雇用類似就業者による労働組合及び事業協同組合への
組織化に関する提言
作成日時:2026年9月7日
1.序 論
本稿は、働く人の権利を守る「労働組合」と、小規模な事業者が事業を共同化する協同組織である「事業協同組合」(中小企業等協同組合の種類の一つ)との連携によって、「雇用類似の働き方」で就業する者(以下「雇用類似就業者」という。)を対象とした協同組織のあり方を検討することで、良好な就業環境及び持続ある事業活動の整備を論じることを目的とする。
1-1 社会的背景
雇用類似の働き方に関する検討会(厚生労働省)『「雇用類似の働き方に関する検討会」報告書』(2018年3月30日)においては、「雇用類似の働き方の者」の定義を明示していないものの、「雇用関係によらない働き方であることを考えると、労働者性を示す基準である使用従属性がないことが前提となる」ことに加えて、「発注者からの仕事の委託を受け、主として個人で役務を提供し、その代償として報酬を得る者のなかでも、さらに、上記のような不本意な契約を受け入れざるを得ない状態(これを経済的従属性と呼ぶことも考えられる)である者について「雇用類似の働き方の者」とする視点が考えられる。」(39頁)としている。
それゆえ、雇用類似就業者は、雇用と自営との中間に位置し、請負契約や業務委託契約といった取引関係によって、いわゆるフリーランスや独立自営業者も内包し、労働基準法に定める労働者に必ずしも該当しない者といえる。
雇用類似就業者に関わる法制度・公的支援策では、2024年11月1日に「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(いわゆる「フリーランス新法」)が施行され、「取引の適正化」及び「就業環境の整備」との両立が期待されている。2025年5月16日には、「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律」が成立し、下請代金支払遅延等防止法は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」へ、下請中小企業振興法は「受託中小企業振興法」へ改められることになり、2026年1月1日の施行によって、実態への普及と実効も望まれている状況にある。加えて、「フリーランス・事業者間取引適正化等法の違反被疑事実についての申出窓口」や「フリーランス・トラブル110番」等の公的な支援策も取り組まれている。
1-2 先行研究の整理
本節では、先行研究において示唆されている労働組合と事業協同組合との連携の方策として行う相互の得意・優位な分野を整理する。
濱口桂一郎(2020)では、労働政策研究・研究機構(JILPT)による雇用類似就業者数の試算(注1)を行ったところ、「全体で約228万人であり、うち本業とする者約169万人、副業とする者約59万人である。」(48頁)と示しており、雇用類似就業者の数量的規模がわかる(注2)。同様に、濱口桂一郎(2022)では、労働基準法上は労働者でないフリーランスであっても労働組合法上は労働者として労働組合を結成して団体交渉が可能であること、労災保険の特別加入の文脈において自営業者の団体では協同組合という形で組織されていること、協同組合にも団体交渉権があり、団体協約を結ぶことができ、労働組合と連続的な性格がある、と述べている(注3)。
橋本陽子(2024a)では、「労働組合法(労組法)上の労働者性は労基法上の労働者性よりも広く解されているので、労基法上の労働者とはいえない自営業者が労働組合を結成し、労組法上の権利を行使することが可能である。」(39頁)として、自営業者による労働組合の組織化の可能性を論じている(注4)。
公益財団法人連合総合生活開発研究所(2025)では、フリーランス(フードデリバリー配達員、配達ドライバー、一人親方、演奏家、俳優・歌手)への事例研究に加えて、残存する労働関係法令での課題や政策的課題、労働組合運動における課題について詳細に整理及び検討を行っている(注5)。
浜村彰(2018)では、プラットホームエコノミーで働く就労者に対する労働法上の保護および労働者性をめぐる問題の検討において、独立自営業者の作った協同組合における団体交渉権と団体協約締結権を認めていることに着目すべきと指摘している(注6)。
