「人材の流動化」による労働市場や職場への影響

~今後の企業・労働組合に求められるもの~

廣田 一貴 (電力総連 労働政策局 次長)

概要

 最近、転職を中心とした「人材の流動化」についての情報をよく目にする。企業側からすると、「既卒・経験者」を採用することで、その企業の戦略や必要なスキルを持った人材を即充することが可能となる。採用される側からしても、技術・技能・スキルを活かして活躍することが望めるため、自身のステップアップにもつながる。このような「人材の流動化」は今後増加し、転職することが前提の雇用形態が広がっていくのではないだろうか。近年の若年層は「転職」をキャリアアップと捉え、個人の価値を高めていく。転職する人の増加は、「人材の流動化」が活発になることであり、成長産業を中心として日本経済の活性化につながっていく。一方で、「人材の流動化」が前提の労働市場が拡がっていくことは、企業にとって、これまでとは違った戦略や人材育成を採っていくことになる。

 筆者たち労働組合にも「人材の流動化」に対して、これまでの活動や取り組みとは違った対応が求められるのではないだろうか。様々な課題を持つ労働組合において、将来へ向けた活動を着実に進めていくためには、「人材の流動化」にどう対処していかなければならないかを検討する必要がある。

 本稿において、「人材の流動化」が起きている現状や背景、今後の課題を整理し、労働組合に求められることや取り組んでいくことを検討し、提言する。