同志社大学「連合寄付講座」

2010年度「働くということ-現代の労働組合」

第2回(4/16

労働組合とは何か
~単組・産別・ナショナルセンター・地域組織の役割と活動

細田一三(連合京都会長)

1.労働組合とは何かについて

 本日は労働組合とは何かということについて、組織の運営や活動などについてお話をさせていただきたいと思います。
 皆さんはまだ就職されていませんが、工場でモノを作っているブルーカラーも、ホワイトカラーも公務員も、賃金をもらって生活している人々は「労働組合法」においては、労働者と位置づけられています。
 さて、労働組合とは何でしょうか。資料には「労働運動は『人間尊重』や『自由・平等・公平』の精神を持ち、お互いが助け合い、協力しあって、みんなの幸福な暮らしを生み出すために、助け合いの精神・人間愛・ヒューマニズムの考え方から生まれてきました。人間一人ひとりが、お互いを尊重し、弱いところは助け合いながら、働く者の豊かな素晴らしい人生を創造するために、労働組合はつくられました」と書いてあります。簡単に言えば、皆さんはこれから社会に出られて、会社に就職されたら、給料や勤務時間、賃金制度などの労働条件についてさまざまな問題に直面され、納得できない経験をされると思います。たとえば、いくら働いても給料が上がらないとか、残業をしても残業代をもらえないとか、平等に扱ってもらえないということがあると思います。これらの問題に直面した時に、我慢するのか、仕事を辞めるのか、または何人の仲間が集まって一緒になって上司や会社と交渉するのか、この3つしかないわけです。さきほど述べましたとおり、労働組合は「助け合う精神」で成り立っています。労働者が集まり、労働組合を作って、経営者と労働条件や賃金などをきちんと交渉する組織だと考えていただければ良いと思います。
 労働組合は以下の4つの民主主義の考え方を持っています。
 1つ目は「組合民主主義」です。民主主義なので、独裁的ではありません。みんなの多くの意見を聞き、話し合いを通じて、様々な課題を解決していくという考え方です。2つ目は「産業民主主義」です。私たちは労働者なので、やはり自分たちが働いている企業の安定や発展が重要になってきます。企業が発展せず、潰れてしまったら、我々労働者の生活も保護できなくなります。したがって、企業の発展や生産性の向上などを常に重視するところに、産業民主主義の考え方があるわけです。3つ目は「政治的民主主義」です。皆さんはまだ就職されていませんが、税金や社会保障、具体的には年金や医療など、個人では解決できないことが多くあります。これらの問題を解決するには、政治の場で議論される必要がありますから、政治の場においても民主主義がきちんと成立している必要があります。そして最後は「国際的民主主義」です。どの国でも労働者が存在しているので、労働問題は一国の問題ではありません。したがって、世界中の国々の労働者は、いかに互いに助け合うかを常に考える必要があります。この中に「国際的民主主義」という概念があると私は思っています。

2.労働組合(労働者)に関わる法律について

 労働組合と労働者に関わる権利は「団結権」、「団体交渉権」と「団体行動権」との3つあります。これは「労働三権」と言い、憲法第28条により保証されています。団結権とは、働く者は、一人ひとりで賃金や労働時間などの労働条件について使用者と交渉しようとしても非常に弱い立場にいるため、多くの労働者が団結して労働組合を結成して、使用者と対等な立場で交渉できることを保証した権利です。
 次に、団体交渉権とは、労働組合と使用者、あるいは使用者の団体が、賃金や他の様々な労働条件について交渉する権利です。労働組合は労働者を代表して使用者と労働協約、賃金協定などを結ぶことができます。
 そして団体行動権とは、すなわちストライキ権です。要するに、交渉が決裂した時に、ストライキをおこなうことができるという権利です。ただし、ストライキを行う場合には、事前に会社に通報しなければならないという義務があります。一日のストライキをするならば24時間前、半日間のストライキであれば12時間前に通報しなければなりません。昔、特に3月になると、春闘の賃金交渉でストライキはよくありましたが、最近はかなり少なくなってきています。
 労働組合に関わる法律は「労働三法」といわれていて、「労働組合法」、「労働基準法」と「労働関係調整法」です。「労働組合法」は、労使対等の関係づくりを推進して労働者の地位を向上させること、労働組合を組織して団結すること、団体交渉を通じて労働協約を締結することを保証する法律である。
 「労働基準法」は、働く者が人間らしい生活を送ることを保証するという視点から勤労条件について法律で定めることを宣言することから生まれました。同法には労働者と使用者とは対等の立場で決定する基本的な労働条件が定められています。
 そして「労働関係調整法」には、労働関係の公平な調整に当たって、労働争議を予防し、争議が発生した場合には労使双方の話し合いで解決するという考えを前提にしながら交渉し、解決できない場合には、労働委員会に斡旋や調停、仲裁を求めることができるということを定めています。
 今回の講座を通じて、労働組合に関わる法律関係のことについて、「労働三権」と「労働三法」があり、「労働三権」とは団結権、団体交渉権と団体行動権のことで、「労働三法」とは労働組合法、労働基準法と労働関係調整法であることを、頭の中に置いていただきたいと思います。

