一橋大学「連合寄付講座」

2017年度“現代労働組合論”講義録

第8回(6/5)

「地域における労働運動―地域が抱える課題への対応と地域社会の一員としての活動」

杉浦賢次(連合東京事務局長)、久保知子(連合東京地域局次長)

杉浦賢次連合東京事務局長

 皆さんこんにちは。連合東京の杉浦でございます。本日は、まず私から連合東京の活動全般にかかわるお話をさせていただいて、後ほど、立川に事務所がある三多摩ブロック地協の久保次長からお話をさせていただく、2部構成にさせていただきたいと思います。
 連合では教育文化協会が全国の大学で寄付講座を展開していますが、連合東京独自でも首都大学東京で寄付講座を開講しています。
 今日は、職場だけではなく、生活者全般の抱える社会問題への対応や地域社会の一員としての労働組合の活動や、組合員以外にも共助と連帯の輪を広げる社会的運動について理解を深めてもらうという目的でお話しをしたいと思います。

プロフィール(自己紹介) 私と労働組合とのかかわり
 まず、はじめに、私自身がなぜ今連合東京の事務局長をやっているのかということを、プロフィールも含めてお話しします。そこから労働組合がどんなものか垣間見えるのではないでしょうか。
 私は、東京都墨田区に生まれて、今もそこに住んでいます。高校卒業後に電電公社、今のNTTに入社しました。入社して配属になったところが、墨田区の隣の葛飾区の電話局で、自転車で15分くらいのところでした。当時の電電公社は、今のように残業が多いということはなく、終業時間になればすぐ帰れるということで18時前には毎日家にいた、という生活をしていました。18歳の若い男が18時に家にいるということが健全かどうか、ということもあって、先輩に、スキーツアーの企画を、要は遊びなんですけども、一緒にやってくれないかと誘われて、引き受けることにしました。実はそれが労働組合の活動だったんですけれども、そこが私の労働組合との関わりのスタートでした。
 それから、1987年、24歳のときに、組合の方から、「お前ちょっと目立つんで専門的に労働組合をやってみないか」と、お話をいただきました。もちろん仕事をするために会社に入ったのですが、こういうことも面白いかなと思い、そちらの方に道を進めまして、1987年から今日まで会社の仕事はほとんどせずに、労働組合で専門的に仕事をしています。その後、1994年、32歳の頃、NTTの労働組合の東京全体を統轄しているところで、このときで全体として6万人くらいの組合員がいましたが、そこで青年委員会の代表を担当しました。このときに、連合東京の青年委員会の事務局長をやらせていただいて、例えば、新潟県の高柳という雪深い地域に若い人たちで行って、ボランティアで雪かきをやる「雪国ボランティア」などの活動をしていました。
 私が連合東京の役員の時に、やはり今でも労働組合の中では一つの課題になっているんですけれども、若い人たちが労働組合に関心がないので何かしましょうということになりました。労働組合に入ったけれども参加していない、労働組合に組合費だけ納めているという人がいて、その人達に言わせると労働組合って空気みたいなものですってよく言われました。そこで、1996年4月13日に、六本木のベルファーレという1500人ぐらい入るディスコでイベントを開催しました。若い人たちの関心を引くために、サザンオールスターズを呼んでコンサートをやろうとか、東京ディズニーランドを一日貸し切ったらみんな楽しんでもらえるんじゃないかとか色々と考えましたが、最終的にはベルファーレになり、1300人が集まりました。
 この時、「青年委員会」という名前があまりナウい名前じゃないので、スキューバダイビングで一緒に潜る人を「バディー」というらしいんですけど、それを使って「バディーズ・トウキョウ」という名前にして、色々なイベントを行うことにしました。ベルファーレのイベントでは、みなさんも知っているかもしれませんが、MAXっていう、もともとは安室奈美恵さんと「イエローモンキーズ」というグループを組んでいた方々にゲストで来てもらいました。まだ、ほとんどデビューしたばかりの時にゲストで呼んで、このとき安室奈美恵さんもゲストで見に来ていました。
 もちろん労働組合ですから、その時々の私たちの労働条件の改善といった活動はやっていかなきゃならないですが、もう一方、全体を通して何かやるということ、そしてもう一つは夢を追い求めてやっていくことも必要なのかなと思います。私も連合東京に来て10年目、事務局長になって4年目になりますが、これからもう少しそういうことも含めてやっていきたいなと思っているところです。

連合運動とは 労働組合活動と連合活動の違い
 次に、連合運動とは何なのかということをお話したいと思います。私は元々NTT労働組合の出身でありますので、NTT労働組合のときには、NTTで働いている組合員の皆さんの労働条件をどういうふうにしていくのかが活動の中心でした。学生の皆さんからすれば、NTT労働組合も連合東京もどっちも労働組合だから同じじゃないのっていうことで、なかなか違いがわからないかと思います。単純に言えば、NTT労働組合などの企業別労働組合は、組合員の賃金や労働条件の向上が中心になのですが、連合は、組合員に限らず働く人、暮らす皆さんの全体の生活の向上、権利の確保、例えば、非正規でなく正規で働きたいと希望する方が正規になれるような、そういうことについて国や行政に要請などをする取り組みをしています。
 もちろん、共通する活動もあって、ボランティア活動はそれぞれの組織でも連合でも行っています。例えば、東日本大震災の時や、熊本を中心とする地震から1年になりますけれども、先日私も熊本に行ってきました。

