労働組合文化運動の伝統と可能性

-「労働映画」を視点として-

渡辺 典子 (日本教職員組合 書記)

概要

 個人化社会が進み「個人のメリット感」や「自己責任論」で物事が語られることが多くなった今日の社会において、集団に積極的に参画するという労働組合的な価値観はなかなか受け入れられづらい。

 一方で、「みんなでよりよい暮らしをめざす」というある種普遍的な価値観は、労働組合においても重要な視点であり、個人化が進んだ現代社会においても組合活動の根底にある連帯的な価値観への理解と共感を生むきっかけたり得るものだと考える。組合活動が理解され、その価値観への共感のもとに人々の参加を得るためには、労働組合からはどのような発信が必要になるのだろうか。その一つの視点として、連帯的な意識に基づく生き方や暮らし方に対する価値観の醸成や、労働者同士の「つながり」の形成に力を発揮した戦後の労働組合の“文化運動と映画製作”、そして「労働映画」に注目し考察を行う。

 また、現代における「労働映画」普及のとりくみと現状を調査し、労働組合に対する「理解・共感・参加」の醸成への可能性を探る。