていて帽子を被って、みたいな、華やかに見えるのですが、やはり年齢的に長く居られない部署のようなイメージでした。その上、一見華やかに見えるところほど、女性ばかりなので非常に厳しいです。縦のつながりがとても厳しいところで、見た目とは違って体育会系の感覚で仕事をしていました。私がちょうど4年間髙島屋にいて退職する頃には、この顧客部顧客サービス課も髙島屋の子会社で派遣社員の方、大体10歳代後半から20歳代前半の方が大量にこの部署に派遣されるような状態になっていました。

(2)髙島屋退職、結婚・離婚と再就職

 髙島屋在職中の4年間には人生の出会いもあり、新しい命との出会いもありました。世間的に「寿退社」という言葉もまだまだ残っていたころで、ちょうど一緒になった人は、「女性は結婚して出産したら、家庭に収まるものだ」という古風な考え方を持った人だったので、自分自身の意に反して退職をせざるを得なくなったというところです。しかし、自分の親も働きながら子育てをしていたということもあって、自分自身も子どもを産んでも仕事をしていきたいという気持ちが大きかったので、だんだんすれ違いになってきて、新しい生活は長続きしませんでした。子どもを連れて再就職を考えるのですけれども、今ならば、インターネットで求人に応募するのが主流だと思いますが、この頃は、就職活動で履歴書を送る前に一旦電話をして、その中で家族構成を聞かれることが多かったのです。そこで、家族構成を言って、子どもがまだ幼い、1歳、2歳と言うと、「うちには遠慮していただいていいですか」と電話だけで断られるという状況が本当に何社もありました。ようやく履歴書を送る段階になって、今はないと思うのですが、その中に家族構成を書く欄もあって、そうするとまた断られるといったこともあって就職活動は1年半くらい難航しました。なかなか就職先が決まらなかったのですけども、ようやく、茨城県大洗町にも工場がある「かねふく」という、明太子を取り扱っている水産加工会社に正社員として就職することができました。東京でも新幹線や京浜東北線などの沿線で「めんたいパーク」と書かれている看板を見たことはありますか?今までと全く違って流通関係から事務職になったので、覚えることも白紙からでした。お客様は中央卸売市場の仲買人で、来た商品を仲買人が買って、それを小売りの人が見に来る。その仲買人との電話のやり取りが主な仕事でした。営業事務をやっていたのですけれども、原料のスケトウダラの卵巣(たらこ)を仕入れて、それを明太子に加工して販売する会社で在庫管理などもしていたのです。ところが、バブルが崩壊して不景気のあおりを受けていた1994年に、それまで自宅から30~40分間で通勤できた事務所から、一気に通勤の条件が悪化する加工場へ異動になってしまいました。首都圏だったら1時間でも通勤時間が短いと感じられるかもわかりませんが、加工場が自宅から2時間半ほどかかるようなところにあって、それでも何とか約5年間勤め続けていたのですけれども、やはり通勤に使う時間が非常に無駄だと思って、再就職は非常に難しいと考えながらも退職しました。今はパソコンを持っておられる方も多いと思いますが、営業事務ではパソコンを使っていなかったので、再就職で事務系の仕事は非常に難しいと感じていました。そこで、最初に選んだ仕事が、自分の好きな、お客様と接していられる仕事だったのでそれに近い仕事をしていこうと思って、2000年10月に株式会社ライフコーポレーションで契約社員の募集があったので、私はこちらに入社しました。