これらの一連の先行研究での議論は、①交渉主体としての労働組合や事業協同組合という選択肢があること、②自営業者も労働組合を組織できること、③自営業者による事業協同組合では団体協約が締結できること、という3つの論点へ整理できる。これらの既存研究では指摘に留まっているものの、自営業者(事業者)による労働組合と事業協同組合との連携の可能性を見いだすことができる。
1-3 問題意識及び研究課題
労働基準法では、使用者と労働者の対等ならざる立場を背景として、国家が定める強行法規として保護策が講じられている。ただし、雇用類似就業者は、請負契約や業務委託契約といった契約により事業者として判断される場合があるため、労働基準法における労働者の保護を受けることが容易ではない。
また、雇用類似就業者は、中小企業基本法に基づく中小企業者(注7)であることに鑑みれば、対等な契約主体として、取引関係(委託―受託等)において弱い立場にある。
具体的には、経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)が小規模であり、事業者であっても取引条件や交渉力等で大きく劣ることに加えて、「生業」(生活のための職業)という性格もある。その結果、取引活動の問題(報酬・対価、納期や損害発生時の対応等)や就業条件・契約条件の課題(就業時間の拘束、業務委託契約による成果型の契約、セクシュアル・ハラスメント等)を被る状況も考えられる。
上述の問題意識を踏まえ、本稿の研究課題は、雇用類似就業者の権利を保護・拡充させるとともに、事業環境の基盤を強化するために、事業協同組合の利用による労働組合がもつ可能性を論じることにある。
図表1は、本稿における研究対象を図示したものである。
図表1 雇用類似就業者の全体像と対象

出所:筆者作成。
なお、本稿における「雇用類似就業者」の捉え方について、「事業者志向型雇用類似就業者」とは、「何らかの目的のために継続・反復して事業を行う意思をもって、対事業者(B to B)や対個人・消費者(B to C)との取引契約を行う事業者(事業主)」として自己を認識している者を指す。「卓越的事業者型雇用類似就業者」は、事業者志向型雇用類似就業者と同様に自己を事業者として認識していることに加えて、取引条件(報酬等)を“言い値”で設定できる点にある(※事業者志向型雇用類似就業者には取引条件の決定権がなく、取引の受注可否に限定される。)。ただし、就業する時間や場所等で制約(拘束)されるため、雇用類似就業者の範囲から完全に脱していない者をさすこととする。「雇用者志向型雇用類似就業者」とは、事業者であるにもかかわらず、労働者性が強い“雇用者”としても自己を認識している者をさすこととする。
係る研究課題を達するために、2.では雇用類似就業者を構成員とする労働組合と事業協同組合の連携の可能性を論じる。3.では労働組合と事業協同組合の連携組織に対する既存の労働組合の協力・連合組織による支援を提言として述べる。4.では結論として議論をまとめる。
2.労働組合及び事業協同組合との連携の可能性
本章では、労働組合と事業協同組合との連携の可能性を検討していく。これら両組織の連携には、労働組合に足りないことは事業協同組合によって補完できる、事業協同組合に足りないことは労働組合によって補完できる、といった特長が考えられる。具体的には、「労働の権利保障」や「組合員への助成」といった目的のもと、3つの可能性(①交渉及び協約締結、②共済及び福利厚生、③共同経済事業)が挙げられる。
図表2は、雇用類似就業者の事業活動及び就業環境を整備、向上させるために、お互いの組織が有する特性を活かした「労働組合と事業協同組合の連携組織」の全体像をまとめたものである。
図表2 労働組合・事業協同組合の連携組織の全体像

出所:筆者作成。
2-1 組織制度の比較
図表3は、労働組合と事業協同組合の組織制度に関して比較を行ったものである。
労働組合は、労働組合法に定められた組織であり、労働条件の向上を目的として設立されるものである。事業協同組合は、中小企業等協同組合法に定められた組織の種類(注8)の一つであり、経営の近代化、経済的地位の向上を図ることを目的としている。
