同志社大学「連合寄付講座」

2023年度「働くということ-現代の労働組合」

第4回

多様な働き方ができる社会とは何か―派遣労働者の雇用形態から考察する―

ゲストスピーカー:アルプス技研労働組合 山本 伸 執行委員長

1.はじめに

 皆さんこんにちは。私はアルプス技研労働組合で働いております山本伸と申します。
 今は労働組合の執行委員長という立場で、アルプス技研労働組合の活動をしております。今回は「多様な働き方ができる社会とは何か:派遣労働者の雇用形態から考察する」というテーマを頂きました。本当にありがとうございます。私は現在、労働組合の執行委員長という立場で組合活動に従事しておりますが、それまでは技術者の派遣会社の社員として、実際に派遣労働者として働いてきました。今日は「派遣」という働き方についてお話しさせていただきます。よろしくお願いいたします。

2.自己紹介

 和歌山県生まれの42歳です。現在は神奈川県の川崎市に住んでいます。大学進学までは和歌山県に住んでいて、大学に進学するときの引っ越しをきっかけに、これまで計8回ほど引っ越しをしてきました。今度はどういう地域に行けるんだろうとか、また、新しい所に住むのも楽しいなと思うようになってきました。大学を卒業後は、現在も所属している、株式会社アルプス技研に入社しました。
 株式会社アルプス技研は、技術者を派遣する会社です。アルプス技研に入社したきっかけは、色々な業務に携われると思ったからです。ちなみに、今日お話する派遣労働というものがどういうものかというのは、その当時の私は正直全く知りませんでした。入社後は、派遣という形で機械設計の仕事をしていたんですけれども、大手の製造業に派遣され、ATMやモーター、複写機、工作機械、自転車部品といったものの設計開発に携わってきました。かなりの部分を任されて技術の開発をしてきたことは、私の人生の中でも誇らしいものであると感じております。
 一方、アルプス技研労働組合は2008年に立ち上げたのですが、先輩の誘いで、立ち上げ時の「設立準備委員会」という所から参加させて頂いて、設立後は、執行委員、書記長を経て、今は執行委員長という立場で活動しております。
 ご存知の方もいるかもしれませんが、「非専従」とは、会社の仕事をしながら、労働組合の活動もするというものです。「専従」とは、労働組合の仕事しかしない立場になります。会社の業務は一切しておりません。それが「専従」という立場になります。非専従でも、専従でも、株式会社アルプス技研の社員であることには変わりありません。
 ですので、私も株式会社アルプス技研の社員ということで、労働組合の活動に従事しているということも、併せて知っていただければと思います。

3.組織概要

 続いて株式会社アルプス技研とアルプス技研労働組合について、簡単に紹介させていただきます。当社は技術者をものづくり製造業に派遣することを主業とする企業です。会社の創業は1968年であり、今年2023年に創業55周年を迎えます。東証プライム市場に上場しており、昨年2022年度の売上高は334億円、従業員数は4,337名。これは昨年末時点ですが在籍しております。今年の4月に新入社員が約300名入社したこと、グループ会社を一部統合したことで、約4,900名の社員が在籍しております。
 本社は、横浜市のみなとみらい地区にあるクイーンズタワーに構えております。経営理念は「Heart to Heart」、これは創業者の松井利夫が制定したもので「企業人として自社の技術や製品に心を込めて社会へ送り出そう」。この言葉を短くしたものを当社の経営理念である「Heart to Heart」という言葉であらわしています。

図表1 組織概要

資料出所:「連合寄付講座」講義資料より引用

 一方、労働組合は2008年11月に設立して、今年で15周年を迎える年になります。
 上部団体は電機連合になります。電機連合とは、電気・電子・情報関連産業、その関連産業の労働組合を結集した産業別労働組合となります。電機連合の上部団体が連合ということになります。アルプス技研労働組合の組合員数は、今年の4月1日時点で約4,000名です。組合本部の所在地は横浜市にございます。プロ野球がお好きな方がいれば、横浜DeNAベイスターズの本拠地である横浜スタジアムの近くに構えております。基本理念は「Pride in Alps」で、アルプス技研で誇りをもって働こうということを基本理念として示しています。以上簡単ですが、会社と労働組合の説明になります。

