地域社会を支える自動車整備士
-若者に選ばれる職業に向けて労働組合が果たすべき役割-
概要
地方における最大の社会課題は、若者世代の急激な県外流出である。進学や就職を機に多くの若者が都市部に移り、そのまま地元に戻らない傾向は顕著である。筆者の出身地である島根県でもこの傾向は深刻であり、それに伴って地域の基幹産業を支える担い手が急速に失われつつある。
こうした構造的な若者流出は、自動車整備業においても深刻な影響を及ぼしている。島根県は自動車依存度が非常に高く、通勤・通学・通院から買い物まで、生活のほとんどがマイカー移動によって支えられている。特に中山間地域では、公共交通機関の減便や廃止から自動車は“生活の命綱”となっている。しかし、この車社会を支える自動車整備士が、高齢化と若者不足と職業の魅力低下により急減している。
このような状況を打開する為、本稿では若者にとって魅力ある就業環境を整えることを念頭に、整備士を単なる技術職ではなく、地域インフラを担う「社会的職能」の担い手として再評価することの重要性を示すと共に、自動車整備士不足の問題からあぶり出された若者の県外流出という構造問題と結びつけて捉え、持続可能な地域社会構築に向けた地域労働組合としての役割と取り組むべき課題について提言するものである。