労働組合と事業協同組合の共通点では、組合員資格の者に対する文言の差異はあるものの、組織の性格上は共に人的結合体であり、資本の結合体ではない(注9)。さらに、両組合は、団体交渉や協約締結権を有している、という特徴を見出すことができる。
図表3 労働組合と事業協同組合の組織制度の比較

出所:各法律をもとにして筆者作成。
なお、本稿で対象としている雇用類似就業者は、労働組合法における「労働者」に該当するものであり、既存の労働組合への加入や2者以上で労働組合を設立できる。同様に、雇用類似就業者は、事業者でもあることから、既存の事業協同組合への加入や4者以上の事業者と協同すれば事業協同組合を設立することも可能である。
そこで、両組合を設立して、両組合の制度上の特性を生かす。例えば対外的に交渉していく場合、名刺の表面を「労働組合」、裏面を「事業協同組合」といった具合により、場面に応じて組織を使い分けることで、表裏同体の組織として運営できる。
2-2 交渉及び協約締結【可能性①】
第1の可能性は、労働組合と事業協同組合との連携によって、対外的な協約締結を行うことができることにあり、具体的には、労働組合の「労働協約」及び事業協同組合の「団体協約」の両協定の締結である。
受注(受託)側の中小企業(殊に雇用類似就業者)は、一般に発注元の企業が行使する力が強く、取引において不利な立場におかれる場合がある。そして、単独の雇用類似就業者(組合員)では、今後の取引への懸念、心証の悪化を恐れて個別的な交渉を行うことが難しい場合もある。
事業協同組合における団体協約締結事業は、中小企業等協同組合法に基づいて定款に定める共同事業である。事業協同組合は、組合員と取引関係にある事業者に対して団体協約締結の交渉申出を行うことができる。そこで、団体協約締結事業(注10)は、組合員のために、商品の販売価格や支払条件、就業・労働環境の最低基準の設定、組合員の知的財産(著作権等)の保護・利用基準の設定などを組合員の取引先企業との間において事業協同組合が締結するものであり、締結した内容は直接に組合員に対して効力を生じさせる。さらに、労働組合という組織体を用いれば、生活を送るのに必要な費用(生計費相当額)に関して、最低報酬水準の設定や報酬支払期間の短縮化といった働きかけも行えよう。
それゆえ、事業と生活が密接した雇用類似就業者には、労働条件の向上に向けた労働組合としての「労働協約締結」、取引条件の向上に向けた事業協同組合としての「団体協約締結」といった、“両組合の強み”を活かしていくことが重要である。具体的には、労働協約では「分配の拡大(人件費)」について、団体協約では取引価格を圧縮しようとする取引先への対抗策として「事業経費の確保」及び、人件費等への配分を目指す「総量の拡大」についての交渉と協約締結ができると考える(図表4参照)。
図表4 労働協約及び団体協約が取引価格に与える影響に関する概念図

注:取引価格全体を「100」とする。
出所:筆者作成。
2-3 共済及び福利厚生【可能性②】
第2の可能性は、共済及び福利厚生による組合員の就業環境の改善・向上、モラール(士気)の発揚である。
雇用類似就業者は、仕事(案件・業務)の受注が限定的であるため、突然の疾病や不慮の災害等によって働けない場合における「ノーワーク・ノーペイ」や、事故や過失等による損害賠償請求といった予期せぬ事態に直面する懸念がある。
このような懸念に対して、共済事業及び福利厚生事業は、安心して働ける・事業が行える基盤を整備する取り組みとして、必要かつ重要である。
労働組合として提供する共済では、雇用類似就業者の生活における不測の事態(疾病・重度障害、就業障害)に備えることで、生活基盤の整備を行うことができる。事業協同組合の共済では、事業者という性格に鑑みて、事業継続上のリスク(対人・対物に関する損害賠償や業務災害・通勤災害における上乗せ補償)といった事業継続の助成を図る。
また、連携組織の双方で行う福利厚生では、突然の疾病や不慮の災害に伴う慶弔見舞い(注11)、クラブ活動や各種パーティ・イベント等の娯楽(レクリエーション)、企業主導型保育事業(組合内保育所・託児施設)、健康診断・人間ドック、労働者災害補償保険(労災保険)の特別加入に係る労働保険・社会保険等の事務代行、労働金庫からの生活用資金(住宅ローンや教育ローン等)の融資斡旋といった就業・生活基盤を構築できる。
