『私の提言』連合論文募集

第6回入賞論文集
優秀賞

子育てと仕事の両立を労働組合がサポート
―労働組合として出来る活動の提案―

淺山 里奈
(UIゼンセン同盟 兵庫県支部 常任)

1.はじめに
  男女を問わず、「子どもを持つ、持たない」は大きな選択です。初めての妊娠、出産、そして育児の場合、未知の世界に足を踏み入れると言っても過言ではありません。経験した事がない訳ですから、不安を抱くのは、当然です。しかしその一方で、たくさんの夢と希望が詰まったものでもあります。
  「子育ても!仕事も!」。そう思って、昨年の春、私は育児休業から職場復帰しました。女性の生き方を語る上で、結婚と出産は常にセットのように語られますが、いざ両方を経験してみると、それほど似たようなものではない事に気付きました。元々私は「結婚し、子どもを産み、子育てをしながら、仕事を続けたい」と思っていましたが、実際は結婚したものの、なかなか子どもを産むという決心がつきませんでした。なぜなのか。それは、子どもを産むことにより生じるさまざまな制約が、単純に自分の仕事にマイナスになると思い込んでいたからです。もっと色々な経験をしたい、もっと勉強して早く1人前のオルガナイザーになりたいという私の強い思いと両家の実家も遠く親戚も近くにいないため、子どもを育てながら今の仕事を続けていく事に不安がありました。これは、私が「労働組合」の職員である事も理由の一つです。労働組合の活動は、基本的に就業時間外で行うことになるため、夜や土日に会議や行事などが多く、突然の加盟組合からの依頼で、緊急性の高い場合は、すぐに現場へ駆け付ける事もあります。そもそも私が産休に入るまでは、私も夫も、仕事中心の生活で、ご近所にどんな人が住んでいるのかも分からないほど、地域との繋がりはゼロで、自宅には寝るためだけに帰るような生活でした。まさに夫婦揃って「ワーク・ライフ・アンバランス」な生活を送っていたのです。これまでの仕事の仕方、生活の仕方をお互いにそのままスライドさせてしまうと、子育てと仕事の両立は難しくなるため、夫婦で散々話し合った結果、私が短時間勤務制度を使う事を決心しました。何故、私だけが勤務時間を短くしなくてはいけないのかという多少の不満?はありますが、今は、夫婦で180度、働き方生活の仕方を変え、四苦八苦しながらも頑張っています。そこで、自分の経験を基に、労働組合として、まだまだ家庭的責任の多くを担っている母親の子育てと仕事の両立を応援、また子育て中の父親の「本当はもっと子育てを主体的に行いたい」との思いをサポートする事が出来ないか、また企業内労働組合の枠を超え、同じような立場で働く仲間との連帯、そして、「人と人との繋がり」をキーワードに子育てと仕事の両立の応援・サポート体制が出来ないかを私なりに考えてみたいと思います。

2.子育てと仕事の両立を取り巻く現状分析
(1)子育てと仕事の両立は、選択肢の1つ
  子どもを持つという選択をした場合、特に働く女性にとって、「子育てと仕事の両立が出来るのか?」という悩みに必ず直面します。女性の社会参加が進み、勤労者世帯の過半数が共働き世帯となった今、女性の働き方に関する考え方も、「子どもができてもずっと仕事を続ける」が増加傾向にあります。仕事を続ける理由は、「経済的な事」「今の仕事が好き、自分の専門的能力を磨きたい」「社会と繋がっていたい」など人それぞれだと思いますが、出産後の就労環境には依然課題も多く、制度が整っていない、制度はあるが実態がない、実態があっても周囲の理解が不足しているなど、男女雇用機会均等法が最初に施行されてから20年以上が経とうしているにも関わらず、仕事と育児の両立が困難で離職する事例も多いのが現状です。私が育児休業中に通った自治体主催の子育てサロン、離乳食教室などで出会ったお母さん達は、妊娠と同時にあるいは産休前に仕事を辞めていました。退職理由は、「旦那さんの仕事の帰りが遅い」「残業がゼロの職場ではない」「3歳まではお母さんがそばにいないといけない」などです。俗に云う「3歳児神話」については、幾度となく周囲から聞かされて、悩まされました。