(3)ライフの契約社員から正社員へ

 契約社員と聞いて、初めは何とも思いませんでした。募集の内容に、「月給で普通に毎月決まった給料をもらえます。かかった交通費もすべてお支払いします」と書いてあって、あまり疑問を抱かずに応募して採用していただくことになったのですけれども、入社して契約書をよくよく読みますと、「正社員への登用はありません、それでもいいですか」ということと、「ボーナス(ライフでは一時金と呼んでいます)はありません」と記載がありました。「契約社員なので毎年1回1年契約を交わしていただきます。その時にあなたの働きぶりなど様々なものを見て、契約できない場合もあります」と書かれていましたし、「退職金はありません」とも書かれていたのです。でも契約社員なので、「正社員ほどそんなに仕事を任されることはないだろう、子どもも幼いし、何かあったらすぐ退職できるのではないか」と自分の甘い考えもありながら、契約社員として入社しました。
 後ほどお話をさせていただきますが、その中でやはり様々な課題が出てきました。私は、2008年5月に契約社員から正社員への登用試験を受けさせていただく機会がありまして、その試験に合格して正社員になりました。その頃から、契約社員として働く従業員の課題などを自分自身も感じていましたし、もっと変えていく必要があるのではないかと考えていました。その時に労働組合からも声をかけていただいて、2011年にライフ労働組合へ出向しました。私の自己紹介が長くなりましたが、様々な職種に関わって、様々な雇用形態で働いたということで、今日はこんな人が話をするのだと思っていただければと思います。

①株式会社ライフコーポレーションの概要
 株式会社ライフコーポレーションは、四つ葉のクローバーのマークを店章に掲げている食品スーパーです。主に首都圏と近畿圏で256店舗を展開しております。これは2016年2月現在の店舗数ですが、11月30日に京都に出店した店舗と、オーガニックの専門的スーパーも大阪では展開しており、2016年11月末現在では、首都圏に113店舗、近畿圏に149店舗、合計262店舗を展開している食品スーパーとなっています。首都圏にも、東京都墨田区押上にセントラルスクエアという店舗があるのですが、今までの既存のスーパーとは違って、少し差別化をはかろうと、百貨店のデパ地下のような感じで量り売りの総菜を扱うような店舗を作って今、旗艦店として営業をしているところです。

②ライフ労働組合の概要
 次に、私が今いるライフ労働組合は、1971年12月に結成され、執行部体制が26名(2016年10月現在)で成り立っており、その内専従者は、近畿圏と首都圏に合計12名います。専従者は今、全員会社を休職しています。理由としては、やはり会社に労働者の立場として意見を言っていく立場になっていますので、会社からお給料をもらってはやはり意見を言いづらいです。会社からお金をもらいながら、「賃金を上げてくださいよ」とは言いづらいということで、今は会社からは給料をいただいておりません。会社も休職しております。そういった働き方をしているのが専従者です。
 他に非専従という形で14名が店舗で勤務しながら労働組合の活動を両立しています。後ほどお話をしますが、非専従の中には正社員だけではなくパートタイマーの組合員に近畿圏と首都圏で2名ずつ、合計で4名入っていただいて、パートタイマーとしての課題を直接経営層に伝えていただいています。また副店長も、管理職組合員ということで、労働組合の組合員になっています。今、女性の副店長が1名非専従として仕事をしながら、労働組合の活動で様々な目線で女性活躍とか、管理職の働き方について、管理職としての立場で課題を伝えてもらっています。
 先ほど、「専従者12名は休職しているのでお給料を会社からもらっていません」とお話ししましたが、それでは専従者はどこから給料をもらっているのか。ライフ労働組合は、1万9727名(2016年10月現在)の組合員で成り立っています。組合員からはそれぞれ、活動をするための組合費をいただいておりまして、専従者はこの組合費の中からお給料をいただいています。お給料としては、労働組合だから何か違うものということではなくて、会社と合わせた部分で様々な等級試験を受けてお給料を決めて、労働組合からお給料をいただいています。
 正社員の中からは労働組合の支部長としてお店に1人、支部の役員ということで労働組合とのパイプ役となって仕事をしていただいている方もいます。嘱託とエリア社員というところでは、年に1回集会を行ったり、直接アンケートを取ったり、個別に聞き取り調査をして、処遇改善の課題を確認しています。

