ディーセントな雇用流動化で労働者が守られる社会へ

- 望まない離職を生まないための労働団体の可能性 -

矢内 俊行 (UAゼンセン 製造産業部門 常任執行委員)

概要

 「数は力なり」「組織拡大は労働運動の一丁目一番地」。労働運動において何よりも重要な言葉である。それと逆行するのが「合理化」である。人材不足と言われる中でも様々な事情で人員余剰の企業が多くある。希望退職募集、事業所閉鎖など、組合員を減らすことは組合員にとっても、組合、産別にとっても、身を切られるほどつらい対応である。そのつらい思いをどうにかしてなくすことはできないか、という課題意識が出発点である。本稿では、労働者が不本意に職を失うことなく、質の高い雇用を維持しながら雇用の流動性を高める「ディーセントな雇用流動化」の促進を前提とした労働市場改革を提案する。

 そのため、合理化に対する「対策」と「予防」からの流動化促進の可能性に言及する。これにより、労働者はキャリアアップや転職に前向きに取り組むことが可能になり、さらに、産別、連合や単組が一丸となって、公正労働基準の底上げや、産業全体のセーフティネットを構築することも実現できると考える。それらを機能させることで、日本全体で「ディーセントな雇用流動化」を実現し、労働者の権利と社会的な安定を両立させ、「労働市場全体で雇用を保障する時代」を見据えたい。