3.労働組合への加入について

 では、労働組合にはどうやって加入するのでしょうか。労働組合には「オープンショップ制」、「ユニオンショップ制」と「クローズショップ制」の3種類があります。「オープンショップ制」では、使用者は、雇用する労働者に対して労働組合員であることを雇用条件とせず、労働者が労働組合に加入するかどうかは個人の意思で決めなさいという制度です。
 それに対して「ユニオンショップ制」は、従業員として採用されたら必ず労働組合に加入することが義務付けられる制度です。新入社員が入社して、一定期間の研修を終えたら、個人として労働組合に加入したくなくても加入しなければならなりません。つまり、労働組合に入らざるを得ないということです。たとえば、日本の電機産業の企業、そして自動車産業の企業は、ほとんどはユニオンショップ制を実施しています。
 そして、「クローズショップ制」とは、使用者は労働組合に加入している労働者しか採用せず、組合員資格を失った者を解雇するという制度です。従業員を当該組合員の中から採用しなければならないという点で、ユニオンショップ制よりも使用者にとって一層条件の厳しいものといえます。クローズショップ制は、労働組合が労働力の供給を独占する形でその維持・強化を図ろうとする趣旨のものですが、日本のように多くの労働組合が企業別に組織されている場合は、締結例が極めて少ないのが現状です。

4.労働組合の種類と役割について

 「労働組合組織」という電機連合の組織図ですが、この図を下から上へ見ていただくと、「〇〇労組」、「電機連合〇〇地方協議会」、「電機連合」と「連合」という組織になっています(図1)。

図1 労働組合組織

 「〇〇労組」は企業別労働組合、いわゆる「単組」です。これは会社単位に組織された労働組合であり、日本では多くの組合は企業別で組織されています。私は当時、松下電器産業労働組合に入って、いろいろな活動を行っていました。企業別労働組合は、企業に属する労働者の雇用や労働条件の維持・向上を求めて経営側と交渉することが基本的な仕事です。
 「電機連合」は産業別労働組合の1つです。産業別労働組合は略称が「産別」と呼ばれており、それぞれの産業の問題や働く組合員の基本的労働条件等に対応するため、同じ産業の単組が集まった組織を指します。電機連合は電機産業の企業別労働組合が集まって組織している産業別労働組合です。1つの産業の労働組合であるため、「産別」は産業内の企業に対して、労働者の基本的労働条件の改善・向上のために、統一的な取り組みをおこなっています。具体的には、産業全体の雇用の安定や確保、産業発展や改革に関する政策立案などです。例えば賞与について、電機連合は4ヵ月分の賃金という電機産業の最低ラインを決めています。このような基準を作っておけば、小さい企業でもそこの単組は電機連合が作った最低ラインに基づいて要求することができるのです。
 また、自動車産業では一昨年から景気が悪くなっており、非正規労働者が失業しています。このような時期において、自動車総連は様々な活動をおこない、自動車産業の労働者の雇用を守り、労働条件を維持するために産業別労働組合として努力しています。
 そして、「連合」は労働組合のナショナルセンターです。産業別労働組合・企業別労働組合がさらに大きくまとまり、産業や企業の枠を超えて結集した組織で、労働条件の大筋の方向を打ち出し、政治・経済・社会の諸問題について、労働者の立場で運動する組織です。ナショナルセンターとして、連合はすべての労働者の代表として、政府や自治体などの協議諮問機関に参加し、全国の労働運動の本部として、あらゆる情報を加盟組合に提供しています。あわせて、労働問題などの調査・研究もおこなっており、加盟組合間の統一要求を作成しています。さらに、労働組合の国際的交流や活動などにも、我が国の窓口として重要な役割を果たしています。なお、日本には47の都道府県があるため、連合は各都道府県に地域別組織を設けており、私が所属している連合京都は連合が京都において設けた地域別組織です。