2.組合員の雇用形態

 下の表で、「ロング」「ミドル」「エムエス」が、パートタイマーとして時給で仕事をしている方々です。下の表には契約社員はありません。契約社員はなくなったのですか?ということなのですが、契約社員という名称が今、正社員、嘱託の横に書いてある「エリア社員」に変わっています。なぜ変わったのかということは後ほど、私が疑問に思ったことなどと合わせてお伝えできればと思っております。

(1)正社員

 組合員の雇用形態について、まず正社員からお話しします。契約期間は無期契約となっています。4月に入社したら、本人が退職したいと思わない限りは、仕事を続けていただけることになっています。労働時間に関しても、1日平均8時間となっていますが、勤務時間は1カ月単位で1日4時間から10時間の変形労働時間制を使っており、今日4時間働いた場合に明日は10時間働けるような働き方です。賃金は月給制です。また、年間休日は115日となっており、お正月の1月1日はお休みをしています。加えて、月に大体9~10日くらいの休みとそれ以外に指定休暇として年間で4日間、月9日の休みに1日加えて10日間休んでもいいし、連休を取ってもいいということで、年間115日の休みが今あるということになっております。今、首都圏と近畿圏で店舗を展開しているのですが、転勤については制限がありません。ただし、実際の運用では、特に何かがない限りは近畿圏から首都圏に転勤をするということがありませんので、近畿圏は近畿圏の中で異動をすることになっています。配置転換は部門単位で行いますが、初めに入った同じ部門でずっと働きますということではなくて、本人のスキルアップのために異動するとか、パンなどを作る部門では、アレルギーを発症して身体的にこの部門ではどうしても続けていけない方も出て来るので、そういった方は配置転換することになっています。職務については、正社員は定型作業から管理業務ということで、ここも後ほど担当から執行役員として役職任命があるのですけれども、店舗は一応チーフまでが、部門の中では最上位の等級になっております。その後、試験を受けて副店長や店長代理、店長をめざしていただくことになっているのですが、チーフになるまでに、やはり一旦はパートタイマーやアルバイトと同様にレジ業務を覚えたり、食品部門なら品出しを覚えたりといった経験をして、それらをもとに担当から執行役員に進んでいただくということになっております。

(2)嘱託社員

 嘱託の社員は有期契約で、1年に1回契約書を交わしていただくことになっています。労働時間は正社員と同じで、年間2000時間、1日平均8時間です。嘱託は、一応変形労働時間とは書いていますが、ほぼ同じ時間帯で出勤をしていただいていると思います。というのは、お昼から来て夜間の閉店作業を行うため24時~25時まで残っていただくことが基本的な働き方になっていて、ほぼ固定の時間になっていると思います。ただし、労働組合の中で課題として今感じているのですが、嘱託の中でも夜間の仕事をしている方もいれば、朝の開店の準備などをしている方もいますし、職人的な感じで水産などお刺身を作る方々もいて、それぞれがバラバラの時間で働いており、賃金や考課もばらついています。課題だと認識はしているのですけれども、一応契約としては1年に1回ということで、どこに配属されていても同じ契約形態をとっています。休日も正社員と変わりません。転勤は、特定の地区内に限定されています。例えば近畿で応募・入社された方は、近畿で仕事と異動をしていただくことになっています。配置転換は、夜間であれば夜間だけの仕事だけをするという職種限定になっています。ただし、ここも大変微妙な働き方になっていまして、レジ業務の繁忙応援はしないといけないし、夕方以降には生鮮商品の割引をしていくのですが、その指示を売場に出さないといけないしということで、少し管理業務的な要素を含んで仕事をしていただいています。チーフの役職で働いている方も2名います。