連合東京の紹介
 次に、連合東京の紹介をします。私ども連合東京は、連合が全国47都道府県に設置している地方連合会の1つです。東京23区とその他の市町村が担当で、伊豆7島も私どもの担当です。2016年末で組合員数は約114万人です。全国に連合の組合員は686万人いますが、そのうちの約17%、全体の5分の1が連合東京に所属する組合員となります。
 次に、労働組合が抱える課題です。もちろん課題は沢山ありますが、その内のいくつかをお話します。やはり一番は労働組合に入っていない方が沢山いるということです。東京で働いている方が910万人いると言われています。このうち連合東京以外にもいくつか組合があり、そこに所属している人も合わせて約220万人が労働組合に入っている。東京は全国で見た場合よりも組合加入率が高く、24%、4人に1人が労働組合に入っています。これは、労働組合のある大企業が多いので、必然的に労働組合に入る人の割合も高くなるということです。全国では雇用労働者約5700万人のうち1000万人程度しか労働組合に入っていませんので、約17%です。ですから、私たちがいろんな話をしても、労働組合といっても自分は入ってないという人のほうが多い、という状況です。この後、別の講義で話を聞くと思いますが、安倍首相が議長を務める「働き方改革実現会議」のなかで、同一労働同一賃金や長時間労働の是正などについて「働き方改革実行計画」が出されました。これに関しては、国がこれから法律を作って様々なルールを決めますが、具体的運用までは決めてくれません。毎日の働き方、残業をどのように少なくしていくかということは、会社の幹部がやっている。そして、やはり労使で話し合って決めていくことが基本です。しかし、日本では6人に1人しか労働組合に入っていないわけですから、こういったことを労使でしっかりと決めることができるように、すべての職場に労働組合をつくりましょう、という運動を私たちはやっている。そのお手伝いを連合がやっているということです。
 組織化については、2回目の講義「労働組合とは何か」で私ども連合東京に所属している今野さんから、ブラック企業の実情なども踏まえて話があったと思います。私たちも街頭宣伝で街を行き交う人に話をしていますけれども、日々働いているなかでは、明日から働けなくなったらどうしようだとか、お金がもらえなくなったらどうしようだとか、明日から来なくていいよと言われたときにどうしようとか、そういう危機感があまりないんじゃないかと感じています。もちろんこれは私たち労働組合、連合の責任でもあると思っていますけれども、そういうことが課題だと思っています。
 次に、連合東京の主な活動についてお話をします。まず、春季生活闘争。既に大手と言われる企業では交渉が終わっていますが、まだまだ中小零細企業では、今年の賃金をどうするかが決まっていないところもあります。労働条件改善のための「春の闘い」、これを春闘といいますが、毎年目指す方針を決めて、共闘体制をつくり連携しながら、全体の水準を上げていく。中小未組織・連合未加盟組織への支援を含め、格差是正と底上げに取り組んでいます。特に、中小労組への支援、情報交換を実施しながら、連合未加盟の組織にも情報提供、賃金交渉の進め方の方法を提供しています。連合に入っていない組織の皆さんにもお声掛けをして、中小労組の学習会も開催しています。ここ4年間賃上げを実現していますが、賃上げをした時にどういう配分交渉をするかということなどを教えたり、労働組合、連合に入っていない方にも、情報提供をして、そのうち連合東京に入ってもらえないか、こういう気持ちも込めながら取り組みをしています。連合の方針以外にも、中小の企業が東京都内のなかでどのくらいの賃上げをしているかとか、どういう要求をして改善しているのかとか、経営者の皆さんをこういうふうに説得すれば交渉はうまくいきますよ、ということなどについてもお話をしています。

 続いて、政策・制度要求についてです。これは、2016年12月16日に小池都知事に直接呼びかけられて、ヒアリングを受けた際の写真です。

 私どもとしましては、働き方改革、非正規雇用支援と処遇改善、東京オリンピック・パラリンピックの成功に向けた取り組み、諸々の施策の実効性を高める公労使会議の設置などを要望しました。最終的には2017年5月25日、この公労使会議を実際に開催していただいて、連合東京の岡田会長もその場に出て、意見交換をさせていただきました。つまり、具体的に私どもが要望したものが形となって実現した、ということです。
 次の写真は、「タウンミーティング墨田」の写真です。かつては、そこの地域に働いている人だけを対象に取り組みをしていましたが、今回はそこに住んでいる投票権のある人達も対象にミーティングを開催しました。そこで、例えば、この道路がいいとか悪いとか、公園がきれいとかきれいじゃないとかなどの意見を頂いて、それを行政に反映する取り組みをしています。昨年10月8日にやった墨田区のミーティングでは区長も来ていただいて、意見交換をしました。