(2)政府の施策
  実際に、女性の育児休業の取得率は9割近くに達している一方で、約7割の女性が、第1子を出産後に離職しています。少子化を食い止めるべく政府も、多様な働き方や生き方ができる社会の実現をめざして、平成19年に「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」や「仕事と生活の調和推進のための行動指針」を策定し、その中で、第1子出産前後の女性の継続就業率向上(現状38%→2017年55%)を目標に掲げ、行政、経済界、労働界が一体となって取り組んでいくことが確認されています。(注1)内閣府の「仕事と生活の調整推進室」が2008年度を「仕事と生活の調和元年」と位置づけ、そのシンボルマークとしてカエルのイラストを使った「カエル!ジャパン」を作成し、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)のPRを始めました。(注2)

(3)企業・労働組合の現状
  なぜ、今「ワーク・ライフ・バランス」という言葉が注目されて始めているのか。日本の総人口の5%以上を占めるいわゆる「団塊の世代」が定年に達し始めたのが2007年、これより数年間に大量の退職者が出るため、企業は、大量の働き手を失う事になるので、新たな人材の採用を積極的に行わなければならなくなり、労働力の確保は重大な関心事の一つとなったのです。どんな厳しい状況下でも生産性を上げるためには、「優秀な従業員には、辞めずに働き続けてほしい」人材の流出を防ぐ事も企業の大切な課題となっています。また従業員の立場からすると「子どもを産んでも仕事を続けていきたい」「親の介護をしなくてはならない」「大切な家族と過ごす時間がもっと欲しい」「趣味や勉強をする時間がもっと欲しい」など、生活の部分でどうしても譲れない事を主張するようになり、企業と従業員の思いがうまくマッチした結果だと思います。
  労働組合も「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)」の問題について、現在もさまざまな取り組みを進めているところですが、解決までの道のりはまだ遠いのが現状です。労働基準法や男女雇用機会均等法、次世代育成支援対策推進法などの改正、さらには、金銭的な支援(出産手当、出産育児一時金、児童手当など)、保育園に入れない待機児童の解消、学童保育の設置など、政治の力が必要な部分も多いのですが、どんなに素晴らしい法律や施策が出来たとしても、子育てと仕事の両立の現場は、家庭であり、職場であり、地域です。そして子育てと仕事の両立には、家族の理解と企業・職場の協力が、必要不可欠な要素となります。企業にとって優秀な人材の確保・定着が重要な課題となった今、労働組合も同じように組織人員の維持・増加、組合の役員の成り手を増やす(女性の役員を増やす)などの人材の確保に努めて行かなければならないと思います。

3.妊娠から職場復帰までの課題~自分の体験から~
  そこで「労働組合」として子育てと仕事の両立のサポート策を考える上で、自分自身が育児休業を取得し、職場復帰した経験から考えられる課題を大きく3つの分野に分けて挙げてみたいと思います。
  自分が妊娠をし、出産、育児休業を経て職場に復帰してみると、子どもの成長に伴ってまるで障害物競争のように様々な事が起こります。それは、妊娠が分かった時から始まり、想定していた事よりも想定してない事の方が圧倒的に多いのです。また出産をし子どもとの生活が始まると、とたんに「自分の時間」が少なくなります。段取り良く1日を過ごすようタイムスケジュールを組んでみても、子どもの体調や機嫌、ご飯を食べる、食べない、お昼寝の時間、病院の開いていない時間になると体調を崩すなど、あっという間にスケジュールは覆されてしまうのです。自分の時間をコントロール出来ない辛さは、経験してみるまでは、なかなか理解できませんでした。