(3)エリア社員

 エリア社員も1年に1回契約を交わしています。エリア社員には、エリア1級、エリア2級という区分を設けていまして、エリア1級はどちらかというとパートタイマーに近い働き方、つまり、できるだけ限られた店舗で、しかも限られた時間で仕事をしたいという方です。また、部門のチーフになりたくないという方がエリア1級として働いています。エリア2級については正社員に今後なっていきたいという方なので、エリア2級でチーフとして仕事をしている方もいます。
 ただし、正社員と違うのは契約です。1年に1回契約書を交わしていただくことになっています。労働時間、勤務時間、休日は、特に正社員と違いはありません。エリアだからということで決まった時間に働けるのはほぼ1級で、2級は業務の繁閑によって働く時間帯を前後して仕事をしています。
 正社員と違うところは、勤務地が店舗限定となっています。正社員は近畿地区(大阪、奈良、神戸など)のどこにでも異動は命じられますが、エリア社員は基本的に自宅近くの約5~6店舗から選んでいますので、店舗限定ということで、正社員とは少し違うということで区別をつけています。職種も限定されており、例えばレジだったから次は違う部門に行きたいと言っても認められないことになっています。私も、もともと契約社員としてレジ業務で入社したので、レジ業務のままでいました。
 職務については、一部はチーフという立場でマネジメントをしている方もいますので、管理業務も含んでいるということになっています。

(4)ロング・ミドル・エムエス(パートタイマー)

 次に、ロング・ミドル・エムエス(パートタイマー)は、全員が有期契約で、1年で1回契約を交わすのではなくて、入社して3カ月経つ方は3カ月の中で「ステップアップシート」という書類を書いていただいています。作業の出来、不出来を○×で付けて、もしできていれば次のステップに進んでいただくことになっています。最初に入った方(P1級)についてはまず3カ月、次は半年で、最終的には1年で契約を交わしていっていただいています。
 このロング・ミドル・エムエスのそれぞれにP1級があるのですけれども、皆さん同様に3カ月、半年、1年という契約となっています。1年契約の人はどういう人なのか。これはP2級ということで全ての基本的な項目はできている方々がP2級以上になっていきますので、この方々は1年に1回の契約更新、また人事考課表を用いて評価をして、次の等級に進んでいただく。また、ボーナスを支給されているパートタイマーもいますので、人事考課表を用いて1年に1回面談があることになっています。賃金は、パートタイマーなので時給で、勤務時間や店舗はそれぞれ個別に店舗が契約していますので、賃金も、それぞれ地域によって最低賃金が決まっているために少し違います。また、本人が特に配置転換を希望しない限りは1つの部門で働き続けていただけます。今、ロングが最も長時間お仕事をしていただいているのですけれども、ロングの中で部門を掛け持ちしてお仕事をしている方もいますので、そういう方はそれぞれ部門の評価もされています。職務は、パートタイマーの中にも正社員と同様に、定型作業や一部管理業務が入っているという感じです。これは表の役職任命にも書いていますが、店舗では今、人手が激減しています。新しい店舗を作ると正社員も異動していかないと店舗運営ができない実態もありますので、正社員がいない部門も今、非常に増えてきています。やはりパートタイマーの中でリーダーになっていただける方がいないと、勤務シフトの調整がなかなかうまくいかないので、パートタイマーにも、会社から「あなたは部門リーダーになって下さい」という任命をしております。その方々は、一部管理業務もしていただいています。
 その方々は、ロングの中で等級が最上位のアソシエイトで、社員代行業務をしてもらっている方の等級と、3級までしかないのですけども、P 3級以上で部門リーダーとして任命されている方が、部門の一部管理業務をしています。
 労働時間は、週25~37.5時間となっています。2016年10月に社会保険の法律が変わって、月額8万8千円以上もらう方は社会保険に加入することになり、東京周辺の最低賃金時間額が上ってきて、1日5時間・週5日25時間働くと月額8万8千円を超えてしまうので、社会保険に入っていただかないといけないということで、社会保険に加入している方はロングという区分で働いていただいています。先ほどの部門リーダーは正社員に近い働き方なので、例えば1日7時間とか7.5時間で契約してもらっている方は、固定した時間帯で働くというよりは、忙しい時間の前に来たり、夕方に人手が足りない時はずれてもらったりして柔軟に働いていただく時間ということで、37.5時間という、やや半端な数字で契約をしております。
 今、組合員の中でもこれだけ様々な雇用形態で働いている方がいるということと、上の表の嘱託から右側は見ていただいても分かるように非正規雇用で、有期(1年)の契約となっているので、こういった方々の処遇を改善するために、表の見直しなども労働組合では進めています。
 非正規雇用の組合員は組合員全体の中でも77.9%を占めています。もともと非正規雇用の方はライフ労働組合の組合員ではなかったのですが、2011年まではロングという雇用区分のパートタイマーで、社員に近い働き方、7時間以上仕事をしていただいている方、なおかつ、等級の高い方だけを労働組合の組合員として迎えていました。しかし、店舗をよくよく見ると4時間とか5時間で働く方が大変多いことがわかりました。私もずっと店舗にいましたので、一緒に店舗で働いている中で、やはりロングの方は賃金も高いですし、能力も求められるので、そんなに数はいなかったのです。しかし、このミドルとエムエスという少し短い時間の方が多いこともあったので、労働組合としては、2011年9月にミドルとエムエスの皆さんに労働組合へ加入していただくこととなりました。ただし、働く時間が短くても組合費を納めていただかないといけないということもあって、ミドルとエムエス、ロングの等級がまだ浅い方については、「労働組合とは何か」というお話をさせていただいて、加入を促進していきました。ここまでが労働組合の概要となっております。

