埼玉大学「連合寄付講座」

2010年度前期「働くということと労働組合」講義要録

第3回(4/28)

働く現場・地域での取り組み②
ワークルールと労働協約

ゲストスピーカー:市川 佳子(連合 雇用法制対策局長)

1.はじめに

 皆さんこんにちは。まず、ワークルールというのは、狭い意味でいうと「働くことに関する様々な決まり事」ということです。労働組合と会社で約束ごとを交わす労働協約など、様々な決まりのことを総称してワークルールといっています。これは、皆さんが働くようになって初めて、自分にとって身近なことと実感されるかもしれませんが、それに対して労働組合がどういう取り組みをしているのかということを、今日はお話したいと思います。

  まず、水町勇一郎先生が書いた『労働法 第3版』の最初に出てくる事例を紹介します。

大学3年の河上君は週に3日それぞれ4時間ずつ居酒屋でアルバイトをしている。河上君は7月下旬、居酒屋の店主に「テニスサークルの夏合宿があるので、明日から3日間だけアルバイトを休ませていただけませんか」と頼んだが、店主からは「この時期は店の書き入れ時だし、代わりの人に来てもらうのは難しいから、ダメダメ」と言われた。河上君はどうしようか悩んだが、やはり夏合宿の魅力には勝てず、店の留守番電話に「やっぱり3日だけ休ませてください」との伝言を残して、合宿に向かった。・・・楽しい合宿が終わった後、河上君はいつも通り居酒屋に出勤した。すると店主は「お前が休んだせいで店はてんてこ舞いだったんだぞ。勝手に休むような奴はもう来なくていい。7月分の給料も支払わないからな」と言われた。こんなとき河上君はどうすることもできないのだろうか?

 皆さんが河上君の立場だったらどうしますか。この一つの事例をとりましても、今日私が話をする、働くということのルールの非常に多くの問題やテーマが出てきます。たとえば最後のところの、「もう来なくていい」という店主の言葉ですが、これが解雇ということであれば、この解雇は有効かという非常に大きなテーマがあります。これは裁判までいかないとはっきりしません。
 また、河上君が居酒屋で働きだしたときに、居酒屋とどんな契約をして働き始めたのかという契約内容の問題もあります。それから、休むことを留守電にいれたことが有効か無効かということもあります。これが無断欠勤になるのかどうかは、そのお店で働く上での規則がどうなっていたのかによります。休みをとる時は、所定の用紙に書くようになっていたのか。あるいは、どの人も休む時には電話ですませていて、それで何もいわれなかったという習慣があったかどうか。そういうことをとっても、判例は大きく変わります。 
 ただし、働いた分の給料を払わないというのは法律違反です。これだけは100%確実にいえることです。
 この事例に出ていることは、働くルールを考える上で複雑な問題が絡んでいますが、正式な就職でなくても、アルバイトなどをしていれば起こる可能性は十分にあることです。この事例を頭に置いていただいて、日本の国では、働く上でのルールがどうなっているのかを話したいと思います。

2.ワークルールとは何か

(1)法律による定め
 日本で働く・働かせるということの一番基本的なルールは「労働法」といわれる一連の法律です。労働法は、憲法第27条と28条で保障されています。憲法27条では3つのことが保障されています。ひとつは労働権で、勤労の義務・権利を保障しています。これに基づいて、雇用対策法や職業安定法などの法律があります。もう1つは労働条件に関する基準の決定ということで、労働基準法(労基法)、最低賃金法(最賃法)、労働安全衛生法といった法律があります。3つめは、児童の保護ということで児童福祉法があります。
 憲法第28条は、労働者の団結する権利の保障、つまり労働組合を作る権利を保障しています。具体的には、労働三権といって、団結権・団体交渉権・団体行動権が保障されています。それに基づく法律として、労働組合法(労組法)、労働関係調整法(労調法)、労働委員会規則などがあります。

(2)労働協約による定め
 法律以外にも労働協約による定めというものがあります。労働協約というのは、労組法第14条で定められており、労働組合と会社の合意のもとに作られている労働条件です。これは労働組合にカバーされている組合員全員と会社の両方を拘束するという、法律に次ぐ強い規制力をもつもので、労働組合の三種の神器と言われている大切なものです。