①仕事と妊娠生活の両立から見えた課題
  まず産休に入るまでに、仕事と妊娠生活を両立させる事が必要です。この時期は、母体の体調管理、職場への報告、職場までの通勤、仕事の引き継ぎなどの課題が挙げられます。また妊娠中は、切迫流産・早産など思わぬトラブルが起こらないとも限らないため、「人手が足りない」などの理由で体調を優先させる事が難しい場合もありますが、「自分の体を守れるのは私」の自覚を持って母性保護規定を知っておく事、併せて、妊娠・出産に関する社内規定や就業規則にも目を通しておく事と「出産予定日と産休・育児休業がいつまで取得できるのか」などの予定を把握しておくことが重要だと思いました。この時期の私は、つわりが妊娠後期まで続き、予定が入っていても当日にキャンセルしたり、妊婦健診が2週間に1度であったため、仕事のやり繰りに苦労しました。

②産休・育児休業中に見えた課題
  仕事を続けていく事になると、この休業中は子どもとゆっくりと過ごせる貴重な時間となります。今しか出来ない事を思いっきりやることも大切ですが、職場復帰を見据え、少しずつ準備しておくことも重要です。この期間は、休業中でも仕事を忘れないようにするためにはどうすべきか、職場との繋がりをどう持つのか、地域との繋がりをどう持つのか、復帰後の子どもの預け先をどうするのか、子どもが病気の時や急な残業の時はどうするのか、などが挙げられます。職場との繋がりをしっかりと持たなかった私は、仕事の感覚がなかなか取り戻せずに苦労しました。また子どもが病気の時に、利用しようと思っていた病児・病後児保育の定員が少なく、今でも病気になった時の対応には悩まされています。

③職場復帰をして見えた課題
  復帰してすぐに私の前に立ちふさがった壁は、息子の病気でした。保育園へ入園し、慣らし保育が始まって3日目に、ロタウイルス腸炎で入院する事になったのです。預け始めは、集団生活のデメリットとも言うべく、病気を貰いやすいと聞いてはいましが、週の3日に1度は小児科へ、入院すること数回、毎朝、ドキドキし、仕事中は保育園からの呼び出しがあるのかを気にして、帰りの電車の中では、残してきた仕事と明日の出勤が出来るのかを心配して、復帰半年間はそんな毎日で、ついに有給休暇を使い果たしてしまいました。やりたい仕事、やれる仕事にも関わらず、「もしも」の時を考えてしまい、「どうせすぐ休まないといけないから」と仕事に対するモチベーションが下がる一方で、職場の上司や同僚、加盟組合にも本当に迷惑をかけたと思います。また、保育園の預け始めは、子どもが親と離れる事を嫌がり、泣き叫び、おやつも食事も取らずに過ごす子どももいます。実際、私も毎朝、泣かれ、我が子を悲しませてまで仕事を続ける意味があるのかと考えてしまいました。自分が決めた事であってもこのような状況が続けば、いくら本人に「仕事への意欲」があったとしても、子どもや家庭がある以上自分ではどうしようもない事が続き、その事を後ろめたく感じます。そしてその後ろめたさが、「仕事への意欲」を遠ざけ、「家庭への責任」の重さと精神的かつ肉体的疲労が、ピークに達した時に結局は退職という選択をしなくてはならなくなっていると思います。実際、このような状態に追い込まれているのは、ほとんどが女性であることも忘れてはなりません。体験を通じて見えた以上のような3つの課題を克服すべく何が出来るのか、いかにスムーズに職場復帰が出来るように働きかけるか、当事者ではどうしようもない出来事が起こった時に、当事者に対しどう「仕事への意欲」を維持・継続させるか、当事者のメンタル部分へのフォローをどうするかなどが考えられます。上記に挙げた課題を基に、どう「労働組合」として、具体的にどんなサポートしていけるのかを私なりに考えてみたいと思います。