3.契約社員に対する疑問

 私は、2000年10月2日に契約社員として入社して、大阪の今里店でレジ部門に配属されました。その店舗で2001年3月頃までの半年間は、パートタイマーやアルバイトと同様にレジ業務やサービスカウンターでの接客を教わっていました。このお店は大型店(GMS)と呼ばれていて、食品だけではなく衣料や生活関連といった日用品も扱っていましたので、正社員の人数も大変多かったのです。そのため、チーフ1人では様々なマネジメントができないということもあって、チーフを補佐する「サブチーフとして職務を拡大するように」と言われました。ただこの時既に1つ疑問に思っておりまして、私より先に入社している新卒の正社員が何名かいたのですが、私はもともと流通関係で働いたこともあるということと、年齢も新卒の方よりは少し高くて落ち着いた判断ができるのではないかということもあって、「職務を拡大していくように」と言われました。今までのチェッカー(レジ)業務とかサービスカウンターでの受付業務だけでなくて、レジ部門の全員の月間シフトを作成し、毎日の作業割当表を作成しています。この時にこの人は休憩、これだけ全員契約どおりに働いたら売り場が回らないといったことも考えながら、また、これから年末に向けては忙しくなるというようなことも考えつつ、月間シフトや作業割当表を作成しました。その他に部下の育成や、レジと事務で業務は分かれていましたが、業務を一体化しようということで「事務の業務も習得するように」とまで言われました。
 今里店では4年間、こういったことで疑問に思うこともありつつ勤務していましたが、2004年に初めて転勤があり、大阪の梅田近辺の「十三東(じゅうそうひがし)店にレジチーフとして着任して下さい」ということで、転勤と役職任命が同時に発令されました。この時、私はまだ契約社員のままでした。「正社員と契約社員とは何が違うんやろ?」と思いました。よく考えてみたら、働く時間は特に変わりません。チーフがいない時はその代わりをしないといけませんし、任されるチーフという仕事が、正社員と契約社員で変わりはなく、契約「社員」とついているので、店舗の店長からは「社員やろ」「社員やねんからできるよね」のような言い方で、特に雇用区分が違っても任される仕事は変わらないこともありました。転勤も正社員と同様にありました。では、「何が違っているんやろ?」と自分でもあれこれ考えた時に、ボーナスがなかったのです。私の後に新たに正社員で入って来る人がいたら、その正社員の人は私の仕事の半分以下しかできなくてもボーナスは出ます。でも私はチーフとしてどんなに頑張って働いていてもボーナスが出ない。「では何を頑張ったらいいのですか?どうなったら契約社員でもボーナスをもらえるのかな」という疑問が募ってきました。

