埼玉大学「連合寄付講座」

2009年度前期「ジェンダー・働き方・労働組合」講義要録

第12回(7/15)

課題解決に向けての取り組み④ 地域における男女平等参画をめざして

ゲストスピーカー:佐藤道明(連合埼玉副事務局長)

1.私たちを取り巻く社会変化

 皆さんこんにちは。ただいまご紹介いただきました連合埼玉の佐藤道明でございます。今日は課題解決に向けての取り組みの4回目「地域における男女平等参画を目指して」というテーマで講義を行います。特に、連合埼玉の男女平等参画の推進に向けた取り組みにつきまして、皆さんにお伝えをし、講義を進めていきます。

○社会構造及び人口構造の変化
  まず、私たちを取り巻く社会の変化という視点から話をしたいと思います。2001年からの5年5カ月の小泉政権における構造改革が、国民に残したものは何だったのかということを少し振り返ってみます。小泉政権に代表された言葉は「構造改革なくして景気回復なし」でした。とりわけ、アメリカからの年次改革要望書を受け、労働の規制緩和、金融の自由化、郵政民営化などの政策を進めてきたわけです。それは、安倍、福田、麻生政権へと引き継がれ、その結果、格差社会という事態を生み出すに至りました。
  日本は、これまで一億総中流社会といわれてきたわけですが、それが格差社会となり、二極化、勝ち組優先の社会となり、目に見えた階層社会を形成することになりました。さらに、グローバル化の一層の進展、少子・高齢社会、IT・情報化社会、地球環境・循環型社会という社会の変化もあるわけです。近々行われる総選挙で政権交代を実現させて、これまでの政権が残した負の部分を解決し、社会の変化に即した政策を打ち出し、実行していくことが非常に重要だと考えます。
  2005年の国勢調査を見ますと、埼玉県は15歳から64歳までの生産年齢人口の割合が全国で最も高い県です。700万人余りの県民のうち69.4%、489万人がこの生産年齢を占めています。しかし、県の推定では、生産年齢人口は2030年には373万人に減少すると言われています。埼玉県の合計特殊出生率は1.28%で、全国平均を下回り、都道府県の41位に位置している状況です。こうした中で、新卒者、現役はもちろんのこと、高齢者、女性などの労働力が、今後ますます重要になってくるわけです。そのためには、働くための法整備や環境整備が必要となってくるのですが、まだまだ整備が不十分と言わざるを得ません。
  人口構造の大きな変化が起きています。さらに、団塊世代といわれた人たちが一線を退く中で、働き方、暮らし方が大きく変化しているのは間違いありません。しかし、このような変化に対して、日本の経済成長を支えてきた社会システムは、雇用制度にしろ、経済にしろ、その基本は明治維新と昭和20年の2つの改革の時に作られたものです。明治の初め頃の平均寿命は40歳にも満たず、また昭和20年の敗戦の時でも50歳という平均寿命でした。それを前提に雇用、社会保障などのシステムが形成されてきたわけです。
  しかし、明治維新の近代化からすでに140年、戦後改革からは60年以上が経過し、現在、女性の平均寿命は86歳、男性は79歳で、人生80年時代が到来しています。それにもかかわらず人生50年を前提にした雇用システムや社会保障制度を持っていても、人生80年時代には機能しない面も多々出ています。
  年金制度を例にしても、まさに人生50年時代を前提にした制度だと言えます。少子化が進み、支える人が減少し、高齢化により需給を受ける人が増えています。また、支給年数も長くなっています。例えば、65歳で年金が支給されたとしても、それから15年間年金を受けるということになります。今まで設定していた前提とは違ってくるし、それを支える人口が減っていることを考えれば、もうこのシステムは成り立たないということが明らかです。