4.「労働組合」が子育てと仕事の両立をサポートしていく為の具体的な提案
  近年、労働組合の活動の一つである賃上げや一時金交渉が厳しい状況で行われるようになり、雇用不安にも晒され、組合員の期待に応える事が大変難しくなっています。しかし、労働組合は、どんな時も組合員が困った時の駆け込み寺的存在であり、「労働組合(愛)」と呼ばれるように人と人が助け合い、支え合いという愛が存在する組織であるべきだと思います。
  まず「労働組合」は、その企業の経営状況、職場環境などを日常の活動の中で把握しています。苦情処理や相互扶助を目的にした活動にも取り組んでいますし、組合費は徴収されてはいますが、専門家に相談した場合を除けば、相談する度に相談料など費用が発生するような事もありません。安心して子育てと仕事の両立を相談できる、当事者と共に両立をシュミレーションし、サポートする窓口としては最適であり、利益追求の組織である企業にないやり方で、企業と同じく最強の味方になれると思います。
  平成17年度版国民生活白書「子育て世代の意識と生活」の調査によると、専業主婦は、子育てについて他人に助けを頼まない傾向にあり、常に注意を払わなければならない子どもと毎日かつ長時間接しているばかりでなく、体や気を休めることができにくい状況にあることが子育てを負担に感じているという現実も考えなければなりません。仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)」の問題を解決するためには、働く母親のサポートを考えるだけではなく、本来は、夫婦で同じように子育てをしていかなければならないはずの父親へのサポートも同じように考えなければならない事です。夫婦共働きであろうと、そうではない場合でも父親も子どもの成長に合わせて、家庭的責任を果たしていくべきだと思います。

①ロールモデルを見つける
  女性の多い職場で、育児休業からの復帰者が多い環境にあるとワーキングマザーのお手本がたくさんいます。しかし、仕事の内容、キャリアへの思い、家庭環境や周囲のサポート状況(両家の実家・親戚が近い、同居の有無、ファミリーサポート、ベビーシッターが利用出来るなど)子どもの年齢や性格など少しずつ違うので、全く同じパターンを見つけることは難しいのが現実です。身近に先輩ワーキングマザーがいる場合は、同じような部分を少しずつ切り貼りし、過去の経験からアドバイスをもらい、より良い自分にあった子育てと仕事の両立を模索する事が出来ます。

②子育てと仕事の両立をサポートする相談窓口の設置
  セクシャルハラスメントなどの窓口と同じく、いつでも相談出来る窓口を設置する事により、妊娠が判明した段階、または、子どもを産みたいと思った段階から、子育てと仕事を両立していくにはどうすれば良いのかをシュミレーションすると、自分のキャリアデザインが設計しやすくなります。また1人で両立していくために必要な情報を探すよりも、より多くの情報を入手する事が可能となり、両立するための問題を抱え込む事を軽減する事が出来ます。この窓口のサポートチームのメンバーは男女平等参画委員会や女性委員会などの専門委員会や育児休業取得経験者や子育て中の方が、この役割を担っても良いと思います。

③両立応援冊子の作成
  妊娠が分かった段階から職場復帰までの、一連の流れと社内規定や就業規則などに記載されている制度を分かりやすく解説したものや、育児休業から復帰した組合員の体験談、両立をするために工夫している事などが掲載された冊子を準備すれば、当事者が時間のある時に目を通す事が出来るうえ、職場復帰までのある程度の流れを把握し、早めに両立生活をイメージする事で自分にあった両立対策を考える事が出来るはずです。また子育てと仕事の両立は、育児休業から職場復帰して終わる訳では無く、子どもが成人するまで続くものであり、子どもの成長に合わせた、その時その時の両立方法を情報提供出来れば良いと思います。冊子の配布と同時に厚生労働省推奨のマタニティマークのキーホルダーも配布すれば良いと思いますが、マタニティマークを付けて周囲に妊娠をアピールする事に抵抗を感じる方もいるため、希望者に配布するなど工夫も必要です。