4.非正規労働者の処遇改善

 正社員の給料は基本給と役割給で構成され、チーフなどの役職や等級に応じて金額が違います。各種手当も支払われています。下の表には2016年の高卒と大卒の初任給を載せています。正社員の横に書いている契約社員の賃金は、月額18万円プラス資格給と書いています。

(1)一時金

 正社員は人事考課表による評価を経て支給されています。上期と下期の人事考課表によってその人の目標を立てたレポートの内容や、店舗の業績配分によって一時金の金額が決まっていたのです。契約社員は、等級別に年間で支払われる一時金です。年間22万円だと夏にもらえる金額が11万円ぐらいです。給与明細をもらうと、天引きされる税金などを全部差し引いたら10万円を下回る時もあるのです。でも正社員はそんなに安い金額ではないので、「これだけ同じことをやっているのに、なんで一時金がこんなに違うのか?」という疑問がありました。

(2)各種手当

 チーフ手当も、契約社員は今1万2千円のみです。一方、正社員は1万2千円~1万8千円で、等級によって違います。地域手当は、首都圏と近畿圏でともに正社員は支給されます。首都圏が今1万5千円、近畿圏が1万2千円。首都圏は生活水準や物価がかなり高いので、少し多く支給しております。ただし契約社員については首都圏のみ、ここだけ正社員と逆転しているのですけれども、2万円支給しています。
 正社員には、配偶者がいたら家族手当が支給されます。子どももいたら1人目、2人目、3人目でそれぞれ違う金額で支給されています。しかし、私も子どもが1人いましたが、契約社員には家族手当がありません。契約社員に家族手当がないことも労働組合と関わってから知ったことですが、皆さんも、もしアルバイトをされていたら、給与明細の中身もしっかりと見て下さい。転勤も、店舗が限られているけれども、契約社員でもあります。退職金は、正社員はポイント制となっていまして、何年以上働きましたというポイントに、退職事由が定年退職だと自己都合退職よりもポイントが加算されます。さらに最終的な役職(例えば部長)に応じて役職ポイントが付与されて、それらにポイント単価で1000円を掛けて算出した退職金が支払われます。しかし、契約社員には、たとえチーフをやっていたといっても退職金がなく、感謝金として15万円だけが支払われることになっています。「仕事は同じなのに、なんでこんなに違うんかな」という疑問を、労働組合と関わりを持った時に抱きました。労働組合では契約社員集会を年に1回開いていただいていまして、こういったところで様々な制度の話や、疑問に思っていること、不満に思っていること、「もう少しこうしたらもっと人が増えるん違うかな」みたいな話をさせていただく機会があり、ここで労働組合は様々な聞き取りをしていきました。働く店舗が限定されているといっても、新しい店舗がどんどん開店してどんどん増えていくのです。逆に、「自分の家からすごい遠いやん」というようなお店も異動対象として契約に入れてもいいですか?と言われることもあって、「どうゆう限定なんやろ?」という印象も持ちましたし、契約社員とパートタイマーの一時金はあまり変わらないのです。パートタイマーにも退職金はないのですが、感謝金として10万円支払われます。契約社員とパートタイマーの区別がよく分からないですし、仕事の中身では「正社員と何が違うんやろ?」ということ。「社員なんやから」と言われることもある半面、「契約なんやろ」「契約なんやから別にええやん」みたいな言い方をされることもあって、あまり仕事を与えられない。どちらかというとワーカーです。レジを打ってばかりとか、作業してばかりとか、様々なマネジメント業務を教えてもらえないという人の意見も様々に出て、取り組みをしているところです。