さらに、福利厚生の一環として、組合員の学び合いを促進・助成することも必要である。組合員の事業経営及び知識・技能の涵養を目指して、例えばワークルール検定の取得に向けた座学、原価計算や企業分析等といった経営関係の学習会、組合員の事業に関する資格取得に向けた独自のテキスト作成及び講習会の開催といった協同での職業能力の開発へ助成することも方策である。
2-4 共同経済事業【可能性③】
第3の可能性は、従来の労働組合では困難であった共同経済事業を事業協同組合で行うことができることである。共同経済事業とは、組合員の経済的利益を高めるために行う共同事業の類型の一つである。
組合員の雇用類似就業者に必要なのは、組合員自身の目に見える形で現れる、所属組織からの具体的な利益である。この具体的な利益は、経済的利益とした場合、例えば、共同事業の利用による事業経費の節減、新たな販路・取引先の獲得による売上高の増加、同業者との交流・人脈づくりによる交友関係の強化といった利点があげられる。このような利点は、今までの労働組合の範疇を超えるものであり、事業協同組合との接合によって生み出される可能性がある。
例えば、作家や声優、芸術家(アーティスト)の雇用類似就業者で組織される事業協同組合では、知的財産権(著作権や商標権等)の利用や保護に関する団体基準と方針の明示による権利保護や利用料徴収が考えられる。殊に、人工知能(AI)による権利侵害が危惧されている今日において、組合を通じた法務対応や提言活動といった役割が期待される。同様に、軽自動車を用いた運送業者の雇用類似就業者で組織される事業協同組合では、共同倉庫の設置及び共同利用による固定資本費用の削減、共同配送システムの構築及び共同配送の実施による効率化、ガソリン等の共同購入(給油カードの貸与)による燃料費の節減、高速道路料金の包括利用による交通費の削減が考えられる。また、IT関係の雇用類似就業者で組織される事業協同組合では、各種アプリケーションソフトウェア利用権の共同購入や、組合が包括して案件を共同受注し組合員へ配分することによる業務の獲得が考えられる。
これらの個人事業者が、一方では事業協同組合を組織し、各種の共同経済事業(共同事業を利用することで手数料を組合員から徴収する事業)と、教育・情報提供事業等の共同非経済事業(手数料の徴収を伴わない事業)を行う。他方では労働者性の強い個人事業者(雇用類似就業者)が労働組合を組織し、自らの報酬(賃金)を獲得するための交渉を優位にさせる手段として用いることができる。
3.労働組合が取り組むこと
ここまで、労働組合と事業協同組合との連携組織に関する試論を述べてきた。本章では、対して、労働組合が取り組むことに対して、既存の労働組合が取り組むべき行動指針について、提言として試論を述べることにしたい。
図表5は、今後取り組むべき、労働組合・事業協同組合の連携組織が行う共同事業と、労働組合の全国組織、地域別・産業別労働組合が支援できる取り組みをまとめたものである。
図表5 労働組合・事業協同組合の連携組織が取り組む共同事業の取組例

出所:筆者作成。
3-1 労働組合及び事業協同組合への組織化指導
第1には、雇用類似就業者を対象とした組織化の必要性を普及・教育し、身近な相談相手となる組織化指導を行っていく必要がある。そもそも、雇用類似就業者のなかには、労働組合や事業協同組合という制度を認知していない場合や、必要性を感じていない場合も考えられることから、組織化の必要性を説明、訴求するといった地道な取り組みが重要である。そのためには、組織化の人材(特に組織活動の立役者)の育成が急務である。既存の労働組合には、将来の組合執行部層になりえる組合員に対して、各種育成・助成制度(理念教育、連合との情報連絡員養成、労働法やワークルール等の指導、他の労働組合や事業協同組合の調査等)を提供し、組織中核人材(執行部層)の養成するよう努める必要がある。これらの努力は、歴史的・理念的・実務的教育を受けた人材を輩出し、組織活動を後世に渡って自走させる源になる。