④当事者との面談
  まず、妊娠が判明した段階から 安定期、産前休業・育児休業に入る前、育児休業の途中、職場復帰直前、職場復帰直後などの節目に、労働組合の役員・両立サポートチームのメンバーが個別に面談を行う事により、当事者の置かれたその時期に合わせた知りたい情報を提供することができ、どのようなサポートが必要なのかを把握する事が出来ます。また復帰までにどのような支援を受けられるかを明確にすることにより出産・育児・復帰までの不安を少しでも取り除くことができます。
  妊娠が判明した段階の最初の面談では、当事者が子育てと仕事の両立を望む、望まないに関わらず、妊娠・出産に関する社内規定や就業規則を説明し、併せて、労働基準法や男女雇用機会均等法などの法律の説明も必要です。職場の上司に妊娠の報告をした際に、企業によっては、人事や労務の担当者から妊娠・出産に関する社内規定や就業規則や法律の説明があると思いますが、当事者がいつでも質問や疑問に思う部分があれば聞きに行ける体制が整えられていると安心です。また妊娠初期のつわり、(眠気や腰痛、冷え)などの上手な乗り越え方や、仕事内容、職場までの通勤の方法なども当事者と一緒に考え、必要があれば企業側に、または当事者の職場の上司に労働組合の立場から働きかける事も大切です。
  安定期・産前休業・育児休業前・休業の途中の面談では、子どもの成長はもちろんの事、子どもを保育園などに預ける場合、当事者の自宅・職場付近の待機児童の数はどうなのか、また復帰する職場とのコミュニケーションはどうなっているのか、スキルを維持するためにどうしているのか、などを把握しておくことも大切な事です。産休・育児休業中は、ゆっくりと子どもとの時間を過ごせる貴重な時間ですが、産休・育児休業をどのように過ごすかにより、職場復帰をスムーズにし、子育てと仕事の両立に対する不安を軽減する事が出来ると思います。

⑤妊娠中または子育て中の組合員を対象にした集まり・情報交換の場の提供。
  妊娠した組合員、産前・産後・育児休業中の組合員、子育て中の組合員を対象に情報交換、交流を目的とした集まりを開催する事により、子育て中の悩み、両立をしていく上での悩みを相談したり、保育園情報(保育園で今流行っている病気、待機児童の数、保育園の方針、選び方など)や、小児科をはじめとする病院情報など、子育てをしている先輩組合員からアドバイスをしてもらう事により、仕事面の不安だけでなく、子育てに対する不安を取り除くことができるはずです。核家族化が進み、近所付き合いも希薄になり、子どもの母親もしくは両親だけで子育てをする家庭が増えています。インターネットや子育てに関する雑誌などで簡単に多くの子育てに関する情報を入手出来るようになってある意味便利ですが、氾濫する情報により、何が良いのか、悪いのかと惑わされている親が増えています。企業内労働組合でのこのような情報交換の場の提供が難しいようであれば、企業・業種の壁を超えた労働組合独自のヨコの繋がり(近隣の企業内労働組合、産業別労働組合など)を活かしての開催も出来ると思います。

⑥お父さん&お母さんの育児教室
  自治体や病院が行う両親学級や育児教室は、平日に行われる事が大半で、仕事をしながらでは、なかなか参加する事が出来ないと思います。そこで、企業・労働組合主催で子育て経験、子育て中の先輩組合員による沐浴の仕方、ミルクの作り方やオムツ交換などの体験練習が出来る場があれば、また育児用品の上手な選び方などのアドバイスや、既に使わなくなった育児用品グッズを集め、無料で貸出などを行えば、当事者は経済的出費も抑える事が出来き、エコ活動にも繋がります。