4.アルプス技研の取引先企業

 続けて、株式会社アルプス技研の取引先企業を簡単にご紹介させていただきます。
 日本有数の企業で、当社の社員が派遣されて働いています。上場企業・優良企業あわせて約700社と取引させていただいております。
 私も大手企業の6社で、ものづくりの設計業務に携わってきました。6社も職場が変わるということは、一般的に考えれば、自分自身で就職活動・転職活動をしなければならないと皆さん考えるのではないかなと思います。
 しかしながら、技術者派遣会社は、自分自身の会社に属しながら職場が変わっていくので、就職活動であったり、転職活動はしなくても良い、これは派遣労働の最大のメリットではないかと私は考えております。

5.派遣労働について

 では、ここからは今日のテーマに沿ったお話をさせていただきたいと思います。
 まず「派遣労働」のイメージと実態についてお話しさせていただきます。
 派遣労働のイメージをインターネットで調べたところ「良いイメージ」と「悪いイメージ」の両面がありました。良いイメージでは「ライフスタイルに合わせて仕事が選べる」「さまざまな職場で経験を積める」「転勤がない」など。一方、「収入が安定しない」「賃金が上がらない」「将来性がない」などの悪いイメージもありました。皆さん自身も感じている通りで、派遣労働は、世間一般のイメージを総じて一言で言うのであれば、「雇用が不安定で低賃金」というイメージがあるんじゃないかなと私は感じております。
 しかし、私が働くアルプス技研は、そんなことはありません。世間一般のイメージである「雇用が不安定で低賃金」では「ない」派遣労働があるということをこれからお話させていただきたいと思います。

図表2 派遣労働のイメージ

資料出所:「連合寄付講座」講義資料より引用

 まず、派遣労働の実態についてお伝えしたいと思います。
 ここでは連合が実施した「パート・派遣等労働者生活アンケート調査」の結果の一部をご紹介します。「職場生活に対する不満や不安はありますか?」という問いに、派遣社員の皆さんが回答しています。
 資料に「常用型」と「登録型」と書いてありますけれども、常用型というのは期間の定めのない雇用、いわゆる無期雇用と言われるものです。一方、登録型というのは、いわゆる有期雇用、期間の定めのある雇用だとご理解いただければと思います。
 調査結果を見ると「不安や不満がない」と答えてる方は、約18%ですね。約2割の人が、不安や不満がない中で、派遣労働をしていることがわかります。逆を言うと、約8割の人が、不安や不満があると理解できるのではないでしょうか。
 続いて「派遣労働の働き方」についてです。「現在の働き方を選んだ理由は何ですか?」という質問に対しては、このような結果になっています。これを見ると「ある程度、労働時間・労働日が選べる」、これが派遣労働のメリットを生かした働き方ですね。一方で、「正社員の仕事につけなかった」(望まない形での派遣労働)方が、約4割いることも分かるのではないか、と思います。

図表3 派遣労働の実態①

資料出所:「連合寄付講座」講義資料より引用

図表4 派遣労働の実態➁

資料出所:「連合寄付講座」講義資料より引用

 続いて、これはアルプス技研労働組合が実施したアンケート結果になります。DI値とは「そう思う」「ややそう思う」の和から「あまりそう思わない」「そう思わない」を差し引いた数です。DI値の中には「どちらともいえない」は含まれませんので、ご注意ください。
 質問の「家族はあなたの仕事を理解してくれている」という問いに対しては、DI値が59.8となっており、派遣労働に家族の理解があると多くの人が答えているという状況になります。この値が高いか低いかという判断は数字を見る人によって感じ方は色々あるかと思いますが、私自身は結構高い数字が出ており、びっくりしています。
 また「今の業務は、友人や家族に引け目を感じることがありますか?」という問いに対してのDI値が-27.8となっております。「引け目を感じることがありますか?」という問いに対して「あまりそう思わない」「そう思わない」と思う方が多いということになりますので、当社で働く社員が持つ派遣労働に対する考え方はネガティブに捉えていないという方が多い傾向にあることが分かります。