加えて、自主的な基準を設定・運用していくことが重要である。雇用類似就業者は、事業と生活が一体となっていることがあるため、生活の水準を高めるためには生計費を稼得させることも重要である。ただし、取引契約の設定交渉の場面では、発注先の言われるままの取引・契約条件を甘受しなければならない場合も考えられる。そこで、両組合は「継続的な事業活動を行うための適正料金の推奨表」(仮称)を策定し、市場動向や諸物価等の変動に鑑みて適宜改訂を行い、独占禁止法上の価格協定(カルテル)に抵触しないような基準を指導していく方策もある。
3-2 雇用類似就業者の実態への支援
第2には、生活の不安定性を取り除く施策の実施及び継続が必要である。雇用類似就業者は、外部事業環境の不確実性に加えて事業上のリスク(顧客や取引先とのトラブル等)により生活の不安定性が生じる恐れがある。そこで、雇用類似就業者の法的及び実態的保護に向けた活動として、例えば「Wor-Qサポートセンター」や「連合フリーランス労災保険センター」といった取り組みを継続することが重要である。
今日の世の中は、相談をするだけでも相談料や着手金(手付金)等の金銭を要求されることもある。それゆえ、取引の中での悩み事(取引代金の支払条件や支払遅延、取引上の地位を利用したセクシュアル・ハラスメントやパワー・ハラスメント等)に対して相談できる窓口を必要とする。ちょっとした悩み事を親身になってくれる存在、必要に応じて適切な機関(労働関係行政機関等)へ代理相談・通報や、当事者の協議の場を設定してくれる存在が不可欠である。このような存在に労働組合がなることで、雇用類似就業者の事業上や生活上の不安を緩和、解消させて、安心して働くことができる。
このような取り組みの結果は、例えば、取引条件及び就業環境の改善、組織力の強化、働きやすい環境の整備、「仕事と生活の調和」の実現、経営資源の相互補完、労働組合及び事業協同組合の意義の再確認と発見があり、ひいては「労働組合の機能拡張」や「労働組合の新たな可能性(融合化)の創出」にも結実しうる。
4.結 論
本稿では、雇用類似就業者を対象として、自らと同様の立場に置かれている仲間と共同(団結)するために、労働組合及び事業協同組合を併用することに重点をおいて考察し、試論をまとめた。
本稿の研究課題に対しては、雇用類似就業者によって組織される「労働組合及び事業協同組合」では、労働関係法令の対象にならず、厳しい市場競争のなかにおいて、縁辺労働力ともなる雇用類似就業者による組織化によって、安心できる就業環境に加えて、事業環境を共同で強化させることで、「労働組合の機能拡張」や「労働組合の新たな可能性(融合化)の創出」への可能性を明らかにした。
雇用類似就業者は、一方では自らの労働力(精神的・肉体的な労働能力)を事業へ投下することで、社会を支え、現状よりも望ましいとされる勤労社会の実現において尊いものであるものの、他方では労働法制並びに労働政策の転換、そして資本の論理のもとで、いわば「雇用の調整弁」として自営と雇用の狭間に置かれている。そして、雇用類似就業者は、実際には型破りな人(マーヴェリック)であるため、業況・景況や保有能力によっても浮沈しており、競争相手かつ取引上の敵対関係にもなりうる他者(他社)と手を携えていくことを好まない場合も考えられる。そのような場合にあっても、「働く人の権利を守る」という労働組合の意義に鑑み、職種に応じた雇用類似就業者にも門戸を広げ、対話と実践によって組織化を訴求していく必要がある。
参考文献一覧
- 石井まこと・兵頭淳史・鬼丸朋子編著(2010)『現代労働問題分析―労働社会の未来を拓くために』法律文化社
- 稲川宮雄(1971)『中小企業の協同組織』中央経済社
- 鎌田耕一(2019)「雇用によらない働き方をめぐる法的問題」(労働政策研究・研修機構『日本労働研究雑誌』第61巻5号(通号706号))
- 公益財団法人連合総合生活開発研究所(2025)『フリーランスの権利保護と労働組合』
- 公益財団法人連合総合生活開発研究所(2026)『働き方の多様化と法的保護のあり方~請負就業者とプラットフォームワーカーの就業実態及び国際動向を踏まえて~』(労働者概念の在り方に関する調査研究報告書)
- 公正取引委員会事務総局経済取引局取引部取引企画課フリーランス取引適正化室、厚生労働省雇用環境・均等局総務課雇用環境政策室(2024)『フリーランス・事業者間取引適正化等法』商事法務
- 厚生労働省「雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会」各回資料