 その他、労使紛争解決と仲間づくりという活動もしています。特に労働相談ですね。労働相談用にフリーダイヤル(0120-154-052)を設けていますが、毎月100件ぐらいずつ新しい相談が寄せられます。その中から、直接連合東京が会社と交渉して対応するものもあれば、さらにはその相談してきた方に「みなさんのところで労働組合を作って、それをみなさんが自主運営をして解決したらどうですか」とお話をする場合もあります。また最近は、ブラックバイトやブラック企業が問題となっており、本人ではなく親御さんから「うちの子どもがこういう状態なんですがどうしたらいいだろう」という相談も多い。みなさんもこれからバイトや就職の関係で悩んだら、是非こちらに電話していただいたらと思います。
 その他、平和、環境、人権問題にも取り組んでいます。例えば、平和運動でいうと、戦後70年を越え、平和を語れる、その時の戦争体験を語れる方々が少なくなってきており、それを次代の人につなげていきたい、という思いで、3月の春休みの時期に「親子沖縄平和体験会」も開催をしています。
 ボランティアについて、少し具体的に紹介をさせていただきます。東日本大震災から6年、熊本を中心とする地震から1年というなかで、災害を風化させないための取り組みとして、被災地支援のボランティアを積極的に取り組んでいます。まず、組織力を活かして、カンパ活動や、被災地でのボランティア活動を行ってきました。東日本大震災の被災地ボランティアでは、実は連合は自衛隊の次に多くの人を出したという話を聞いています。延べ3万人の連合の仲間がそれぞれ現地に入って、支援をしてきています。また、災害ボランティアの人材育成を目的に、年間6回の講座を開いて、障がい者団体のみなさんとの連携や、帰宅困難者訓練対応、災害時の支援などを勉強しています。講座を受講したみなさんにはメンバー登録をしてもらって、何かあったときには支援活動をしていただくという人材育成をしています。この人材育成では、これまで700人程度の方々に研修に参加していただいて、今地域を含めて取り組みを進めています。
 新しいところでは、2月26日の東京マラソンに、93名のボランティアを派遣しました。一つ特徴的なのは、私たちもびっくりしたんですが、東京マラソンを運営する東京マラソン財団から、外国の方も来るので、外国語を喋れる方を何人か入れてくださいと要請され、結果として93名のうち半数の外国語ができる方が集まりました。中には3ヶ国語ができる方も連合東京の組合員の中にいらっしゃいました。
 このような活動を続けるなかで、2017年度のボランティア・サポートチームの研修は、4月15日から49名でスタートしています。また熊本地震のカンパでは、1日で約20万円の義援金が集まりました。
 あと、やはり東京は都会で便利ではありますし、現在も東京に人口流入が進んでおり、首都機能としてもちろん必要です。しかし、日本全体を考えれば、やはり地方も必要だと思います。先ほど、雪国ボランティアの話をしましたが、その取り組みをずっと継続しています。具体的には、新潟県の柏崎市と友好交流協定を締結して、お互いに交流・往来があります。今、柏崎市に田んぼを借りていて、5月20日には田植えをしに行きました。この活動ももう約20年続いています。

全国の地方連合会が取り組んでいる課題
 次に、全国の地方連合会、東京だけではなく、全国で共通する課題があるときに、それぞれ地域の特色を活かしながら統一的に取り組んでいるものについて、説明します。
 まず、最低賃金です。東京都の最低賃金は2016年10月の改定で時給932円、これは皆さんがアルバイトをする時に大変重要な情報です。「最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低額を決め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなければならないとする制度です」と東京都のポスターに書いてあります。これは法律です。これより低い賃金で契約した場合は、932円にしなければなりませんし、払っていない場合は、50万円以下の罰金が雇い主に科されます。これは労働者1人につき50万円以下です。この最低賃金は、それぞれの地域で決めています。東京は、2016年10月に927円から932円に変わりましたが、日本全体の統一的な最低賃金はなくて、都道府県ごとに金額が決まっています。公労使といって、公益委員・労働者側委員・使用者側委員が参加する最低賃金審議会の中で決めており、連合東京からも労働者側委員を出しています。最近は、安倍首相が賃金を上げていくと明言したこともあり、国全体の中で、少し高めの賃金アップが実現していますが、ただアップすれば経営者側には影響がありますから、その決定には、やはり話し合いが大変重要になってくるといえます。
 しかし、例えば、932円の時給になったとしても、1日8時間、週5日そして4週間働いても、月収約15万円にしかなりません。実際にこれで生活している方がいる可能性があるわけですね。連合では、生活にどれくらいお金が必要なのかを「リビングウェイジ」という指標で出しています。これはさいたま市をモデル地域にして算出したものですが、そこで生活している単身者の場合は、生活費として大体月12万6千円必要になります。そうすると、時給932円では、ゆとりある生活はなかなか厳しいと思います。だから、連合としてはもっと最低賃金を上げていきたい。連合東京も、時給1500円を目標に取り組みをしています。
 その他に、公契約条例というものがあります。これは、公共事業の入札で劣悪な労働条件が発生することを防ぐためのものです。例えば、土木関係に携わる人などが、発注側から少ない金額でないと発注しないと言われた場合、結果的には最低賃金の932円を下回るような金額交渉が行われる可能性がある。そこで、全国では18の自治体、東京都の中では、多摩市、国分寺市、渋谷区、足立区、千代田区、世田谷区の6自治体が、今、公契約条例を定めています。それらの市や区では、こういう職種についてはこの金額以下では工事を発注してはいけないと決めています。これはもちろん最低賃金よりずっと高い賃金です。この条例を定めるためには、特に首長の意向が大変大きく関わります。そのため、私どもは区長の皆さんと毎年1回懇談会をして意見交換をしています。いつもほぼ全ての区長に来ていただいています。その中で公契約条例を各区で是非作っていただきたいとお願いしています。三多摩地域でも市町村の首長を集めて同様の話をしています。このように、連合の運動を進めるためには、首長の皆さんへの対応も大変重要になってきます。
 東京としてなかなか十分な地域活動が出来ているわけではありませんけれども、一つ一つ地域に根ざした取り組みを進めている、ということを知っていただきたいと思います。
 ここで一旦、私の話は終わりにして、次に三多摩ブロック地協担当の久保さんにバトンタッチをしたいと思います。久保さんの話の後に、再度私から、お願いも含めてまとめの話をさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