5.労働組合費について

 「組合費ってどう使われてるの?」という資料を用意しました(図2)。まず、組合費として労働者の給料の3%~5%を徴収し、大体平均で5100円程度だと思います。単組は組合費を集めて、一般的には人件費(34.7%)、活動費(24.6%)、交付金(14.5%)などに使われます。そしておおよそ12.9%が上部団体関係費として上部組織に納められます。
 産業別労働組合は、単組から組合費の一部、平均1人510円をもらって、産業政策の実現などの活動に使っています。そのうちの22.7%は上部団体関係費として連合に納められます。そして連合レベルになると、1人あたり大体85円の組合費で、「安心・安定・安全」の社会づくりのために使っています。私が所属している連合京都は、連合から労働者の1人あたりの85円のうちの26.4%を地方連合会への交付金としていただき、地域別連合の経費として利用して様々な活動をおこなっています。

図2 組合費ってどう使われてるの?

6.日本の労働組合の現状について

図3 主要団体組織

 「主要団体組織」という資料を用意しました(図3)。現在、日本の労働組合の組織率は約18.1%程度で、高くありません。いま、5600万人程度の労働者がいますが、4557万人は労働組合に加入していません。未加入者の大半はパート、派遣労働者、契約社員、そして中小・地場企業で働いている労働者です。
 周知のように、現在、「ワーキングプア」ということばがあります。年収200万円未満の労働者のことで、こうした方々の人数が非常に多くなっているということです。これは深刻な社会問題になっており、我々労働組合としては、最低賃金の引き上げや、パート・有期契約労働者の均等待遇などの実現をめざして努力しています。

7.連合京都の取り組みについて

 最後に、連合京都の取り組みを簡単に紹介したいと思います。連合京都は連合の47の地域組織の1つであり、約9万3000人の労働者が加入しています。
 第一は、雇用のセーフティーネットです。現在の厳しい雇用環境の中でどうやって労働者の利益を保護するか、雇用をどう確保するかについて取り組んでいます。例えば4月28日に、京都府、京都市、労働局、経営者団体などの方々を集めて会議を開き、京都全体の雇用をどう守っていくかを議論する予定です。
 そして、「京都ジョブパーク」という施設で、労働者の就職支援をおこなっています。皆さんのなかで、京都で就職したいと考えている方がいれば、ぜひ京都ジョブパークへ行って面談を受けてください。この3年間で約1万人の方々の支援をし、約85%の方々が就職できたという実績を上げています。生活保護や就職支援など、様々な問題に対応しているので、何かあればぜひ行ってみてください。
 さらに、我々は「京の担い手」という活動をおこなっています。京都で働きたい方々を全国から100人を募集、大学で勉強していただくとともに、企業で研修をおこなっていただきます。100人の方々のうち、86人が京都で就職できました。
 第二に、地域に根ざした顔の見える連合運動についてですが、やはり多くの方々は連合が何をやっているのかを分かっていません。したがって我々は顔の見える活動をやっていきたいと思っています。
 第三に、社会の安心・安定のための労働組合の存在感を高めることです。組合の組織率が低いため、努力して高める必要があります。努力の方向は、非正規労働者の組織化や労働者に対する利益保護の強化などが挙げられます。
 最後に、政策・制度実現に向けた政治活動です。先ほども申し上げましたたが、年金、医療などの問題は個々の労働者では解決できない問題です。これらの問題を解決するために、労働者側に少しでも有利な政策を実現できればと思っています。したがって、連合は政治活動の面においても努力しており、これからも皆さんとともに頑張っていきたいと思います。

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