(3)就業規則による定め
 就業規則による定めは、会社が作るものです。会社が人を雇って働かせるときに、どういう条件で働かせるか、職場での規律をどうするか、先ほどの河上君の例で問題となった休みを取る時の手続きや、遅刻・欠勤をしたときのペナルティーなどを含めた職場ルールです。常時10人以上の労働者を雇用している使用者は、就業規則を作らなければいけないと法律で決められています。
 就業規則はそこで働く人を縛るルールですから、働く人が知らなければどうしようもありません。したがって、そこで働いている人たちがいつでも見られるような状態にしておかなければいけません。
 就業規則は会社が一方的に作るものです。しかし、就業規則は法律や労働協約に反するものであってはならないとなっています。たとえば、就業規則の中で、先ほどの河上君の例ではないですが、無断で欠勤をしたときには今まで働いた分の時給も払わないという定めをしていたとしても、法律はこれを認めていないので無効です。また、そこに労働組合があって、労使交渉の結果、労働協約で就業規則を上回る条件が決められていれば、その部分の就業規則は無効ということになります。

(4)労働契約による定め
 個人と会社とが結ぶ契約を労働契約といいます。使用者と労働者は、基本的にそれぞれ労働契約で結ばれていると解釈します。労働契約は、口頭による合意でも構いません。口頭であっても約束なので、それに縛られます。
 しかし、職場に労働組合があって労働協約が結ばれていますと、その労働協約の内容が個別の労働契約より優先されます。

3.集団的ワークルール

(1)労働協約の効力
 それぞれの効力の強さを大雑把に見ますと、一番強いのは強行規制のある法律です。法律に次ぐ力を持っているのが労働協約で、就業規則のほうがやや力が弱く、さらに労働契約の力が弱いということになります。なぜこのような順番なのかというと、会社組織の中では、お互いを助けたり、助けられたりしながら、ほとんどが集団で仕事をしています。ですから、個々人の労働契約も重要なのですが、集団の職場の中で生産性や効率をあげて、いいパフォーマンスをしていくとなると、やはり集団としての規律・規制が非常に重視されるのです。
 要するに、労働協約というのは個々人ではなく集団の約束ごとです。その会社に関わる人を集団で縛る決まりごとといえます。強行規制である法律は最低限のものですから、よりよい労働条件で仕事をしたいと思ったら、労働組合と会社が交渉して法律を上回るルールを作り、労働協約としていくという仕組みになっています。

(2)集団的ルールの重要性
 なぜ、こんなに労働組合との約束が重視され、集団的なルールを認めるのか。個人それぞれでやっていけばいいではないかと思われるかもしれません。しかし、たとえば、同じような仕事をしているAさんとBさん、Cさんがいたときに、Aさんは年収300万円、Bさんは500万円、Cさんが700万円だとします。これは法律上何の問題もありません。最低賃金法に引っ掛からない限り全く問題はないのです。ただ、大手・中堅企業など従業員数が多いところでは、このような賃金の在り方は合理的ではありません。集団でルールを決めて、仕事の内容を決めていく方が合理的であると考えられています。
 それともっと大事なことは、権利として与えられていることであっても、一人で経営側に向かって主張することは難しいということです。河上君のケースでもクビだと言われたときに、「労働法上はこうなっている。私にはこういう権利がある」といって、1人で店主を説得しようとするよりも、他のバイトを探したほうがいいとなるわけです。
 しかし、アルバイトではなく、学校を卒業して就職をして、これから一生その会社で働き、家族を養っていかなければいけない人なら、クビだといわれたとしても、「はいそうですか」というわけにはいきません。日本は、正社員になると、多かれ少なかれ、1つの会社のなかで何年かいろいろな経験をして、キャリアやスキルを上げて能力をあげていくと、給料が上がっていくという仕組みが一般的です。ですから、途中でクビになり、運よく別の会社に移れたとしても、ゼロからとはいいませんが、5年くらい戻った状態でのキャリアとして評価され、それに見合った給料になることが多いです。要するに、これは働いてみるとよくわかると思いますが、クビにはなりたくないわけです。そして、上司からよい査定をもらって昇進していきたいわけです。
 ですから、「私はこの休みをもらう権利があるはずだ」とか、「もっと給料があがっていいはずだ」と思っていても、上司や、店長、あるいは小規模なところでは社長に、自分一人だけで主張することは非常に大変です。最初の段階では対等な立場の契約であったとしても、やはり労働者と経営者とでは立場も能力もちがいます。経営者には、顧問弁護士や会計士、社会保険労務士などの専門家がついているのに対して、労働者は自分一人だけしかいません。交渉力が格段に弱いということです。ですから、弱い立場の労働者に法律上の様々な権利と保護を与えて、労働組合を結成させる権限を加えて、集団の力で対等に経営者と交渉できるようにするのです。