久保知子連合東京地域局次長(三多摩担当)
「連合三多摩ブロック地域協議会の特徴的活動」

 先ほどご紹介いただきました、連合東京三多摩ブロック地域協議会の久保と申します。連合とか労働組合とか聞いても、みなさんには遠い存在なんじゃないか、っていう感じがするんですよね。私も若いときには労働組合ってすごく遠い存在でしたので、最初に、なぜ私が今、労働組合の職員なのか、労働組合と関わるきっかけからお話ししたいと思います。
 私は学校を卒業して電機関係の仕事をしていました。そこは、ユニオン・ショップ制という、会社に入るとすぐ組合員という会社でした。多分、最初に入社したときに組合役員の方に説明して頂いたと思うんですけれども、ユニオン・ショップ制自体をあまり理解していませんでしたので、組合員でいたときは組合員でいる必要性とか価値を非常に漠然と受け止めていたと思います。賃金も、もうぐんぐん上がる時代ではありませんでしたので、組合の存在や必要性を実感したのは、唯一制服が古いので文句を言いましたら、全社的に変わったということぐらいです。要するに、組合ってあって当たり前。自分にとってどれくらい価値があるのか、当時一緒にいたみなさんもあまり考えていなかったんじゃないか、若いうちはみんなそうだったんじゃないかな、と思います。
 その後、あまり組合のこともよくわからないまま会社を辞めまして、しばらくフリーで仕事をしていましたが、フリーは体一つで不安定な部分がありましたので、友人に紹介をしてもらってアルバイトから始めたのが、旧同盟系の全国文化運動協会というところです。研修やイベントのお手伝いをする団体でした。同盟というのは、連合が結成される前の旧4団体のうちの一つです。全国文化運動協会は、労働組合からお仕事を頂いている団体だったんですけれども、そこで色々仕事をする中で、連合とか労働組合のことについて改めて知ったということになります。その時は既に連合が出来ていましたので、全国文化運動協会は、今回この寄付講座をコーディネートしている連合の外郭団体の教育文化協会に収斂されるべきだという話がありまして、働いている人も収斂される予定だったんですけれども、私は連合本部の職員となり、今は地方連合会の連合東京で働いています。
 連合に関わるまでは、連合の組織率がこんなに低いということを実は知らなくて、社会には不当に働かされている人が沢山いるんだなということを改めて知った次第です。毎日のように地方連合会や地域協議会にも労働相談の電話が入ります。賃金未払いや解雇とか、普通だったら働いていてそんなことないだろうと思われることです。皆さんのご家族や親戚でも、労働組合のないところで働いている方が沢山いらっしゃると思うんですね。その会社がいい会社であればいいのですが、きちんとした労働条件で不当に働かされることがない、労働組合が当たり前に存在するという社会であってほしいなと、本当に今は切実に思って日々活動しています。
 そんな感じで、最初から労働組合に入ろうとか、こういう運動をやろうとか思っていたわけではないので、多分これからみなさんが社会に出られて、もしかしたら労働組合と関わることがあるかもしれないし、労働組合のことを知ることがあるかもしれないので、その時に今日私たちがお話した話を思い出してくれればありがたいと思います。それでは私たちが地域でやっている活動の一部を、ご紹介していきたいと思います。

連合東京三多摩ブロック地域協議会
 私は、連合東京の三多摩ブロック地域協議会に所属をしています。地図の青いエリアです。東京都の23区と、八丈島などの島嶼部を除くエリアが、この三多摩ブロックとなり、広大なエリアです。組合員数は約14万5千人で、このエリアで働く方で構成されています。例えば、電機連合の東芝や富士電機、JAMのJUKI、日本電子、情報労連は今事務局長がお話されましたがNTTとか。他にも電力総連の東京電力や、UAゼンセンの、例えば皆さんがよく行かれるモンテローザ、デパートの伊勢丹、といった会社で働く方々や、地方公務員である自治労の国立市役所で働く方も組合員です。