- 佐久間貴大(2024)「中小企業組合の利用による「取引の適正化」への対応―「団体協約・組合協約」に着目して―」(全商連付属・中小商工業研究所『中小商工業研究』第161号、97頁-108頁)
- 中小企業庁編(1958)『新制中小企業等協同組合法逐条解説』中小企業出版局
- 独立行政法人労働政策研究・研修機構(2021)『雇用類似の働き方に関する諸外国の労働政策の動向― 独・仏・英・米調査から』(労働政策研究・研修機構『労働政策研究報告書』No.207)
- 内閣官房・公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省『フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン』(2024年10月18日改定)
- 日本労働組合総連合会(2026)『2026 連合白書』
- 橋本陽子(2024a)『労働法はフリーランスを守れるかーこれからの雇用社会を考えるー』筑摩書房
- 橋本陽子(2024b)「労働者・自営業者・フリーランス―労働者性をめぐって―」(『世界』第987号、岩波書店、2024年11月、190頁-199頁)
- 濱口桂一郎(2020)「雇用類似の働き方に関する現状と課題」(日本政策金融公庫総合研究所『日本政策金融公庫論集』第47号、41頁-58頁)
- 濱口桂一郎(2022)『フリーランスの労働法政策』独立行政法人労働政策研究・研究機構
- 浜村彰(2018)「プラットホームエコノミーと労働法上の課題―プラットホームエコノミーで働く就労者の労働者性について」(労働調査協議会『労働調査』第577号、4頁-12頁)
- 久本憲夫(2019)「雇用類型と労働組合の現状」(『日本労働研究雑誌』(No.710、4頁-15頁)
- 水町勇一郎(2024)「世界最大の労働問題をどう解決するかーフリーランス保護のゆくえー」(『世界』第987号、岩波書店、164頁-171頁)
- 山本陽大著、労働政策研究・研修機構編(2022)『第四次産業革命と労働法政策―“労働4.0”をめぐるドイツ法の動向からみた日本法の課題』労働政策研究・研修機構
- 吉村幸祐・菰口高志(2025)『実務シリーズNo.286 フリーランス法の概要と実務上の留意点』SMBCコンサルティング会社
注
- 注1:当該試算において雇用類似就業者とは「発注者から仕事の委託を受け、主に個人で役務を提供し、その対償として報酬を得る者」と定義している(49頁)。詳細は、厚生労働省「第9回「雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会」」の「資料3-1 雇用類似の働き方の者に関する調査・試算結果等(速報)」を参照されたい。
- 注2:濱口桂一郎(2020)41頁-58頁参照。
- 注3:濱口桂一郎(2022)10頁-11頁参照。
- 注4:橋本陽子(2024)参照。
- 注5:公益財団法人連合総合生活開発研究所(2025)参照。
- 注6:浜村彰(2018)4頁-12頁参照。
- 注7:中小企業基本法の第2条第1項では「中小企業者の範囲」を示している。
- 注8:組合員となった個人に勤労の場を確保し、経営の合理化を図る「企業組合」、組合員に対する預金受入や資金貸付等を行う「信用協同組合」といった種類がある。
- 注9:中小企業等協同組合法では、「事業を行う(筆者:中略)小規模の事業者」であることから、小規模な事業者であれば営利・非営利や個人・法人を問わず、組合員資格を有している(参考:中小企業庁編(1958)88頁-89頁参照)。
- 注10:事業協同組合が行う団体協約では、「誠意をもつてその交渉に応ずるものとする」(中協法第9条の2第12項)として、誠意応諾の規定を設けているため、中協法の適法の手続きに基づいて申し出があった場合には団体協約の内容を協議する必要がある。また、交渉相手が団体交渉に応じない場合や交渉内容について協議が整わない場合等は、行政庁(主に認可省庁)へ斡旋・調停を申請することもできる(中協法第9条の2の2)。
- 注11:ただし、組合員(被共済者)への共済金額が10万円を超える場合には共済事業になる。
