労働金庫法上の労働者性から考えるフリーランスの包摂

―労働法および労働界による包摂の検討―

柳 崇弘 (労働金庫連合会 営業推進企画部 調査役)

概要

 本論文は、従来の労働法制において十分な法的保護を受けられないフリーランスに対し、労働金庫法(以下、労金法)に基づく金融的支援の可能性を検討するものである。近年、働き方の多様化により、企業等に雇用されないフリーランスとして働く者が増加しているが、法制度の適用対象外となることが多く、社会的・経済的に不安定な立場に置かれている。現代における「労働者」の範囲は曖昧であり、フリーランスがその中に含まれるか否かは明確でない。この点、労金法も、主に労働者の福祉向上を目的として協同組織金融機関である労働金庫に関する業法であり、その対象は原則として「労働者」である。そこで本論文では、労金法における「労働者性」の解釈を問い直し、労働組合法などの「労働者」概念と比較することによって、フリーランスを対象に含めうるかを検討する。特に経済的従属性という視点を用いることで、形式的な雇用関係の有無ではなく、労金法の趣旨でもある「経済的地位の向上」の観点から、就労者が持つ実質的な依存関係や保護の必要性に基づいて「労働者性」を再評価する必要があると論じる。労働者性の射程を探るとともに、労働者概念の展開(法制化や労働組合等による包摂)を検討する。