 では、私たちの主な活動について、私たちは「働くことを軸とする安心社会の実現」という大きなテーマを持っています。私たちは労働組合ですので、誰もがどんな働き方でも公正に、公平に働ける安心な社会を作っていこうというのが大きなスローガンです。私たちは地域で活動していますので、「地域に根ざした顔の見える運動」も推進しています。私たちが内向きの活動ではなくて、もっともっと外に向かって、地域の方と一緒になって活動していきたいという意図です。そのなかの中心軸が、「組織」と「政策実現」と「社会貢献」の3つです。他にも色々やっていますが、大きく軸はこの3つです。
 組織については、やはり組織率が非常に低いので、組織を大きくしていくためにも、例えば、立川駅や国立駅でチラシを配って、何か困っていることはありませんか?労働組合を作りませんか?組合結成のお手伝いをしますよ、という運動もしています。また、毎日のように労働相談も入りますので、その中でケースによっては組織化をして、組織を大きくしていくことも行っています。
 それから、政策実現について。政策というとちょっと難しいと感じるかもしれませんが、例えば国立市のなかで道が狭いとか、待機児童が多くて幼稚園や保育園に入れないとか、環境問題で困ってるとか、働いたり生活したりするなかで困ったりすることってありますよね。そういう困っていることや課題などを三多摩地域の30の全ての自治体の首長に、政策を作って、要求としてまとめて出していくという活動をしています。そして、自治体からは、その政策や課題に対して予算をこういうふうに組みました、こういうふうに改善しましたという回答も頂いています。それ以外に、政治と連携しないとなかなか進んでいかないこともありますので、地方議員の方とも連携しています。例えば、国立市であれば、国立市議会議員と連携して、市議会の中で課題を取り上げ、活動を展開していただき、私たちの要求を通していただくということもしています。これらは、私たちが三多摩地域でより暮らしやすい街を作っていこうということで、行っている活動です。
 社会貢献は、ボランティアなどを中心に色々なことをやっています。その中で、今日は「三多摩メーデー」と「こどもを守るネットワーク」を中心に紹介したいと思います。もうひとつ、「連合東京の森保全活動」は時間がなくて今日はちゃんと紹介できませんが、実は、多摩の奥の方は森がいっぱいあって、皆さんご存知のとおり、森に囲まれた地域なのですが、保全活動をしていかないと、なかなか森が育成できない、木を植えただけでは森は育たないということですので、森の保全活動を行っているということです。