(3)労働法を取り巻く環境変化
 これまで特に、戦後日本は、自動車や電化製品など質のいい製品を作り、どんどん輸出して、非常に経済発展を遂げました。そのときは工場の中でたくさんの人を使って、画一的な製品を大量に作り、大量に売っていきました。今の労働法は、工場で同じ仕事をするたくさんの労働者が効率よく働き、その人たちの権利が守られることを主眼としてできています。したがって、集団的にカバーされる法律の体系になっています。
 ところが、オイルショック以降、日本のモノづくりも変わりましたし、環境問題やITの進展などがあり、仕事の質や量が非常に変わってきました。そのようななかで、今の労働法がこのままでいいのかということが最近議論されています。一人ひとりで仕事をするIT関係の仕事も増えてきたことなどを踏まえながら、専門家の学者たちが議論をしているところです。

4.労働法ができるまで

(1)ILO第144号条約に則った三者構成
 次に、ワークルールを、誰がどう決めていくのかということです。まず、労働に関する法律は、ILO(国際労働機関)で基準を政・労・使の三者で決めます。それが、条約とか勧告といわれるもので、これがグローバルな労働関係を示すことになります。
 このなかに、第114号条約「国際労働基準の実施を促進するための第三者の間の協議に関する条約」があります。日本も批准しているこの条約は、労働関係の法律を作る時は、労使の団体が協議をして決めなさいということになっています。そこで日本では、労働関係の法律を決めるときには、労働政策審議会という審議会をもつことになっています。その審議会は、公益、労働者側、使用者側という三者の委員から構成されています。この三者構成で、作るべき法律や、改正すべき点などを議論して、厚生労働大臣に答申をします。そして、厚生労働大臣はこれをもとに法律案を作り、国会に提出するという仕組みです。

(2)労働政策審議会
 労働政策審議会は、7つの分科会と9つの部会が設けられていて、それぞれカバーする法律がちがいます。たとえば労働条件分科会では、労働基準法や労働契約法を議論します。またその下に2つの部会があります。1つは労災保険部会で、ここでは業務上や通勤途上の傷病に対して保険給付を受けられる労災保険制度について話し合います。もう一つは、最低賃金部会です。最低賃金には、都道府県ごとの地域別最低賃金と、産業別特定最低賃金の2種類があります。地域別最賃は、都道府県によって金額が違います。一番高いのは東京都で時給791円、埼玉県は735円となっています。これ以下の時給でアルバイトを募集してはいけません。その他に、私が委員を務めている安全衛生分科会ではアスベストの問題などを議論します。今話題になっている労働者派遣法など、労働市場にかかわることを決める職業安定分科会もあります。
 このような審議会への参加や国会への働きかけは、労働組合にとって非常に大きな仕事の一つです。たとえば、労働者派遣法などが国会で審議されていますが、連合は、こうしたことにも審議会の段階から関わっているということです。