○人生50年から人生80年時代へ
  本来ならば、長寿は人類の夢であり、子どもは人類の宝です。老後を安心して暮らす、子どもを安心して産み育てられる社会を何としても築かなければなりません。そのためには、20世紀型から21世紀型へのシステムやルールの変更をしていかなければならないと思います。100年に1度の不況と言われていますが、まさに100年に1度の大転換期と考えることができると思います。20世紀型のシステムは、大量生産、大量消費を前提に作られましたが、それを作り変える必要があるわけです。
  私たち連合は、「労働を中心とした福祉型社会の実現」を目指しています。連合は、働くことに重要な価値をおき、全ての人に働く機会、公正な労働条件、職業能力開発の機会を保障し、仕事と家庭生活の両立ができ、きちんとした社会保障が受けられるセーフティネットが張り巡らされた社会を「労働を中心とした福祉型社会」と考えています。

2.連合埼玉「男女平等参画アクションプラン」

 こうした状況の中、連合埼玉は課題解決に向け、どのような取り組みを続けているのか、男女平等参画によるアクションプランを中心に話をしたいと思います。
  連合埼玉が結成されたのは1989年12月で、今年で結成20周年を迎えます。1993年には「女性行動計画」を策定しました。これは47の地方連合会の中では初めてで、2007年には「第3次男女平等参画推進計画」を策定し、今日に至っています。

○推進計画における数値目標と行動目標
  この推進計画は数値目標と行動目標を持っています。数値目標では、連合埼玉の組織において女性の三役を育成すること、そして、女性役員を複数配置することを含めています。また、女性の組合員の比率に基づく女性代議員を設置するようにしています。いわゆる組合の決定機関に、女性の参画を促していこうということで、そのためには、女性比率に見合った議決権をもつ女性役員を育成していこうということです。 
  ただし、専従役員の難しさの面があります。仕事をしていれば、仕事を休職してもらって組合の仕事に専従してもらうということになります。私は東京電力の社員ですが、労働組合の役員をするために、現在、会社は休職しています。すでに15年間、会社を離れ、労働組合の専従役員を務めています。社会改革の担い手として、共感を広げ、絆を深めていくためにも環境整備、特に女性の役員を増やしていくことが必要であると思います。それから、連合埼玉の女性役員が参加している国や県の審議会があります。今、連合埼玉が派遣している審議会委員の内、女性の比率は20%ですが、今後、女性の比率を30%に増やすための取り組みを進めています。
  行動目標では、男女平等参画の推進を進めていくということで、連合埼玉の方針のなかに、男女平等参画の実現を掲げて行動しています。そして、連合埼玉に加盟する全ての組織にも「男女平等参画」ということを運動方針に明記してもらうよう要請しています。明記するだけでなく、男女平等参画の実態の把握もしてもらっています。連合埼玉は2年に1度、各組織に協力をいただきながら実態調査を進めています。ちょうど今、その実態調査をやっているところで、調査結果に基づいて、2010年度以降の運動の進め方を検討していきます。

○女性のリーダー育成に向けての取り組み
  リーダーの育成と実施ということでは、連合埼玉では、女性のためのセミナーを実施しています。単に組合活動のためだけでなく、日常の仕事の中に役立つようなセミナーの取り組みを進めているところです。例えば、応接マナー、話し方、聞き方などです。労働組合の役員は話し方には、さほど問題はないのですが、あまり人の話を聞かないという面もなきにしもあらずなので、相談を受ける時などに、相談をしやすい聞き方を身につけてもらうようにしています。今までの自分たちの反省を含めて、女性のセミナーでは、話し方だけでなく聞き方も取り入れているということです。
  活動スタイルの見直しも進めなければなりません。現在の労働組合は、男性中心の組織であり、女性が役員として活動するには非常に難しいところです。夜遅くまで、あるいは休日も会議ということで、特に、家庭を持つ女性は難しいのではないかと思います。家庭においても、男女平等参画を進めていこうということですが、労働組合でもまだまだうまくいっていないことも事実で、これからますます取り組みを進めていかなければならない点だと思っています。

○ワーク・ライフ・バランスの重要性
  連合は毎年6月を男女平等月間と位置付けています。連合埼玉でも男女平等社会の実現とその推進に向け、組織を挙げての取り組みを行っています。今年はセミナーと合わせて、民主党埼玉県連の男女共同参画委員会と合同で、街頭宣伝活動などを行いました。
  連合埼玉では、男女平等参画を進めていく上で、ワーク・ライフ・バランスの実現をめざすべきだと考えています。それを踏まえてセミナーでは、埼玉県のワーク・ライフ・バランス水先案内人の講演と埼玉県あったか子育て企業賞の奨励賞を受賞した企業からの取り組み報告を行いました。