三多摩メーデー
 では、三多摩メーデーについて紹介します。皆さん、メーデーってご存じですか。メーデーの起源はもし後ほど質問などあればお答えしますが、最初は労働者の闘争としてスタートしました。今では全国各地でメーデーが開催されていますが、私たちはこの地域で三多摩メーデーを開催しています。三多摩メーデーの大きなテーマは、「政策・制度要求の実践」です。30自治体と連携していますので、それぞれどういう政策を出しているのか、それをどういう施策に落とし込めるかということを考えながら、メーデーで色々なブースを出店しています。最近は、東日本大震災、熊本地震など、大規模災害で被災した方を支援しようという大きなテーマも掲げています。サブ・テーマとしては、「地域防災メーデー」、「クリーンメーデー」、「地域福祉メーデー」を掲げています。特に、地域福祉メーデーはノーマライゼーション社会、障がい者も健常者も共に生きるということを考えながら、それを追求する運動の実践ということも念頭に置いてやっているところです。
 三多摩メーデーの特徴は、政労使一体となった運動の展開です。まず「労」の部分は労働者、労働組合ですね。「政」の部分は30自治体と連携してやっていますし、「使」は使用者のことで、労働者だけではできないこともありますので、企業とも連携しながらやっていく。ただ、政労使で一緒にやっていくだけでは非常に内向きな活動になってしまいますので、地域一体となって、実際に立川市の会場となる地域の自治会とも一緒になって、メーデーを開催しています。1万9千から2万人くらいと、かなり大勢の参加者が集まり、運営しています。地域の福祉団体と連携して、ノーマライゼーション社会を実践するという点については、三多摩地域の福祉団体と連携して、彼らが作った物販を行ったり、メインステージで障がいを持っている方にノーマライゼーション社会を実現するとはどういうことなのかアピールしていただいたり、ボランティアサポートセンターの三多摩のチームが、障がい者をサポートする運動も一緒にやっているところです。メーデーの会場は、立川市民運動場という立川の駅からちょっと離れた、多摩川の河川敷なのですが、駅から送迎用の福祉低床バスを運行して、障がい者、高齢者、子どもなども参加しやすい環境を作っています。立川バスが地元で、組合もありますので、立川バスにお願いをして、労使で協力して運行をしていただいています。
 それから、東日本大震災や熊本地震の被災地支援などもしています。現地からたくさんのNPOに来ていただき、例えば、宮城県石巻市の牛タンつくね串という、現地では特産みたいになっているB級グルメをメーデーで販売し、売上を被災地復興の活動に充てていただくということもやっています。それから、三多摩メーデーでは、2万人も集まるものですからゴミがたくさん出るんですね。ゴミは捨てたら本当にゴミなんですけれど、リサイクルすれば資源になります。環境活動にも力を入れていますので、メーデー会場では、ゴミ置き場ではなくリサイクル・ステーションを意識して設置をして、参加している方に、立川市のゴミ処理基準にもとづいて、分別の徹底とリサイクルもお願いしています。なので、ゴミの仕分けは大変ですが、みなさんに徹底していただいて、年々ゴミも減り続けている状況です。
 また、去年までは芸能人も呼んでいましたが、より地域に特化した催し物を展開していこうということで、今年は自治体イチオシの催しをやってくださいとお願いしましたところ、小金井市が手を上げてくれました。小金井市には阿波踊りの大きな「連」というグループがあり、今回40人位来ていただいて、阿波踊りを披露したり、参加者に指導していただいたりしました。最後に、小金井の西岡市長には、当該自治体のアピールもしていただきました。
 私たちの事務所は5名ほどの非常に少ないメンバーしかいませんが、メーデーでは組合員や組合役員500名ほどに協力をいただきながら運営をしています。それらを意識して、会場ではいろんな模擬店が出たり、組合員、参加者が座るブースを設けたりしています。
 また、「こども広場」も設け、そこでも政策・制度要求の具体的な実践ということを意識しています。こども広場のコンセプトは、政策・制度の全体のコンセプトでもある「多摩の未来に夢をもって」ということで、これからの子どもたちが多摩の未来に夢を持って暮らせるように、そしていま働いている人たちも、職住近接、働いている場所と住んでいる場所が近い方もいますので、暮らしに密着した運動を展開していくことを念頭に置いています。地域に根ざした企画ですとか家族連れで参加して組合員が楽しめる場を作りましょうと、遊びと学びが融合する空間を演出しましょうということで、こども広場をつくっています。
 例えば、ヤマト運輸も連合東京に加盟していて、メーデーの出店に関する搬出入はヤマト運輸にお願いしています。あと、自治体の政策展では、それぞれの自治体がイチオシのものを出していただいています。例えば、小金井市の売りが何かとか、今どんなことをやっているかとか、たぶん三多摩地域で生活している皆さんでもご存じないと思うんですね。小金井市は、例えば、江戸野菜とか、室町時代のお菓子を再現するといった歴史を遡るような取り組みに力を入れており、今回は室町時代のお菓子を出店して、それに関するデモンストレーションもやっていただいています。日の出町は、非常に糖度の高い「日の出トマト」というのを作っていて、それも出店していただきました。稲城市は、本当は梨が特産なんですけれども、ちょっと時期が外れてしまいましたので野菜を持ってきていただいた。ちなみに「ひのでちゃん」という太陽をモチーフにした日の出町のマスコットキャラクターにも来ていただいて、仕事をアピールしてもらったりもしています。それから日野自動車、これも労使一体で手伝っていただいたんですが、パリ・ダカール・ラリーに出場した、実際の大きいラリーカーを持ってきていただいて、写真撮影や試乗体験をしました。それから、自動車総連には、「親子deものづくり」という、親子でクラフトの車を作るブースを出店していただきました。日野消防署や立川警察署とも連携をして起震車、消防車、煙体験などもできるようになっており、子どももたくさんきますので、非常に喜んでもらっています。建設ユニオンには、「多摩産材」という奥多摩の認証木材をもっと知ってもらうため、それを使って「子ども棟上げ式」をしていただいています。「棟上げ式」ってもう東京ではあまりやらないかもしれませんが、家を作る時にお祝いの儀式として屋根の上から餅やお菓子を撒いたりするものです。子ども棟上げ式では、屋根の部分だけを作って、子どもたちに棟上げ式を体験してもらっています。子どもたちが木に触れることも大切にしようということで、環境アピールなどもしています。
 メーデーはこんな感じで展開をしています。各地域でメーデーが開催されていますので、参加したことがある方もいるかもしませんが、お時間がありましたら、是非、来年は、三多摩メーデーにも足を運んでいただけたらありがたいと思います。

こどもを守るネットワーク
 つぎに、「こどもを守るネットワーク」の説明をさせていただきます。東京都が2005年11月に行った世論調査が設立のきっかけです。その調査で治安対策を求める声が最多になりました。皆さんも今、子どもたちが被害に遭う非常に悲惨な事件を耳にすることがあると思います。子どもへの身体接触や声掛けなど、ちょっと耳を覆いたくなるようなものや、事件にまで至っていないものも含めて、そういった事案が月平均35~40件ほど発生しています。2005年の調査当時もこのような事案が多く、そこで東京都は同年12月に歌舞伎の目(隈取り)のステッカーを添付した庁車、民間車による防犯パトロールを実施していこうということになりました。おそらく、そのステッカーをみなさんも見たことがあると思います。歌舞伎の目は、犯罪抑止をするということで、犯人に対して「犯罪を見逃さない」と書いてあります。このステッカーを家や車に貼って防犯活動を展開したのですが、依然として子どもが被害に遭う事件は後を立たず、連合と三多摩ブロック地協でも何かできないかということになりました。そこで、連合東京に加盟している組合の中にも、タクシーとかバスとか車を使って仕事をしている組合員が沢山いましたので、行政活動の補完という目的で、2006年7月にこどもを守るネットワークを設立しよう、車を使って仕事をしている方々に日常活動の延長線上でやっていただこうということで始まったところです。その際、三鷹に、もうお亡くなりになりましたが、天才バカボンやおそ松くんの作者である、赤塚不二夫さんという方がいらっしゃいましたので、赤塚不二夫プロがつくっているバカボンのママとはじめちゃんを使ったステッカーを作り、見守り活動を展開することにしました。このステッカーを貼っている車は安全ですよ、ということを子どもたちに知らせて、運動をしていく、ということをやりました。バカボンのママとはじめちゃんを使ったのは、子どもたちを見守っていくという意味と、子どもたちに対して発信していくために温かい絵柄でやっていこうというコンセプトからでした。