5.労働法を生かすために

(1)労働法は守られているか
 労働法は法律ですから、本来労働基準法に書かれていることを経営者が守らなければ、罰則つきで取り締まられます。しかし、実際のところ労働法は全く守られていないというのが現状です。
 連合は、最近ワークルールチェッカーというサイトを開きました。3分間で、今自分が働いている労働条件が法律に違反していないかチェックできるもので、携帯電話からもアクセスできます。これには1ヵ月で10万件を超えるアクセスがありました。この内容を分析したところ、「ひとまず安心」となったのは、10万件のうち2割でした。残り8割はなんらかの法違反の可能性があるということです。とくに派遣労働者でアクセスした人が、法令違反の傾向が強かったという結果でした。
 自由記入欄に寄せられた感想をみると、「社員は残業手当がつくのに、アルバイトは残業手当がつかないのはひどい」「能力がないから残業しても時間外手当がつかないんだと言われる」「10年以上勤務しているが健康診断は1度も受けさせてもらえない」、「仕事中の怪我は自分の責任であるとされた」などがありました。労働者が健康診断を受けることや、労災については労働安全衛生法によって決められていることです。仕事中に怪我をした場合は、健康保険ではなく、労災保険から補償を受けることになります。こういうことも守られていないというのが実態です。

(2)労働法が守られるために
 労働法が守られない原因の一つに、働いている人が、自分にどんな権利があるのかよく知らなかったり、会社側もそれについて知らなかったりすることがあげられます。
 たとえば、時間外手当がつかない場合、「能力がないから残業するのだから手当はつかないと言われた」という感想がありました。労働時間については、1日8時間、1週間40時間が法定労働時間です。これを超えて労働させてはならないと労働基準法に書かれています。これが労働時間の基本です。ただし、過半数代表者あるいは、過半数を組織する労働組合と会社との間で時間外労働について労使協定を結べば、40時間を超えて働かせることができることになっています。その超えた分については、25%割増の賃金を払わなければいけないということが、罰則付きで労働基準法に書いてあります。それが守られていないということです。
 あるいは、実際は7時、8時まで残業しているのに、タイムカードは6時として打たれるなど、それ以降残業した分については支払われないということがあります。そもそも時間外協定がなければ、時間外を働かせることすらできないのに、そうした協定もなしに時間外を働かせています。アルバイトでも8時間を超えて働けば、8時間を超えたあとの分は時間外手当を出さなければ違法です。その時にも当然時給の25%増しで払わなければなりません。こういうことを、皆さんもぜひ知っておいてほしいと思います。
 したがって、労働者も会社もルールを「知る」ということが、労働法を守っていくうえで最も必要なことだといえます。それと、労働組合の取り組みも重要です。さきほどのワークルールチェッカーの分析で、「ひとまず安心」と答えが出た人のうち、労働組合が自分の職場にあると答えた人が、ないと答えた人の2倍いました。つまり、労働組合があるということは、それだけ法令遵守の傾向が高いということがいえるわけです。ですから、労働組合は、こういうルールのために今後も取り組む必要があります。

6.労働組合の取り組み

(1)連合(ナショナルセンター)の取り組み
①法律ができる(改正される)ときに
 労働組合の全国的な組織である連合は、法律ができるときや改正するときには、まず加盟している組織を集めて、皆の意見を聞いて議論します。そして、連合としてこの法案ではこういうことを確立しようという「方針」をたてます。そして、その方針に基づいて審議会で意見を述べ、そういう法案になるように一生懸命頑張るわけです。
 審議会には経営者の代表も来ていますから、私たちとは正反対の意見をいうことが多いです。そういう対立関係のなかでは、たまに平行線をたどって決裂をすることもあります。しかし、交渉というのは、0になるか、100になるかではありません。0になるよりはいいだろうというところでお互いが妥協をする、これが交渉です。連合ではこのような取り組みをしています。

②法律ができて(改正されて)から
 新しい法律ができても、日本の国民全員が知っているわけではありません。そのため、連合では、新しくできた法律のポイントを明らかにし、職場で守らなければいけないことを覚えてもらえるように広報活動をします。それに加えて、その法律を上回る内容を労働協約にしていくためのガイドラインを出していきます。