3.県民の雇用と暮らしの安心・安全

 次に、県民の雇用と暮らしの安心・安全に向けた政策制度要求と提言について説明させていただきます。連合埼玉では、毎年9月に、県に要求と提言を要請しています。その内容は男女平等、総合経済・産業、雇用・労働、福祉・社会保障、交通、環境・資源・エネルギー、食品・農林水産、教育、人権の9つの分野の政策です。さらに、市町村にも同様の内容に加え、市町村独自の課題についても政策要請を行っています。
  男女平等政策の中では、ワーク・ライフ・バランス、ドメスティック・バイオレンスの防止、就業支援、児童虐待、子育て支援、男女平等参画、セクシュアル・ハラスメントなど合わせて10年間で43項目について県ならびに市町村に要請をしてきました。2008年度の市町村要請において、次世代育成支援対策推進法に基づく地域行動計画の推進にあたり「その協議会の委員には、労使代表も加えること」ということを要請しました。
  それまでの協議会に、労働者代表の委員が参加していたのは、5つの市と2つの町だけでした。埼玉県は70の市町村がありますから、県全体の10%という状態でした。しかし、このような要請を行ったことにより、現在は労働者代表の参加状況は、17の市と8つの町で25の市町村に増え、県全体の35.7%に達しました。現在検討中のところを加えますと全体の52.3%になります。実際に実現したのは、35.7%ですし、予定検討中を加えても52.3%ですから、まだまだ結果が出たとは言いえないかもしれませんが、それでも要請をしたことによる成果は出ていると思います。
  また、埼玉県には次世代育成支援対策後期行動計画策定協議会があります。この協議会への委員派遣は現在2名ですが、今までは1名でした。今回は委員の選出にあたって、県に対し複数名の委員選出を要請し、話し合いを行った結果、2名の委員を派遣することになりました。そのうち1名は女性で、うち1名は私が担当しています。
  10月には、連合埼玉が推薦をしている市町村の議員、首長の皆さんと、政策懇談会を開催します。そのなかで説明をした市町村に対する要請内容を、議員や首長の皆さんに理解と取り組みをお願いしています。さらに、連合埼玉の推薦議員には議会での質問をお願いし、政策実現へのバックアップをお願いしています。

4.行政の政策決定・運営への参加

 次に、行政の政策決定・運営への参画について話をします。行政の政策決定に関わることは審議会や各種委員会への委員派遣が必要だと思います。今日はこのうち、2000年に施行された埼玉県男女共同参画推進条例について触れたいと思います。

