労働時間短縮に向けて労働組合がやるべきこと

-宅配業界で選ばれる企業であるために―

大宅 信 (運輸労連 ヤマト運輸労働組合 常任中央執行委員)

概要

 物流業界は「2024年問題」を経て、大きな変革期に突入している。荷主企業も「運び方改革」に積極的に取り組み、持続可能な物流を目指し官民で取り組みを進めている。運送業の労働環境は全産業平均よりも「2割長く、賃金では1割~2割低い」と言われ、働き方や賃金形態においても、まだまだ魅力ある産業には至っていないのが実情である。先行研究でも、業界の労働問題について、たびたび触れられている。この労働問題を変えるためには法律や社会全体の意識改革が必要となるが、労働問題の改善は差し迫った重要な課題である。

 本稿では、ヤマト運輸の「長時間労働」や「社員の退社人員数増加」という現場の現実的な問題に着眼して、宅配業が抱える問題がどのように、長時間労働や退社数の増加に結びついているのかを明らかにすることにある。そのために、集配ドライバーと営業所長を中心に13名の社員にインタビュー調査を実施した。インタビューを通して現場が労働時間や業務とどのように向き合っているのかを、把握することが必要不可欠だと考えたからである。その中で、浮かび上がった現実的な課題に労働組合がやるべきことを提言する。長時間労働や社員の退社人員の増加を改善するための施策が、企業とそこで働く人々にとっていかに重要な意味を持つかということを本稿で示していく。