(2)産業別労働組合・企業別労働組合の取り組み
 連合には今、54の産業別組織(産別)が加盟しています。その産別の下に、企業ごとの企業別労働組合(単組)が加盟しています。たとえば、自動車総連という産別であれば、企業別組合としてはトヨタとか日産の組合が入っています。労働組合の全国組織というのは、このような構造になっています。
 組合ごとにそれぞれの役割があり、働いている人に一番近いのは、企業別の組織です。同じ産業だといっても規模や仕事が違うので、職場の中で一番近いルールを作るのは、やはり企業別組合と企業が結ぶ労働協約であり、これがこの企業で働く人たちの一番大きなルールとなります。そのルールの基準は、上部団体であるそれぞれの産別が決める方針に基づいています。
 新しい法律ができると、連合では、実際に働いている人たちが使えるようなルールを作るための具体的な指針をつくり、産別に情報として周知します。そうすると、産別では、法律よりも協約でさらに上積みをしていこうということを決めていきます。
 また、産別は傘下の組合の労働者を保護すると同時に、公正競争を確保するという役割も持っています。公正競争というのはどういうことかというと、たとえば、トヨタの子どもの看護休暇は3日しかないのに日産は15日あるとしたならば、それによって企業のコストが変わってきますので、公正な競争が阻害されることになります。つまり、産業別に組合を作っているのは、その業界における働くルールの基準を一緒にし、企業間の公正な競争を担保するという役割もあるのです。
 こういう仕組みのなかで、産業別組合は傘下の企業別労働組合に対して指針を出し、ガイドラインを示していくのです。それは、企業別労働組合のそれぞれの職場における取り組みをバックアップすることになります。そして、ここで会社と労働協約を結んで、そこの職場におけるルールを作っていきます。

(3)労働協約作成の事例
 JAMは、企業の規模が10人とか20人とかの中小企業がたくさん加盟している産別です。トヨタや日産の労働組合は何万人という組合員がいますので、組合費で組合の仕事を専門に行う専従役員を雇い、労働法が改正されたら、それらを分析して、労働協約の原案を作り会社と交渉することができます。ところが、10人、20人しかいない小さな町工場では、組合の専従を雇うことはできません。そういうところでは、労働組合の仕事は会社の仕事が終わってからやっています。したがって、力もあまりないので、JAMがきちんと指針を作っていく必要があります。
 たとえば、育児・介護休業法が有期雇用労働者にも適用拡大されることが決まりました。また、改正前は努力義務であった子育て中の短時間勤務制度や残業の免除が、今回の改正で義務となりました。JAMでは、その法律の説明や、JAMの組合だったらこういうことをやりなさいという方針を出します。
 その一つの例として、法律では、小学校入学前の子どもを養育している労働者は、1年に5労働日を限度として子どもが病気になったときなどの看護休暇をとることができます。ただ、法律上この5日の労働日は無給ということで、給料は支払わなくてもいいことになっています。この法律に対して、JAM労働組合の方針としては、①看護休暇は中学校就学の始期に達するまでとすること、②賃金は有給にすること、③取得日数は5日ではなくて10日を目指すという、法律よりも高い制度を取ることを話し合って決めました。そして、これを核にして職場のルールを作るようにしていくわけです。JAMではモデル労働協約を作り、各単組がそれを参考にできるようにしています。
 ここで例に出した育児休業というのは、育児・介護休業法という法律によって決められた労働者にとっての権利です。使用者がとらせなければいけないのです。ところが法律上ではそうなっていても、実際に皆さんが仕事を始めて、育児休暇を取りたいと思った時に、どのような手続きでとればいいのかわかっていなければ、それを要求することはできません。ですから、自分の会社がどういう決まりをもっているのかについて、皆さんがきちんと知らなければいけないし、労働組合も、働く人たちが職場の制度をきちんと知り、使えるような職場でのルールを作っていく必要があります。

7.終わりに

 法律にきちんと書かれていても、現実には使えないということがあります。それでも、労働法を勉強しておけば、何があるのかということが少しはわかります。そのために、厚生労働省が「みんなの労働法(仮)」という冊子を作っています。まだ検討中のところもあるのですが、厚生労働省が、就職しようとしている大学生、あるいは高校生のために、労働法についてわかりやすく書いたものです。皆さんが就職するときには、ぜひお読みになられるといいと思います。
 さらにもっと詳しく知りたいのであれば、専門的な労働法に関する本もありますし、インターネットで判例をみることもできます。
社会に出て働く前に、労働に関する様々なルールがあることを、ぜひ知っていただきたいと思います。そして、正しい環境の中で、よりよい職業生活を送っていただけることをお祈りして、私の話は終わらせていただきます。長い間ご清聴ありがとうございました。


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