○審議会・各種委員会への委員派遣
  1999年6月に施行された男女共同参画社会基本法という法律があります。この基本法は1999年6月23日付で、各都道府県あてに男女共同参画社会基本法の施行についての文書が出されています。基本法の第14条に都道府県男女共同参画計画等という項目があります。これは、都道府県は男女共同参画計画を定めなければならないという規定で、言い換えれば埼玉県は男女共同参画計画を定めなさいということです。
  1999年3月、この基本法が施行される以前に、当時の埼玉県知事が、埼玉県女性問題協議会に対し、「埼玉県男女共同参画推進条例(仮称)」の制定にあたって諮問を行っています。埼玉県女性問題協議会の委員として、連合埼玉女性委員会の委員長が入っていました。推進条例の諮問に対して、連合の立場でかかわっていたということでして、1999年11月に答申が出されています。
  先日、この女性委員長にお会いした時、当時の状況を聞いてみたところ、委員の皆さんが同じ方向を向いていたということでした。女性の皆さんからすれば、やっと国で基本法ができる、そして、それを受けて埼玉県に条例ができるということが喜びであったわけです。委員の間で、大きく意見が食い違うということはなかったということでした。
  そして、条例の検討にあたっては、1998年7月に設置された埼玉県男女共同参画推進条例(仮称)検討委員会がとりまとめを行いました。そして、委員会での論点整理を踏まえ、当時の事務局でありました県の環境生活部女性生活課において実施した意識調査、それから県民の皆さんとの意見交換会で出された意見・提言などを最大限尊重し、条例が作成されました。そして、女性の皆さんの悲願でもありました「埼玉県男女共同参画推進条例」が2000年4月に施行されたのです。
  この推進条例は、全国に先駆けて埼玉県が制定しました。埼玉県は男女共同参画において先駆者であったわけです。私が、この条例を読んで特に素晴らしいと思うのは、3つあります。1つ目は、第5条の事業者の責務です。基本法には、国の責務、地方公共団体の責務、国民の責務が記されていて、推進条例でも、県の責務、県民の責務というのがあり、この事業者の責務というものが記されています。
  2つ目は、第11条で総合的な拠点施設の設置と記されている点です。この拠点施設とは、2002年にさいたま新都心に設置された「埼玉県男女共同参画推進センター〈With You さいたま〉」です。これは、さいたま新都心にあるホテルブリランテの3階と4階にありますが、昨年5月に新しく、女性の再就職を総合的に支援するための「埼玉県女性キャリアセンター」がオープンしました。連合埼玉は、2006年の埼玉県への要求と提言のなかで、子育て中の女性の再就職支援の要請をしています。そうした要請もあり、県はキャリアセンターを設置しました。連合埼玉ではこのように女性の再就職に対する要請も行っています。
  3つ目は、第13条の苦情処理機関の設置です。国の基本法の中では、これを定めなさいとありますが、それは強制ではありません。しかし、埼玉県ではこれをきちんと条例のなかに列挙しています。
  これらの3つの点は推進条例がしっかり実施されるためにも、有効なものだと考えています。
  国の基本法第14条3号には、「・・・、当該市町村の区域における男女共同参画基本計画の形成の促進に関する施策を定めるように努めなければならない」とあります。これは、努力義務ではありますけれども、この条例を制定している市町は28で、そして、計画を策定している市町は63あります。皆さんもご自分が住んでいる市町村の推進条例の策定状況について確認ください。

○女性が参画する主な審議会・委員会
  次に、女性が参画する主な審議会・委員会についてです。先ほどいくつかの例を話しましたが、埼玉県、埼玉労働局などに、連合埼玉が係わっている審議会、委員会があります。そうした審議会、委員会に連合埼玉の女性代表が参画し、意見を述べています。
  埼玉労働局には「地方最低賃金審議会」があり、この審議会では最低賃金の審議が行われています。埼玉県では、現在時間額722円未満で働かせてはいけないことになっています。皆さんの中でアルバイトをしていて、時間額722円未満で働いている人はいないと思いますが、こういった最低の賃金基準を設けています。これは県独自で決める金額で、それぞれの県で違っています。こういったことを決める中にも、女性が参画しています。

5.政治への取り組み

 次に政治への取り組みです。今までの賃上げを中心にしてきた労働運動には、限界がきていると言わざるを得ません。また、福利厚生、例えば、社宅などの施設を含めてこういったものにも限界があると言えますし、扶養手当など手当の部分も制度疲労を起こしていると思います。日本が、今まで企業に依存をしてきてしまったということが影響しているのですが、これらをどう変えていくかが一つの課題だと思います。
  あるいは、労使関係だけでは解決できないようなことも増えてきたということもあります。組合員には、いろいろな顔があります。企業では企業人としての顔があるわけですし、家に帰れば家庭人としての顔があります。また、地域においては、地域人としての顔があるわけでして、こういう3つの顔のなかで、私たちはこの政治に関わっていかなければならないと思い、この取り組みを行っています。