図表5 派遣労働の実態➂

資料出所:「連合寄付講座」講義資料より引用

 ただ、「あなたの賃金は他社と比べて低いと感じることがありますか?」という問いに対してのDI値が28.9となっております。当社社員の多くは他社よりも賃金が低いと感じていることが分かります。当社社員は大手の製造業企業で働いておりますので、大手製造業の企業の社員さんと同じような働き方をするんですね。
 皆さんも何となく感じてると思うんですけども、大手製造業の企業は賃金が高い傾向にあると思います。例えば、トヨタであれば、賃金が高いよなとか。日産、パナソニックなど大企業は高いというイメージを持っているかと思います。実際、その通りなんですね。当社社員の中には、自分の給料と比較すると、同じようにもらえてないと感じる方が一定程度いるということが、このアンケートから分かるんじゃないのかと思います。
 ただ、「あまりそう思わない」「そう思わない」という人も約15%いることからも、大手製造業の賃金よりも高い人がいるということも分かります。実際にアルプス技研では、年収が1,000万円を超える方もいます。また、厚生労働省の2020年家計調査では、日本の全年齢の年収中央値は437万円であるのに対して、当社の平均年収は500万円強となっております。日本全国で見れば、決して低賃金ではないということも分かっていただけるのではないかと思います。

6.派遣労働の種類

 ここまで派遣労働と言っておりますけれども、派遣といっても、多様な働き方があります。まず「労働者派遣法」が1986年に制定されて、13業務に限って認められるというところから始まりました。その後、すぐに3業務が追加されて、計16業務になり、1996年には新たに10業務が追加されて、26業務に拡大されております。
 これら「専門26業務」は「ポジティブリスト」と呼ばれており、派遣労働は、専門的な知識が必要な「専門職」から始まったということです。しかし、1999年の労働者派遣法の改正によって、派遣労働は原則自由化されます。
 つまり、そもそも派遣労働というものは、専門的知識が必要な専門職から始まったにもかかわらず、1999年の法改正によって原則自由化されたことから、専門職の働き方であった派遣労働が、なんでもありの働き方になってしまったと言えるということです。私自身は2003年にアルプス技研に入社しましたが、派遣労働というものに全く関心もなく、知識もありませんでした。その後、派遣労働の歴史を勉強する中で、この1999年に原則自由化される労働者派遣法改正を知ったわけですが、違和感のある法改正だな、と私自身は感じています。

7.派遣労働の雇用体系

7-1 直接雇用と派遣労働
 皆さんの中ではアルバイトをされてる方も多いと思います。アルバイトの雇用形態は「直接雇用」の形態になります。アルバイトをしている皆さんとアルバイト先の会社で雇用関係を締結して、アルバイト先で労務提供(仕事)をする対価としてアルバイト代(賃金)を頂いていると思います。皆さんの多くが就職して社会人になっていく中でも、多くの人が、この直接雇用の形態で働くことになると思います。
 一方で、派遣労働は三者で構成される働き方となります。①労働者、②派遣元、③派遣先の三者によって成り立つ雇用形態です。労働者である私は、派遣元であるアルプス技研と雇用関係を結ぶことになります。しかし、私の派遣元であるアルプス技研から指揮命令を受けて働くのではなく、派遣先、例えばトヨタからの業務命令に対して労務提供(仕事)を行います。だから、アルプス技研に対しては、一切、労務提供することはありません。つまり、アルプス技研に所属しながら、トヨタに対して仕事をするというところが、直接雇用と「違う」ところになります。
 私がトヨタで働いたものに対する料金というものが「派遣料金」として、トヨタからアルプス技研に支払われます。大体1時間あたり平均3,000円、8時間で24,000円の料金がトヨタからアルプス技研に支払われるとします。この24,000円の中から、アルプス技研の人事制度(給与制度)に則って、私に賃金が支払われるということになります。

図表6 派遣労働の雇用体系

資料出所:「連合寄付講座」講義資料より引用

7-2 常用型と登録型
 続いて、常用型と登録型についてご説明させていただきます。常用型でも登録型でも、この三者関係というところは全く変わりがありません。
 まず、常用型派遣についてご説明させていただきます。常用型とは無期雇用、いわゆる正社員として雇用されていると考えていただければと思います。正社員雇用されているので、派遣先との労働者派遣契約が終了したとしても、派遣元であるアルプス技研と私との間での雇用関係は無くなりません。
 一方で、登録型は、労働者が派遣元の会社に登録するところから始まります。そして、派遣元は、その労働者に合った派遣先が見つかった時に、初めて雇用関係を締結します。働いて初めて賃金がもらえるということが、常用型と登録型との違いになります。派遣先で労務提供が無くなれば、雇用関係も終了し、一切賃金が支払われません。これが登録型の派遣労働です。つまり、常用型は派遣先で働いてなくても賃金が保証され、登録型は、派遣先で働いていなければ、賃金が全く保証されないとご理解いただければいいのかなと思います。

 