 こどもを守るネットワークの基本的な考え方は、連合や労働組合の仕組みの中だけではなく、行政府や企業組織など業界の垣根も超えて、人が人を守る活動をしていこうというものです。具体的には、三多摩地域で働く方、例えば、バスに乗っている方、タクシーに乗っている方が、日常の仕事の延長線上で、子どもが助けを求めるサインを出したら、危険を察知したら、必ずそれをサポートするということを考えました。この活動は、労働組合だけでは進みませんので、企業とも一体となって取り組んでいこうと。三多摩地域は、国立市でしたら隣には立川市、国分寺市があって、どこかで切れているわけではありませんので、三多摩地域の広域ネットワークとして、点や線ではなくて面の運動を展開していこうという考えでスタートしたわけです。
 ネットワークの構造自体は、企業と労働組合が一体となったネットワークとなっています。運営体制をつくり、ネットワーク参加企業の社員、組合員が、危険に遭遇した子どもの一時的な保護を行うということをしています。子どもが「助けて」というサインを出すと、それを見つけた車両業務を行っている組合員、例えば、バスの運転手さんとか、東京ガスの方とか、福祉団体の方などが子どもを保護する。このように、実践するのは労働組合の組合員ですけれども、業務管理をするのが企業ですので、全体の仕組みは以下のようになっています。

 当初、行政を補完する役割を担うという目的でスタートしましたが、だんだんと行政も競合しない運動であるということを理解していただきまして、現在では、非常に多くの自治体に参画していただいています。
 こどもを守るネットワークの運営体制は、当初は三多摩ブロック地協の議長がトップをやり、三多摩地協の役職員が事務局を担うというスタイルでした。現在は、中央大学の秋山教授に会長を務めていただき、副会長は、東京都の市長で構成される東京都市長会の会長にお願いしています。経営者側からは、地元の商工会、八王子商工会議所の会頭にも入っていただいていますし、もちろん三多摩ブロック地協の議長にも入っていただいています。このように、様々な団体が、面で、三多摩地域で子どもを守っていこうという理念に賛同して参画をしていただいています。
 当初は、49企業6市町村で、ステッカー貼付車両台数は6353台でスタートしましたが、現在では、79企業22市町村になっています。私たちの広報活動もまだまだこれから広げていかなければいけないと思いますが、かなり多くの企業と市町村がこの運動に参画をしていただいている。また、この運動が広がるにつれて、連合以外の団体からも参画したいとの問い合わせが増えています。また、個人の方からも、子どもを守るという運動に共感したので自分の車にもステッカーを張らせてほしいという問い合わせをいただいていますが、個人の場合は、一人ひとりがどういう方なのかがわからないので、安全性が担保できなくなってしまいます。また、ステッカーには企業名・団体名とともに、1枚1枚にナンバーを振って管理し、責任を持った体制が作れるようにしています。
 本当は子どもが被害に遭うということがなくなればいいと思うんですが、なかなかその件数は減っていません。この間、1件だけ一時保護の事例がありました。2007年2月に日野市高幡地区におきまして、女子生徒が不審者に襲われて、車に乗せられそうになったんですけれども、サインに気づいた日野社会福祉協議会の方が女子生徒を保護し、警察とも連携して助けたという事例です。また、保護した後には、速やかに交通・運輸業界の関係組織に対する情報発信と注意喚起も行いました。こんなことが実は日々行われています。一橋大学のキャンパスにも地域のお子さんが遊びに来るそうなので、そういう場所で周囲の人が見守ることができる状況があればいいのですが、なかなか地域にはそういうところが少なくなってきたなと感じています。繰り返しになりますが、こういう運動が必要なくなる社会の実現を望みますが、まだまだ必要な運動なのではないかなと思う次第です。
 こどもを守るネットワークの今後の課題ですが、この組織自体にはお金が全然ありませんので、賛同組織の協賛金で運営をしていて、毎年お金を出していただいて事業継続をしているという状況です。赤塚不二夫プロのデザインの版権料がかかったり、ステッカーの増刷費がかかったり、毎年、一定の金額が必要になります。このように、毎年協賛金で運営しているなかでは、どれくらいこの運動を続けられるかなあと思うところがあります。一方、多分今日このステッカーを初めて見たという人も沢山おられると思いますので、より多くの人に知っていただくためにも、今後の事業の継続には工夫が必要だと思っています。

 最後に、三多摩ブロック地域協議会の運動の課題をご説明します。「組織」、「政策実現」、「社会貢献」という地域運動の3つの軸を中心に地域に貢献出来る活動は、私たち労働組合だけがよいという運動ではなくて、もっともっと地域の皆さんと一緒にいろんな運動ができる可能性を秘めていると思っていますが、圧倒的にマンパワー不足を感じているところです。展望としては、社会福祉協議会という地域に密着した活動を行う団体がありますので、そういったところと連携強化を進めて、できれば私たちが通年でやっていること、今年は例えば、子ども政策をやっていこう、高齢者福祉政策をやっていこう、そんなことを考えている時に、具体的な活動として企画・展開して地域に顔の見える運動を展開していきたいと思っています。それでは、再び杉浦事務局長にバトンタッチして、まとめをお願いしたいと思います。ありがとうございました。