○国会議員ならびに県議会・市町村議会への要請
  2005年6月に、男女雇用機会均等法の改正を求める時、国会議員ならびに県議会・市町村議会への要請を行いました。経営者団体にも同じような要請を行いました。
  この要請にあたっては、衆議院・参議院の議員会館に出向いて、埼玉県選出の民主・自民・公明それぞれの国会議員一人ひとりと懇談し要請を行いました。私どもは、選挙で民主党を応援していますから、自民党にしてみれば、連合の政策要請など聞きたくないという露骨な態度もありましたが、私たちは全ての雇用労働者の代表として要請をしているわけですから、もう少し目を向けて欲しかったというのが正直な感想です。
  それから、県議会・市議会への請願、これは国への意見書の提出を求めるための請願ですが、2002年、2004年、2005年、2008年にいくつかの請願を出しています。しかし、2005年の社会保障制度の抜本改革を求める意見書以外は、すべて不採択となりました。また、社会保障制度の抜本改革も〈趣旨採択〉ということでした。これはどういうことかというと、「趣旨は理解するけれども、あとは何もしないよ」ということかと私は理解しています。
  また、2008年10月に「仕事と生活の調和が実現した社会の構築について」の議会決議がされました。ここで言う「決議」とはどんなものかと言いますと、「県の公共の利益に対して、事実上の県議会の意思を決定した」ということです。ようするに、県議会がワーク・ライフ・バンスの必要性について認めたということと理解をしていいかと思います。
  連合埼玉が県議会に提出した請願書「仕事と生活の調和が実現した社会の構築について」の請願趣旨および理由は次の通りです。2007年12月18日、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」および「仕事と生活の調和のための行動指針」が政労使の合意の上、策定され、その時にどのような社会を目指すべきとしていたかを書きました。
  それは三つほどあって、一つは、就労による経済的自立が可能な社会、二つは、健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会、三つは、多様な働き方・生き方が選択できる社会ということです。これらのことは、私たち連合が求めている社会であり、連合がめざす「労働を中心とした福祉型社会」とイコールであると私は認識しています。

○各党との調整に向けて
  先ほども申し上げましたが、今の埼玉県議会は過半数を自民党が占めています。また、民主党の最大の応援団体である連合が、自民党に何かを言ってもなかなか聞いてもらえないというのが現状です。ワーク・ライフ・バランスの決議は採択されましたが、これにもいろいろありました。請願を出すためには紹介議員が必要であり、私たちは、きちんと支持を得るために、民主党、公明党にお願いをし、共産党を除く他の党にもお願いをしました。自民党には民主党議員より事前に話して頂きましたが、自民党議員は「民主党の応援ばかりする連合の要請を何故聞かなければいけないのか」ということを言ったそうです。
  しかし、このワーク・ライフ・バランスは政府が進めていることであり、連立政権の相手である公明党のホームページにもしっかり書いてあることでもあります。結局、このワーク・ライフ・バランスの趣旨は理解するけれども、連合が出した請願ということでは納得できないので、連合が請願を取り下げるのであれば、自民党はこの趣旨を通すということでした。そこで、民主党と相談して、ワーク・ライフ・バランスについて議会で決議がされるのであれば、連合としての請願は取り下げることにしました。そして、昨年の10月10日、起案者である連合埼玉の名前が消され、決議された訳です。
  その後、各市町村議会にもお願いをしました。各市町村においても民主党議員は少数ですから、なかなか請願内容の質疑にも至らないというのがほとんどでありますが、11の市議会と4つの町議会で、決議、意見書提出をしていただけました。取り組みの話し合いが継続しているところもありますが、そういった取り組みができないところもまだまだあります。
  そのうえ、男女平等参画やワーク・ライフ・バランスに逆行するような意見を言う議員も多くいます。少子化が進むのは、女性の社会進出、女性が働くからだという、未だに訳のわからないことを言う議員もいるということを覚えておいて欲しいと思います。

