本と資料の紹介コーナー

このコーナーでは、労働運動、労働組合の分野で皆さんに読んでいただきたい本と文献を取り上げます。重要と思われる文献については、労働一般、経済社会問題まで広げて紹介していくとともに、連合周辺の刊行物も収録します。
文献の選定には教育文化協会の書評委員会があたっていますが、紹介内容は連合または教育文化協会の主張を必ずしも反映せず、高木郁朗 日本女子大学名誉教授の責任監修で行われています。

2016年12月の紹介本

おすすめ本

  • セバスチャン・ルシュヴァリエ著 新川敏光監訳
    『日本資本主義の大転換』

    評者:麻生裕子(連合総研主任研究員)

     本書は、フランス・レギュラシオン学派の経済学者が、新自由主義的政策のもとで日本資本主義がいかに変容したのかを分析したものである。レギュラシオン学派とは、各種の経済主体間の「調整」(=レギュラシオン)を重視して経済分析を進める立場をとっている。
     日本の体制派の支配的な見解では、1990年代初頭からの日本経済の衰退は、グローバリゼーションやイノベーションがもたらす新しい環境に適応できなくなったことに起因するとし、そのために新自由主義的改革を唯一最善の道と捉える。
     しかし、本書はそうした支配的見解を覆す。1980年代初頭から断続的に実行された新自由主義的改革の結果として、企業の多様性の増大、賃金不平等、格差拡大をもたらしたと本書は強調する。つまり、新自由主義的改革は、危機への対処策ではなく、そもそも危機を生み出した原因であることを意味する。このような現状を打開するためには新たな「調整」が必要だと主張する。
     日本の資本主義社会の将来を展望するうえで、時宜を得た有意義な研究といえる。多少難解な表現もあるかもしれないが、労働組合関係者に一読いただきたい一冊である。

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    岩波書店
    3,400円+税
    2015年12月

ルーツを求めて

  • 牧民雄
    『日本で初めて労働組合を作った男 評伝・城常太郎』

    評者:山根正幸(連合企画局次長)

     本書は、わが国労働運動パイオニアの一人である城常太郎が曾祖父であることを偶然に知った著者が、長年にわたる史料発掘・研究を通じて、常太郎をはじめ黎明期の労働運動家たちの足跡を追った労作である。本書を通じて、義友会や期成会と常太郎との関わりのみならず、米国における日本人による労働運動の様子などが示されており興味深い。また、「職工諸君に寄す」の起草者を巡って新たな論点も提示されている。靴工としての高い技能を持ち、開明的な経営者としての素質をも有していた常太郎の人柄、組織化から組合活動の内容、対政府政策要求に至るまでの初期労働運動家としての活動状況が丹念に追求されており、日本労働運動の源流を探るうえでの好著となっている。

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    同時代社
    3,200円+税
    2015年7月

議論を深める

  • 平田オリザ
    『下り坂をそろそろと下る』

    評者:柳宏志(連合総研研究員)

     この20年で、スキー人口は3分の1以下に減った。観光学者は「少子化だからスキー人口が減った」とみる。だが、著者は「スキー人口が減ったから少子化になった」とみる。男性が女性を一泊旅行に誘える手段だったスキーの人口が減れば、少子化になるのも当然というわけだ。それと同じで、地方で映画館もライブハウスもなくしてしまったら、若者が「地方はつまらない」といって出ていくのも当たり前。だったら、面白い街をつくればいい。
     本書は、こうしたいかにも劇作家らしいユニークな発想をする著者が、「成長の止まった、長く緩やかな衰退の時間に耐え」ていく日本社会、とりわけ地方のいまとこれからを、経済や労働ではなく「文化」という切り口から考えた1冊である。

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    講談社現代新書
    760円+税
    2016年4月

雇われない「協同労働」という働き方-日本とスペインの事例から

  • 日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会編著
    『協同労働の挑戦-新たな社会の創造』
    工藤律子
    『ルポ雇用なしで生きる-スペイン発「もうひとつの生き方」への挑戦』

    評者:麻生裕子(連合総研主任研究員)

     世の中にはさまざまな働き方がある。企業に雇われる働き方が圧倒的に多いのが現状であるが、そうではない働き方にも注目が寄せられつつある。そのなかでも、雇用されない「協同労働」という働き方に焦点をあてた2冊の著書をとりあげる。ここでの「協同労働」とは、雇用労働との対比で捉えており、他者の指揮命令下にあるのではなく自主的に協力して働くことをさす。そのような労働者の組織が労働者協同組合である。いわば出資、経営、労働が一体化した働き方である。
    『協同労働の挑戦』(以下、前者)は、日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会(以下、日本労協連)がまとめた対談・鼎談・講演集である。テーマは障がい者就労支援、農業と自然、沖縄米軍基地など多岐にわたっているが、全体に共通するメッセージは、「協同労働」という新しい働き方が、連帯を基礎とした新たな社会を創り出す大きな可能性をもっているということである。
     『ルポ雇用なしで生きる』(以下、後者)は、スペインの市民運動(通称15M)、時間銀行、地域通貨、フードバンク、社会的目的をもつ労働者協同組合などについて詳細に取材した現地レポートである。これらの運動はすべて、市民が主体となって、既存の経済システムを補完するもうひとつの経済システム、いわば連帯経済を構築することを目的としている。

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    萌文社
    1,400円+税
    2016年4月
    岩波書店
    2,000円+税
    2016年2月
  • 連合とそのまわりの刊行物
    • 1.暮らしの底上げに向けて<2016~2017年度 経済情勢報告>
    • 2.連合の春闘結果集計データにみる賃上げの実態2016-経済社会研究委員会賃金データ検討ワーキング・グループ報告-
    • 3.新たな就職氷河期世代を生まないために-連合総研・就職氷河期世代研究会報告-
    • 4.第32回勤労者短観(勤労者の仕事と暮らしについてのアンケート)調査報告書
    • 5.第13回「私の提言-『働くことを軸とする安心社会』の実現にむけて-」入賞提言集

これまでの掲載実績

書評委員会委員一覧

文献紹介コーナー(~2008年)


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