7-3 一般職と専門職
 最後に「一般職」と「専門職」についてご説明したいと思います。
 派遣労働では、一般職と専門職という明確な定義はありません。ここで説明する一般職と専門職については、私自身が定義したものであるということをご理解いただければと思います。この定義づけは、元中央大学法学部の毛塚教授にご指導いただきながら行ったものです。

図表7 派遣労働の種類(一般職と専門職)

資料出所:「連合寄付講座」講義資料より引用

 まず一般職とは「定常業務を主とする、いわゆる一般事務や製造などを行う業務であること」、すなわち「派遣先企業内において、同様の職務に従事する労働者が恒常的に存在し、景気変動要因等で包摂できない労働者ではない」としました。要するに、派遣先企業で同じような働き方をする人が常に存在するとともに、その代わりとなる労働者も常に存在するものだとご理解いただければと思います。
 一方、専門職とは「高度な専門知識を活かした専門業務に特化した業務である」すなわち「派遣先企業内に恒常的に存在しない専門的技能労働者であり、プロジェクト等の業務終了後は包摂を予定しない労働者」と定義しました。要するに、派遣先企業には存在しない専門スキルを持った労働者であり、プロジェクト等の一つの仕事が完結すれば、派遣先企業で雇用をし続ける必要がない労働者と定義づけています。一般職と専門職はこのように定義づけしているとご理解いただければと思います。

8.アルプス技研の常用型専門職

 ここではアルプス技研の常用型専門職を説明していきたいと思います。アルプス技研では派遣社員を正社員として雇用しております。また、機械・電気・電子・ソフト・化学といった専門スキルを有した技術者を派遣することに特化していますので、さきほど定義した「専門職」に該当すると考えます。そのため、アルプス技研で働く労働者を「常用型専門職派遣」と呼んでおります。一口で派遣といっても、正社員雇用で専門性の高い働き方をする派遣労働があることも皆さんに知っていただければと思います。

図表8 アルプス技研の派遣労働(常用型専門職)

資料出所:「連合寄付講座」講義資料より引用

 

 常用型専門職派遣であるアルプス技研の社員は、大手製造業の企業で働いております。
 大手製造業では、ものづくりを行っております。一般的なものづくりの基本的な工程と言われるものは「基礎研究」「製品企画」「構想設計」「詳細設計・量産設計」「試作・実験・評価・解析」「製造・生産管理」「流通・販売」となります。このうち「基礎研究」から「試作・実験・評価・解析」までを「上流工程」と呼び、「製造・生産管理」「流通・販売」を「下流工程」と呼びます。アルプス技研では、この上流工程に専門の技術者を派遣しています。例えば、機械の技術者、電気・電子の技術者、ソフト技術者、化学の技術者を各企業に派遣しています。

図表9 アルプス技研の事業内容

資料出所:「連合寄付講座」講義資料より引用

 派遣労働の労働時間や休日はどうなのかという点ですが、これは、派遣先企業の就業規則に則って仕事を行うことになります。例えば、トヨタで働くのであれば、トヨタのカレンダーに則って働くということです。1日の就業時間が8時間であれば8時間、他に例えばパナソニックが7時間であれば7時間になります。時間外労働の部分(残業)は、派遣先の上司の指示により、残業するかしないのかが決まります。
 続いて「賃金」ですね。賃金はアルプス技研の給与制度により決まっています。当初は月額給、あと、年2回の賞与(ボーナス)ですね。退職金等を定めた給与規定というものがありますので、それに則って支給されることになります。これも能力によって金額が変動するような仕組みになっています。ちなみに、当社は年齢(年功序列)に関する規定というものは一切なくて、能力に則った賃金体系になっております。また例外として、派遣先の福利厚生制度を利用できる場合もあります。
 業務内容は基本的に派遣先の社員と同じ業務を行います。しかし、能力が無ければ、同じような働きをするということは当然できません。逆に、能力が高ければ、派遣先の社員以上の働き方をすることも当然あります。その場合は、派遣料金が高くなり、結果として、労働者の賃金も高くなるということを知っていただければと思います。
 続いて、教育訓練です。教育訓練については、原則として派遣元で実施することになります。つまり、アルプス技研がアルプス技研の社員に対して教育訓練をすることになります。これも例外があって、派遣先で教育訓練を受講することもできます。派遣先の業務に応じて、必要なスキルを身につけてくださいと言われた場合は、派遣先企業の教育訓練制度を受けるということもできる場合があります。