(3)エリア社員の処遇改善

 契約社員から、今はエリア社員という名前に変わった経緯ですが、働く店舗を限定させてもらってはいたのですが、店舗がどんどん増えてくるということと、やはりなかなか転勤にはそぐわないというエリア2級として働いている方もいらっしゃいます。そういった方々の話もあったので、エリア社員としてもう少し区別をしていこうということで賃金も、2015年に制度を変えまして、正社員の高卒の方と同じ賃金表を用いて、頑張ったらその分だけ毎年お給料が上がるシステムも入れました。嘱託は、多様な働き方がありますので、まだまだ課題があるとも考えています。

(4)改正労働契約法施行後の課題

 2013年4月に改正労働契約法が施行されて、施行時に既に有期雇用契約で働いている方が繰り返し契約を更新して通算5年を超える2018年4月には、本人の申込によって無期雇用契約に転換できるようになります。パートタイマーでも今、部門リーダーをしている方がいますが、その方が無期契約になったら「どのようになっていくの?」ということも考えていかないといけなくなります。無期契約で、部門リーダーで、チーフの代わりをしています。正社員の代わりをしています。でも時給で働いています。退職金はありません。感謝金として10万円が支払われます。一時金(ボーナス)は出るけれども、金額は正社員とは全く違う金額になっています。そういったことで、様々な課題があります。私も2000年から2008年は契約社員として働いていました。その時は、退職金はなかったのですけれども、2008年に正社員となった時から、退職金のポイントが発生しているのです。でも、正社員で2000年に入った方と契約社員として2000年に入った私で、会社への貢献度にはたぶん違いがないと思うのです。同じ年数、同じ仕事をして働いているけれども、2000年に入った正社員の退職金と、登用試験を受けて2008年から正社員になった人の退職金には非常に大きな差がありまして、今、労働組合でも少し課題として感じています。家族手当など、正社員にあって非正規で働く方にはないところも今後、労働組合が会社に提言していかなければならないと思っています。あとは長時間労働の解消や年次有給休暇(年休)の取得です。スーパーマーケットはどうしても朝から晩まで1年中開店しているため、年休をなかなか取りづらいという意見を多くいただいているので、そういった課題を整理して会社へ伝えていかなければなりません。

5.労働組合として取り組む課題

 最後に、どのように労働組合が意見を聞き取って、会社と交渉しているかというところをお話しします。
 2010年からずっと、会社とは団体交渉や事務折衝でパートタイマーの処遇改善、特に定期昇給制度の導入について話をしてきました。この結果、2015年にパートタイマーの賃金制度は変更することができました。契約社員にも定期昇給制度を入れて欲しいと要求したのですけれども、契約社員については結局先延ばしになって、2016年の春季生活闘争(ライフ労働組合では「チャレンジ」と呼んでいます)でやっと入れることができました。お金に関わることなど、会社に伝えていくべきことはやはり伝え続けないといけないことなので、労働組合がすることは、「1回言ってダメでした、じゃあ、やめましょう」ではなく、やはり疑問に思ったことはどんどん言い続けていかないといけないと考えています。非正規雇用で働く人は店舗の中にも大変多くいらっしゃるので、今後も多様な方々の意見を聞きながら、労働組合として改善していかなければならないと考えています。
 また、今日ここにいらっしゃる方には就職活動を終わった方も就職活動を今後する方もいらっしゃると思います。自分でせっかく選んだ会社を泣く泣く辞めることがないように、労働組合があれば、多様な意見を会社に伝えていくことができると思いますので、そういったことも1つ視点に入れていただいて、また会社選びをしていただければと思います。
 今日は「非正規労働者の処遇改善」というお話で、ほぼ自分の思っていたことをお話ししましたが、何か参考にしていただければと思います。
 ご静聴ありがとうございました。


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