納得性の高い人事評価の実現に向けて

―組合員の賃金査定に労働組合が果たすべき役割とは―

石澤 拓也 (情報労連 通建連合 ミライト・ワン労働組合 東日本総支部 書記長)

概要

 厚生労働省が発表した2020(令和2)年の転職者実態調査において、転職理由の76.6%が自己都合であり、その内訳として「能力・実績が正当に評価されないから」が15.3%であり、年齢別に比較すると30歳以降につれて高くなる傾向にあった。

 通信産業に関わるA社においても従来から人事評価に対する不満の意見は根強く残っており、その大半が評価基準と評価結果における矛盾に対する意見であった。人事評価は多くの日本企業が取り入れている、従業員の業務遂行能力と実績を評価する行為であり、従業員のモチベーション向上に活用される重要な役割を果たすものである。しかし、創業80年を誇る歴史あるA社において、なぜこのような人事評価の仕組みになっているのか、人事評価に悩む企業の一例として紐解いてみたい。

 また、人事評価は定期昇給や賞与などの賃金査定に大きく関わるため、組合員の生活設計に対し、非常に大きな役割を担う。労働の成果として組合員が納得した賃金査定を享受できるよう、労働組合としてできることは何かを考察していく。