杉浦賢次連合東京事務局長
 今後、連合のめざすこと 社会的に価値ある労働運動
 それでは再び私の方で、まとめとして、今後の連合東京の目指すところをご説明したいと思います。
 冒頭お話ししましたように、本日は、連合が行う組合員以外にも共助と連帯の輪を広げる社会的運動について理解をいただくことが目的ですが、財政的な問題や、地域によっては人手不足の問題もあり、まだまだ運動を広げてやるべきことも多くあります。この寄付講座で初めて連合という名前を聞かれた方もいると思いますけれども、少しでも連合のことを皆さんに知っていただけるような取り組みを今後もしていきたいと思います。そして、社会的に価値のある労働運動ということを私たちは昔から言ってきたんですけれども、やはり労働者、労働組合のための連合という組織ではありますけれども、社会的にどう取り組みをしていったらいいのかということも、日々考えているところであります。
 最初にも言いましたけれど、世の中に対して夢を実現できるよう取り組んでいきたいと思います。そういう意味では、114万人の連合東京の組合員だけではなく、東京で働いている920万人すべての方に、国や地域の政策や私たちの運動の成果の恩恵を享受していただきたいと思います。本来であれば、労働組合がないところに労働組合を作っていただいて、労使で話し合って色々な課題を解決していただくことが望ましいのですが、例えば、働き方改革のなかで長時間労働の撲滅が掲げられていますが、実際の現場では、強制的に職場での労働時間が減らされていて、家に仕事を持って帰らなければならない実情があるということも聞いています。そういうことがないような取り組みをしていきたいと思っています。これは地道な活動かなと思っております。
 社会的に価値のある仕事ということでは、2003年9月に、すでに亡くなられました中坊公平弁護士を座長に、寺島実郎さん、イーデス・ハンソンさん、吉永みち子さんなどの有識者に参加していただきまして、連合の評価委員会というものを設置し、連合がこういう取り組みをしていかなければ、世の中に認められないよ、というご指摘をいただいたことがあります。私たちは、現時点でもこれが出来ているとは思っていません。日々これが実現できるようにこれからも取り組んでいきたい。その最終報告では「連合は弱い者としての人間が連帯する組織として、詐取されている人間の目的を、この提言に基づいて取り戻さなければならない。連合は自己の組織の内部に、この社会の矛盾が反映することを見出し、それに厳しい異議を申し立てなければならない。連合は常に自己の原点に立ち返り、自己を変革することによって、この社会の危機を変革する歴史的使命を果たさなければならないのである」と結ばれており、このような視点に立って今後も活動を進めていきたいと思います。
 最後に、夢の一部であって、私自身の思いでありますが、今、政府が進める「働き方改革」があって、長時間労働の抑制や有給休暇を取得しようということが叫ばれています。現状、有給休暇は、全体で言うと、会社から付与される日数の半分ほどしか消化されていないという日本の実態があります。ただ、使用者が労働者に有給休暇を消化させることに関する罰則規定はありませんので、労働者は、有給休暇を取得しないまま消滅させてしまい、その権利をなくしているという状況です。そこで、今、有給休暇をボランティアに充てるという取り組みもしようとしています。例えば、連合東京に114万人の組合員がいますので、この人達が年間1日ボランティアのために休暇を取ると114万日あるわけですね。365日で割ってみても、1日3000人くらいの人がボランティアに参加できる計算になります。それも有給休暇ですので、休んでも基本的には給料は減らない。ボランティアに参加したいという人の思いを受けて、これを連合東京や私どもと関係する団体が、どういうボランティアをやってほしいとかどこに行ってほしいとか、そういったコーディネートをしなければならないと思っています。
 昨日も『NHKスペシャル』で子どもの貧困の特集をしていましたが、将来の担い手に、貧困がなくなるような取り組みをしたいですね。待機児童の問題、例えば、保育園のちょっとしたお手伝いをボランティアの人たちができるとか。介護でも一緒ですね。介護の施設に行って、僕らができるようなお手伝いができれば、少しは介護士の皆さんの手助けになる。その他、地域の問題では、高齢化して自治会が運営できないということもありますから、そういうところの手伝いをするとか、民生委員もなり手がいなくなってきていると伺っていますので、こういうところに参加するとか。これらをすべて税金でやろうとすると、すでに多額の借金を抱える日本の財政では課題があると思いますので、ボランティアという形でできるようなシステムを作っていきたいと思っています。もちろん連合ですから、組合員の皆さんの労働条件や生活の向上が一つの目的であることは間違いないんですけれども、これからの取り組みとしては、組合員だけでなく広く一般の皆さんにもご理解いただけるような取り組みを連合としてもやっていきたい。このようなことを私の夢の一つとしてこれから取り組んでいきたいと思います。
 長時間にわたりご清聴いただきましたことに感謝申し上げ、これで私からの講義、そして久保さんからの講義を終わりにいたします。どうもありがとうございました。

以 上

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