図表10 アルプス技研の働き方

資料出所:「連合寄付講座」講義資料より引用

 アルプス技研の平均的な派遣期間は、私の肌感覚では大体3年から5年のサイクルだと思っています。実際に数値化したものは無いんですけれども、だいたい3年から5年程度同じ派遣先で働いたら、次は違う派遣先で働くサイクルになっていると思っていただければいいかなと思います。一方で10年以上、同じ職場で働き続ける方も非常に多くいます。その職場で必要とされて活躍している派遣労働者の社員もいっぱいいるということをこの場でお伝えさせていただければと思います。
 従って、常用型専門職派遣の働き方は、採用段階ではメンバーシップ型、働き方はジョブ型と言えるのではないかなと考えております。

9.まとめ

 最後に、派遣労働について、常用型専門職派遣の立場から考察をしたいと思います。

 

9-1 良いイメージ
 まず派遣労働は「ライフスタイルに合わせて仕事が選べる」という良いイメージですが、常用型専門職派遣の働き方としては、ライフスタイルに合わせて仕事を選ぶのは難しいのかなと思います。働き方が専門スキルに合わせた業務内容であることから、働く場所が、一般職に比べて限定してしまうからです。ものづくりを行う企業が沢山あれば、このライフスタイルに合わせた働き方ができるのかもしれませんが、現状、実際としては難しいのではないかと思います。
 次に「様々な職場で経験がつめる」というイメージに対しては、専門スキルに合わせて様々な職場で働き、経験を積むことは可能です。ただし、自分自身でスキルの向上や自己研鑽をしなければ実現することはできないと思います。
 次に「転勤がない」というイメージに対しては、専門スキルを発揮して派遣先で働く為に転勤が必要な場合も多くあります。常に転居を伴う移動が必要で、常用型専門職派遣では、転勤がないのは難しいのではないかなと思います。一つの派遣先でずっと働き続けることの方が珍しいです。なお、自らのスキルアップを目指して、派遣先を変えるということもありました。例えば、自動車の仕事をしていて、次は航空宇宙の仕事をしたいというスキルアップの為に派遣先を変えるということもあります。

9-2 悪いイメージ
 続いて、悪いイメージになります。
 「収入が安定しない」という点ですが、常雇用型専門職派遣では正社員雇用の為、月額給与で支払われているので、収入は安定しています。「賃金が上がらない」というイメージに対しては、アルプス技研では定期昇給制度があり、スキル次第では高い派遣料金をもらえて、それに対する賃金がもらえるということで、賃金が上がらないということはございません。「将来性がない」ことも、努力次第で将来は変えられると思います。どのような業種・職種においても、自分自身で努力しなければ報われることはないと言えるのではないかと思います。

図表11 本日の講義のまとめ

資料出所:「連合寄付講座」講義資料より引用

9-3 まとめ
 このように、世間一般の派遣労働のイメージと、常用型専門職派遣では働き方が異なることをご理解いただけたのではないかなと思います。世間一般に言われる派遣とは違い、常用型専門職派遣は「雇用が不安定で、低賃金ではない」派遣労働であるということを知っていただければ、大変ありがたいなと思います。ただ、誤解しないでいただきたいのは、登録型や一般職の働き方を否定する訳ではありません。現に、私の妻は登録型の一般職派遣で働いてくれています。子育てをしながら、家事をしながら、空いた時間で派遣労働をし、家計を支えてくれています。派遣労働の良いイメージである「ライフスタイルに合わせて仕事が選べる」など、労働者自身が望んで登録型や一般職の派遣労働をしているのであれば、何ら問題ないのかなと思います。
 しかし、正社員になれないため、望まない派遣労働をしているという方も一定程度います。この状況をいかにして労働者派遣法が保護していくのかということが、今後の労働者派遣法の課題ではないかと私は考えております。

10.学生へのメッセージ

 本日、私がお話しさせていただいたことを踏まえて「派遣労働」に興味を持っていただけたでしょうか。派遣労働について、少しでもイメージが変わったでしょうか。
 学生の皆さんも、学生生活が終われば、いずれ起業する方もいるかもしれませんし、労働者として働くかもしれません。これまでも20年近く人生を生きてきたと思います。
 色々な場面で知る機会があったと思いますし、これからも、多くのことを知る機会があると思います。多くのことを知ることで、自らの可能性を広げることにもなります。
 自分自身にとってベストの選択ができるよう、引き続き、知見を広げると共に、選択肢を広げることに取り組んでいただきたいと思います。
 これで、私の講義を終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。

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