6.社会的合意形成に向けた取り組み

○連合埼玉の取り組みの内容
  次に、社会的合意形成に向けた取り組みということですが、連合埼玉では、街頭宣伝活動をしています。街宣車に乗って、マイクを持って、皆さんに訴えようということです。このような活動に変化が現れました。ここ1年、街頭演説を聞いてくれる人が増え、そして、声をかけてくれる人も増えました。さらに応援してくれる人も増えてきました。特に、私たちは民主党と一緒に街頭演説をする機会が多く、民主党に対する応援も増えましたが、まだ民主党が信用できず、民主党では頼りないという意見も多数あります。それを補完できるよう連合にもっとしっかりして欲しいという意見を戴くようになりました。
  また、マスコミとの連携もあります。私どもの活動を記事にしてもらうということもありますし、色々な情報交換をすることも大切です。特に、これから選挙が行われる時期になると、記者との意見、情報交換を大事にしなければいけません。ある意味、持ちつ持たれつの関係で、日常の連携が重要だと感じています。
  そして、ウイングの拡大です。同質なものの協働は、「和(足し算)」にしかならないが、異質なものの協働は、「積(かけ算)」になると尊敬する労働運動の大先輩から言葉をいただきました。労働組合はこれまで、一辺の団体のみを好む傾向にあったように思います。しかし、今まで連合とは関係のなかった団体が、私どもの活動を支えてくれたりもしています。NPOや市民団体の皆さんの協力を得て、連合埼玉は運動を進めています。色々な団体との連携が非常に重要になってきていると思います。
  さらに、中小・未組織・非正規労働者との連携も必要です。労働組合の推定組織率は18.1%で、全労働者の2割にも満たないのです。しかし、連合は675万人の組織で、1組織としてみればこの人数は、日本最大級の組織です。この組織の力が、全雇用労働者に果たしている役割は大きいと確信しています。連合埼玉の組織人数も19万人ですから、同じように大きな役割だと思います。中小・未組織・非正規労働者の皆さんと対話をし、お互いに理解を深め、連携を進めていくことが大事だと昨今感じているところです。

○連合埼玉の具体的な取り組み
  そういった中で、連合埼玉は今年の2~3月に、仕事と住居を失った派遣労働者の皆さんに、緊急の宿泊所を提供する取り組みを行いました。総宿泊数は32名うち女性が4名で、延べ人数でいうと754名がこの施設を利用しました。
  また、宿泊者の中に妊娠6ヶ月になる方がいました。とても妊婦が生活する環境ではなかったことから、国会議員に国の施策について調べてもらい、参議院内閣委員会で質問をお願いしました。
  住まいのない女性を保護する制度として婦人保護施設への入所があります。この制度の根拠法が売春防止法であり、住まいのない女性の出産とその後の保護する制度は児童福祉法や生活保護法が根拠法となっています。議員からは、個別ケースにとどまることなく国としての対応と、そもそも根拠法が売春防止法であることが大きな問題であることを質問してもらいました。男女共同参画担当の内閣府特命担当大臣からは、現在の経済状況下においては、まれなことではないと思うため検討を深める。また、根拠法については、今の実情に合った形で新しくしなければならないと答弁がされました。
  なお、この女性は、無事男の子を出産し、今は生活保護を受けて、借家住まいをしていると聞いています。
  他にも、高齢者・退職者との連携、女性、若者の運動への参加ということもこれからは進めていかなければならないと思います。

7.連合の役割

 最後に、連合の役割について少し触れたいと思います。私の考える連合中央の役割としては、国の基本政策である憲法、外交、防衛、エネルギー、食糧、教育、そして、国益に関する課題の解決をしていくことだと思っています。
  一方、地方連合会の役割は、中央の方針に基づいた政策や運動を、地方の特徴と独自性によって盛り上げていくことが大切だと思っています。昔、農民運動や市民運動、そして学生運動、労働運動が人を動かし、世の中を動かした時代がありました。再び、連合が、労働組合が、社会運動として、社会改革の担い手として共感を広げ、国民の皆さんの怒りの声を結集し、それを力として、運動をしていく必要があると思っています。
  そのためにも理念と政策の共感が必要であり、それを多くの人たちと共有するためには、やはり新しいネットワークを構築し、働きやすいワークルールの整備をしていくことが大切だと思います。皆さんも是非、連合埼玉の街頭演説を見かけましたら、声をかけ応援していただければと思います。以上で私の講義を終わりにしたいと思います。ご清聴どうもありがとうございました。

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