⑦企業に対する労働組合としての働きかけ
  現実問題として、全ての企業が子育てと仕事の両立を応援しようとしている訳ではありません。2009年3月17日付の毎日新聞朝刊に掲載された記事「育児休業:解雇・降格 相談増、今年に入り年末の1.5倍 パートに契約変更強要も」によると、厚生労働省が育児休業や休業明けに、解雇や降格などの不利益取扱いを受けたとする相談が増加しているとの調査結果を公表しました。(注3)私の住んでいる兵庫県も例外ではなく、2009年7月23日付の神戸新聞の記事「産休育休取得希望の女性、雇い止めや解雇増加」によると、雇用情勢が急速に悪化した今年1月~3月に兵庫労働局に寄せられた相談が前年同期の約3倍に急増し、ある女性は、「産休・育休を取得後に職場復帰したい」と会社に伝えたところ、会社側は「休業中に別の人を採用するが、復帰後に2人雇うのは経営上困難なので、金銭的補償をするので退職を」と迫られたという内容が掲載されていました。(注4)連合も今年3月に厚生労働省に対し、育児休業取得中の解雇や退職勧奨等が横行している状況に早急に対応するため、「育児休業中の解雇などに関する要請」を行っています。企業内労働組合においても育児・介護休業法などの法令遵守を徹底するように、企業に対して働きかけていかなければなりません。また、育児休業からの復帰者をスムーズに受け入れるためにも、復帰する職場・部署に対して、育児休業中から上手にコミュニケーションを図る必要があります。例えば電子メールを使う、社内の回覧書類のコピーや社内報を郵送する、産休・育児休業中の従業員と定期的に打ち合わせをする、定期的な会議などに当事者が望めば出席出来るようにするなど制度化が求められます。仕事の感覚を早く取り戻す、忘れないようにするには効果的だと思います。

5.おわりに
  「女の道は、一本道でございます。さだめに背き、引き返すは恥にございます。」
  体調が悪く、愚図る息子をようやく寝かしつけて、何気なく観ていたテレビからこの台詞が聞こえてきました。一躍「篤姫」ブームを巻き起こしたNHK大河ドラマ「篤姫」に登場する名台詞です。篤姫は、岐路に立たされ、迷い、最終的に自分の心を決める度に「女の道は、一本道」と自分に言い聞かせます。決して私は、藩命を受けた訳でも、何かものすごい使命をもっている訳でもありませんが、この言葉に込められた強い決意に思わず自分の姿を重ねてしまいました。一方で、息子が病気をし、仕事を休まなければならない度に、時間の制約に悩まされる度に、息子には大変申し訳ないですが、「子どもがいなければ」と思う瞬間に、仕事を続ける事を迷う私に足らなかったものがこの強い決意だったようにも思います。
  子育てと仕事の両立は、簡単なようで簡単ではなかった、それが今の正直な感想です。今日まで仕事を辞めることなく続けて来られたのは、夫をはじめとする家族や職場の理解や協力を得る事が出来たからであり、両立が出来るように考えられた法律や制度があったからこそです。息子が成人するまでに跳び越えて行かなければならないハードルは、まだまだたくさんありますし、また2人目3人目を産みたいと考えた時、そのハードルはもっと高く、数も増えるかもしれません。しかし、子育てと仕事を両立させるために努力し、流す汗(冷や汗も含む)は、たとえ時間がかかったとしても、時代やニーズにあったより良い法律や制度、より良い職場環境、より良い明日に繋がっていく事を信じ、今日からまた笑顔で息子に接し、子育てを楽しみながら頑張っていきたいです。近い将来、育児休業復帰者が設計した「子育てと仕事の両立」という一本の道が肩に力を入れず、力まずに、回り道をしたとしても、振り返れば一本の道として繋がっている事が自然となるように労働組合の立場で、これからもこの課題に向き合っていきたいと思います。

以上

参考文献
(注1)厚生労働省 平成15年度 人口動態統計特殊報告「出生前後の就業変化に関する統計」の概況
(注2)内閣府 仕事と家庭の調和(ワーク・ライフ・バランス)ホームページ
(注3)毎日新聞朝刊 2009年3月17日
(注4)神戸新聞 2009年7月23日


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