JP労組における組合脱退の実態分析
―最近8年間の脱退の動向をふまえて-
概要
本論文は、日本最大の単一労働組合であるJP労組における組合員数減少の実態を、8725名の脱退者データを基に多角的に分析したものである。
郵政民営化以降の事業環境激変により、インターネット普及による手紙離れ、年賀状発行数の約40%減少、キャッシュレス決済の普及など、郵便・金融両事業の業務量が大幅に減少している。その結果、日本郵政グループ全体で2017年から2024年にかけて5万7千人の社員減少が発生し、組合員数も相当程度減少した。組合員数の維持が深刻な課題となっている。
分析の結果、脱退者の59.5%が加入10年未満の早期離脱であり、特に3年以内の脱退が21.9%を占めることが判明した。事業別では金融系事業において若年層の組合離れが顕著で、雇用区分別では契約社員の脱退率が高い傾向にある。
現行の運動方針が組織拡大に重点を置く一方、脱退防止策への言及が不十分であることも明らかとなった。これらの複合的要因が組織力低下を招いており、早急な対応策の検討が必要である。
本論文により、組合脱退が単一の要因ではなく、加入期間、雇用形態、年齢層、事業特性などの複数の要因が相互に関連し合って生じる複雑な現象であることが確認された。これらの傾向の把握は、JP労組における組合員の脱退を防止する観点から重要な基礎資料となる。